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47、頼りになる仲間たち

 リアムさんを見送ったあと、私は改めて店内を見回した。


 みんなのおかげで、本当に素敵なお店が完成したわね。


 店内に足を踏み入れれば、正面にはお洒落な香水の並んだショーケースが並んでいる。中央には自分で香りを試すことが出来るテスターコーナーを設けており、お客様はそこで様々な香りを堪能して商品を選ぶことが出来る仕様だ。


 右側に女性用、左側に男性用、そして中央に男女兼用として使えるブルースターの香水が飾ってある。さらに隅のほうには会計待ちのお客様がゆっくり座って待てるように、テーブル席を完備。


 そしてお父様の強い要望があって、私の作ったアロマミストやキャンドルを数量限定で売り出す予定だ。


 今ではリーフに祝福をかけてもらわなくても、私の作った調香アイテムには、植物の本来持つ効果を高める魔法がかかる。


 だから魔法のアイテムとして、アレクがカウンターの横で目立つように分けて、別のショーケースに入れて展示してくれているのよね。


 ご丁寧に、【疲れが一瞬で吹き飛ぶ魔法のミスト】と、【安眠に誘う魔法のキャンドル】って、少し大袈裟な謳い文句と一緒に。


 どんな効果があるのか明確に示さないといけないから仕方ないけど、【フレグランスの女神ヴィオラお手製!】って文字はいらなくない? 特に女神の部分!


 製造者の名前も刻む必要あるからねって言われて渋々了承したけど、アレクの想いを知ったいま、なんだか余計に羞恥心が拭えない。


 どこをどう見たら私が女神に見えるのよ……心の中で悪態をつきつつ、深呼吸して心を落ち着ける。


 なんとか平常心を取り戻した私は、店内に不備がないことを確認して二階へ向かった。用意していたプレゼントを携えて。


「僕が持つよ、エルマ」

「これくらい私だって平気よ?」

「だ、大事な商品だし! 落として割ったりしたら、大変でしょ?」

「はっ、そうよね! ごめんね、ジェフリー。任せてもいい?」

「もちろんだよ」


 扉越しにエルマとジェフリーのそんな会話が聞こえてくる。


 ノックをして中に入ると、出来上がった香水を下の倉庫に運ぼうとしていたようだ。


「ヴィオラ様、打ち合わせ終わったんですね! こちらも予定在庫分の製作終わりました」

「ええ、さっきね。二人とも、頑張ってくれてありがとう」


 私が最後にラインナップに加えてほしいとお願いしたブルースターの香水。材料調達の関係で製作が切迫してしまったけど、間に合ってよかったわ。


「あとはこれを下の保管庫に運べば、今日の作業は終了です」


 そう言って香水の入ったケースを持ち上げようとするジェフリーに、私は「待って」と慌てて声をかける。


 やっぱり、重たい物を運ぶのに魔道具は使ってないのね。


「実は二人に、渡したいものがあって来たの」


 赤いリボンの紙袋をエルマ、青いリボンの紙袋をジェフリーに手渡した。


 お礼を言って受け取った二人に、「よかったら開けてみて」と中を確認するよう促す。


「……これはもしかして、制服ですか⁉ それに靴まで! 優雅で可愛いです!」

「こ、こんなに立派なもの一式を、いただいてもよろしいのですか……?」


 エルマは素直に喜んでくれたけど、ジェフリーは恐れ多いと言わんばかりに狼狽えている。


「二人のために作ってもらったものだから。遠慮せずに受け取ってくれると嬉しいわ。ちなみにデザインはマリエッタにしてもらったのよ」


 美しい店内にすっと馴染むようにデザインされた制服は、上品なグレーのジャケットやベストにスカートやズボンを合わせ、中からは豪華な白いブラウスが覗いている。


 首元を黒い布地に金の装飾の施されたリボンで結び、きらびやかに宝石の輝くカメオを付ければ、気品漂う香水アドバイザースタイルの完成だ。


「マリエッタ様が、私たちのために……⁉」

「ここに来る度に、二人がマリエッタの描いたものを、褒めてくれたでしょう? そのおかげで自信がついたみたいで、今はデザインの勉強をしているのよ。気に入ってもらえたかしら?」


「はい! とっても気に入りました!」と声を揃えて返事をしてくれた二人は、首をブンブンと縦に振って喜びを伝えてくれた。


「よかったわ、マリエッタにも伝えておくわね。それからブレスレットはアレクからよ。小型の収納用魔道具になってて、二階と一階の行き来を楽にするために用意してくれたの。これなら落とす心配もないから、遠慮せずに普段から使ってね」


 視線をアクセサリーボックスに移して使い方を教えると、二人はすぐに覚えてくれた。


 まぁ、魔道具自体は他にもあるから、使うのが初めてってわけじゃない。


 ただこの子たち、根がいい子すぎて高価な魔道具を落としたら大変だからって、大事にしすぎてなかなか使ってくれないのよね。


 そのことをアレクに相談したら、二人が気軽に使えるように小型の装身具タイプのものを用意してくれた。出かける時に持っておくと、荷物もかさばらなくて便利なのよね。


「ヴィオラ様、色々と気を遣っていただいてありがとうございます!」

「少しでもお力になれるように、精一杯頑張ります!」

「こちらこそ、頼りにしてるわ。これからもよろしくね」


 それからしばらく二人と雑談をして、困ってることや不安なことがないか聞いてみた。


 やはり二人とも明日の開店でうまく出来るか緊張を抱えているようで、失敗したらどうしようと不安そうだった。


 もしお客様の前で何か粗相をしたら、まずはしっかり謝ること。そしてすぐに、ベテラン接客員のリアムさんたちに助けを求めること。


 もし面倒な貴族にからまれたら、迷わず私かアレクを呼ぶようにと、想定されるトラブルの対処法を色々と伝えておいた。


 確か打ち合わせの時に、リアムさんも言ってたものね。報告、連絡、相談を円滑に行うことが、大事だって。


 他にも何かあったら気軽に相談してねと、二人が不安を抱え込まないように念を押して、私はお店をあとにした。

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