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59、リーフの成長

 お茶会から一ヶ月が経って、レイラ様にいただいたザース博士の本をようやくすべて一読した私は、もらった花の種を植えるべく温室へ来ていた。


 適正温度や水の量、適した土壌についてはしっかり調査済だ。二週間前から専用の花壇を準備し、土はしっかりと耕して肥料と馴染ませておいた。


 ライデーン王国の豊かな土壌に比べると、少し不安は残る。


 しかしそこはリーフの祝福でなんとか……いやいやだめだ、リーフの力を借りすぎるのはよくない。


 愛の記憶を引き継いでから、リーフは魔法の制御力をより高めるために、上級精霊たちのサポートを受けながら魔法の訓練を続けている。


 ひたすら褒めるジン様、見て覚えよと実演重視のイフリート様、言語化してわかりやすく教えるウンディーネ様と、先生によってサポートの仕方は様々だ。


 頑張ってるリーフの邪魔をするのはよくない。そう自分に言い聞かせていたら、「見たことない花の種だね」と、声をかけられた。


 振り返ると、種の入った瓶に鼻先を近づけ、くんくんと匂いを嗅ぐリーフの姿がった。


「もう訓練は終わったの?」

「うん。マリエッタに手紙を渡して、ウンディーネは帰ったよ。今日はこれを植えるの?」

「ええ、ライデーン王国の花の種よ。お茶会でレイラ様にいただいの」

「とても強い土の息吹を感じる。きっと大事に育てられた花から採れた種なんだね」

「そうね。ライデーン王国は自然を大切にしている国だから」

「どんな花が咲くか楽しみだね!」


 新しい花を植えるのが嬉しいようで、リーフは尻尾を激しく左右に振っている。


「そうだわ、リーフ。今年の豊穣祭、よかったら一緒に行かない?」

「豊穣祭?」

「秋にあるんだけど、今年も実りのある一年を過ごせましたって、精霊に感謝を捧げるお祭りよ。色とりどりの花で飾り付けられた会場が、とても綺麗なの」


 あの美しい会場を、いつかリーフに見せてあげたいと思っていた。


 屋敷の外に出られるようになった今なら、それが叶うかもしれない。


「毎年庭園で一緒に見てる、あの花火が上がるお祭り?」

「ええ、そうよ。会場のメインストリートから見上げる花火が、一番大きくて綺麗に見えるらしいわ」


 ここからだと少し距離があるから、小さくしか見えないじゃない? と付け加え、私はリーフの様子を窺う。


 すると目を輝かせたリーフが「僕、行きたい! 今年は大きな花火、ヴィオと一緒に会場で見たい!」と嬉しい返事をくれた。


「ありがとう、楽しみだわ」


 今年は何をプレゼントしようかしら?


 いつもは玩具や絵本を渡してたけど、リーフも成長しているし、今年はもう少し大人っぽいものがいいかもしれないわね。


 それからリーフと一緒に花の種を植えた。

 作業をしながら、何かほしいものがあるかそれとなく探りを入れてみたけど、趣味ってそう簡単に変わらないわね。


 英雄王イスタールの剣って去年もあげたわよね?


 そんなに何本もほしいものなのかしら……まぁ、本人が喜ぶものをあげるのが一番よね。今年も特注で頼んでおこう。


 全ての種を植え終わったあと、「魔法で成長させる?」ってリーフが尋ねてきたから、私は慌てて頭を振った。


「リーフの魔法は、私欲で軽々しく使ってはいけないと思うの。だからその気持ちだけ受け取っておくわ」


 リーフはこの大陸に一柱しかいない、自然を司る大聖霊様だ。


 荒廃した大地を蘇らせる植物魔法は本来、未曾有の大災害が起こった時にこそ真価を発揮すべきものだろうし。


「残念……僕、頑張って魔法の練習したのに……」


 しゅんと耳を下げてしまったリーフは、そう言ってその場に伏せて顔を埋める。


 ああ、なるほど。訓練の成果を見てほしかったのね。


「だ、だったら! ここに植えた種を、一本だけ咲かせることはできるかしら?」


 訓練の延長線上だと思えば、一本くらい大丈夫よね?


 顔を上げたリーフは「まかせて!」と花壇の前に移動して、目を閉じる。


 すると花壇に植えた種が一本だけ芽を出して美しく開花した。


「すごいわ、リーフ! 以前のように、魔力の流れが全然見えなかったわ」

「地面から魔力を送ったんだ! これなら、僕がやったってわからないでしょ? 外で正体がばれないように、たくさん練習したんだよ!」

「がんばったのね」

「うん! だから今度、僕もヴィオのお店に連れてって!」


 もちろんよと頷くと、リーフはやったーと喜んでくれた。

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