エピソード3-㉔
「あら、あなた方もネズミ狩りに?」
二人は冒険者ギルドに戻り、依頼の手続きをした。ウルミアが書類を出してくる。
「はい。ギギルさんから討伐依頼があるって聞いたので」
ルルがウルミアからの問いに答える。
「嬉しいわ。もう2チームが森へ入っているのだけれど、苦戦しているみたいなの。他にもう1チーム入っていたのだけれど、自分たちの手に負えないと依頼を中止して少し前に戻ってきたわ」
「そうなんですか。その、鎧ネズミって手強いんですか?」
「そうね。とにかく鎧が固いので。はい、これが資料です」
二人はウルミアから受け取った資料を読む。
「鎧の部分はそのまま鉄として使えるの!?」
ルルは驚く。
「そうなんです。なのでバラバラになった物でも、溶かして別の形に作り直せます。なので、欠片になってても拾って来てくださいね。ちゃんと買い取りますから」
ウルミアの言葉に、タッキーの目が輝く。
「欠片でも!?やったー!!バラバラに切り刻んでも大丈夫なんだ!!」
「嬉しそうね、タッキー。ま、私もこの剣で切り刻めるってことなんだから、楽でいいけど」
「そうだね。毒とか眠りとかは効かないってのがちょっと面倒だけど、その代わり思いっきり戦えるね」
タッキーはもう、切り刻むことしか考えていなかった。
「では、頑張ってくださいね」
ウルミアは笑顔で二人を送り出した。
ルルとタッキーは鎧ネズミが出るという、畑と森の境目辺りに着いた。少し遠くから人の声や、ネズミのキーキーいう声がする。
「あっちの方角だね」
タッキーは声のする方に、指(?)を指す。
「わかったわ。行きましょう!」
と、ルルはタッキーの示した方角へ向かって駆けだした。
二人が走っていくと間もなく、複数の鎧ネズミと冒険者たちが戦っているのが見えた。かなり苦戦しているようだ。
鎧ネズミの上に乗って、鎧の隙間に剣を差し込んで倒している者もいた。まともに切りつけても敵わないからだ。炎攻撃で、鎧を熱して倒そうとしている者もいた。
ルルが冒険者たちに「加勢します!!」と言って突っ込んで行く。それを見た他の冒険者たちは
「子供!?」
「いや、君達じゃ無理だ、来るんじゃない!!」
と叫ぶ。
ルルに気付いた鎧ネズミは、ルルめがけて突進してくる。ルルはそれを鎧ごと剣で左右真っ二つに斬る。周りの冒険者たちは驚く。
「ええっ!?この鎧ネズミの鎧を斬れるのか!?」
ルルは鎧ネズミの返り血を浴びて、くるっと皆の方を向くと血塗れの顔でニッコリして
「そうよ、この剣はミスリル製なの!」
と、自慢する。それを見た皆は(この子供は只者じゃない)と悟った。タッキーも横で
「ギギルさんの傑作なんですよ!」
と、ギギルの腕を褒める。
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