エピソード3-㉑
ギギルの店に着くと、タッキーは自身の収納ポケットから50~60個くらいの鉱石や魔石を出して、買取カウンターの上に乗せた。
「えっ、ちょっ…どうしたんだコレ!?ちょっとやそっとじゃ手に入らんものばかりだぞ!?」
ギギルは腰を抜かしかけている。タッキーが出したのは名前のわからないものばかり。なので、それだけ珍しい物だろう…というのだけはギギルの様子でわかる。
「知り合いから貰ったものなんです。…詳しいことは話せないんですが…どれもボクの今の鑑定眼のレベルではわからなくて…ギギルさんなら知ってるかなーと、思って来てみたんです」
タッキーがおずおずと話す。…ドラゴンからの遺産相続…とは言えない。そんなことを考えていると、ふと一つの鉱石に目が止まった。
「あれ?この石だけ名前がわかります。2日前にはわからなかったんですが‟ミスリル”ですよね?」
「えっ?タッキーわかるの!?」
「ああ、その通り。これはミスリル。鉄よりも硬い石だよ」
「いつの間にか鑑定眼のレベルが上がってたんですね。1つでもわかるものがあってよかったです」
そういえばギルドで全く収穫がなくて、手ぶらで家へ帰るのもなんだから…と、ちょっと森で魔物を何匹か倒したのを思い出した。でもわかったのは一つだけだったので、残りの石や魔石の名前や性質をギギルに聞いた。タッキーは物覚えがいいので、石の見た目と名前を次々頭の中に記憶していく。タッキー自身の鑑定眼のレベルがもっと上がるまでは、とにかく覚えておくしかない。
「…まあ、ここまではA級なら出会えるし、倒せるだろう魔物の魔石だ。それでもかなり珍しい物なんだがな。…で、この残った二つだ」
ギギルが説明を続ける。ギギルが指した二つの石は、どちらもものすごく美しい。
「こっちのは、前にツノを買い取ったあのユニコーンのものだ。ユニコーンってのは、まず滅多に出会えない魔物でな、俺だってツノを一度見たことがあるだけで、実物のユニコーンには会ったことがないんだ。いや、大昔ならともかく、今生きている奴で出会ったことがあるのなんて数える程だろう。そして仕留めたのはSSSランクの冒険者パーティ1つだけだ」
「そんなに珍しいんですか!」
「へ~~、ユニコーンさん、キレイなんだろうな…会ってみたーい!」
タッキーは(Eランクでしかないのに、何を言ってるやら…)と、ジト目でルルを見る。
ギギルはさらに話を続ける。
「…だから、誰から譲って貰ったか言えない、ってのはまあ、わかる気がするな。…正直言えば気になるがねぇ…ま、俺も商売人だ。詮索はしねぇさ」
(ギギルさんが、いい人でよかった)
タッキーは心からそう思った。
皆さん、暑い日が続いておりますがいかがお過ごしですか?
さて、私たち母娘共々暑さは大の苦手でして…夏の間、しばしば更新の日数が飛ぶ可能性があります。出来るだけ週1ペースで投稿したいとは思いますが…もし飛んでしまった場合は申し訳ないです。皆さん熱中症には十分お気を付け下さいませ。
お読みいただきありがとうございました。