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23、妹からの手紙

 あちらで元気にやってるかしら。ペーパーナイフで封を切って中身を確認する。


++++++++++++++++

ヴィオラお姉様へ


お姉様、いかがお過ごしですか?

年中雪に囲まれたログワーツでの生活は

えっと驚くことも多いですが、皆

様に助けられて楽しく過ごしています。

たくさんの保湿グッズ、嬉しかったです。

すごく効いてとても助かっています。

懸命にお花の世話をされていたお姉様がと

ても懐かしく思います。


          マリエッタより

++++++++++++++++


 上手くやれているようね。

 持たせた保湿グッズも使ってくれたのね、嬉しいわ!

 また新しいのを作って送ってあげよう!


 あら、最後の名前が少し滲んでいるわね。

 どうしたのかしら?


 どちらかと言えばマリエッタは、そういうところはきっちりしていた。一文字でも書き損じた手紙はよく丸めてゴミ箱に捨てていたし、インクが飛んで汚れたりしたら必ず書き直していた。


 配送中に雪が解けて滲んでしまったのかしら? ここからはとても遠いし、その可能性は大いにある。けれど、何故か違和感が拭えない。


 もう一度手紙を読み返してみる。

 あら、どうして不自然な所でわざわざ行を変えているのかしら。そういえば昔、字を習いたての頃に手紙で暗号メッセージをやり取りする遊びをしていたわね。昔やった事を思い出し、試しに縦向きに読んでみると――


 『お年え様たす懸て』


 じとりと額から嫌な汗が出てくる。

 この名前の染みが雪が解けて滲んだんじゃなくて、涙が落ちて出来たんだとしたら……ふと脳裏にそんな光景が浮かんだ。


 もしかしてこれ、『おねえさまたすけて』って書いてあるんじゃ……これは、偶然なの?


 それとも本当に、マリエッタからの救援を乞うメッセージなの!? あちらで何かあったのかしら……


「大変なんだ! ヴィオ、居るかい?!」

「どうしたの? そんなに慌てて」

「ジンが水の上級精霊ウンディーネ様と連絡が取れないって言うんだ」

「ウンディーネ様は確か、北の極寒地帯を治めるログワーツ伯爵と代々契約を交わされているのよね?」


 確かめるように尋ねた声が、微かに震えていた。


「北方は昔から水害と雪害が多くてね。それを見兼ねたウンディーネ様が、その地に住む人々を守るために領主であるログワーツ伯爵と契約を結んでくださっているんだ」


 将来的にはリシャールが契約を引き継ぐって言っていたわね、そう言えば。生活が不便な領地ではあるけど、上級精霊様の加護を受け安全面においてはそこまで心配していなかったのに……


「ログワーツ領は君の妹が嫁いだ領地でもあるし、少し心配で……」

「ねぇ、アレク。さっき妹から手紙が届いたのだけど……」


 私はマリエッタから届いた手紙をアレクに見せた。


「元気そうでなによりだけど……改行の仕方が少し独特だね」


 手紙の文面を頭一文字だけ見えるようにして、手で覆い被せて口を開く。


「これ、読んでみて」

「おねんさまたすけんて……お姉様助けて!? これは……」

「杞憂だったら良いんだけど、嫌な胸騒ぎがして仕方ないの」


 私の震える手に、アレクがそっと自身の手を重ねた。


「ヴィオ、僕行って見てくるよ。もし精霊絡みの事件が起きてるなら、王家としても放っておけないし」

「私も行く、連れてって! マリエッタが心配なの!」

「ごめん。危険かもしれないし、今回は連れていけないよ。リーフもまだ目覚めてないんでしょ? 傍に付いててあげた方が……」

「リーフが目覚めないのは、ウンディーネ様と関係がある可能性はない?」

「どうだろう……ジン、どう思う?」


 アレクはジン様を呼んでくれた。


『可能性はあるだろう。記憶の融合は長くても数日休めば目覚めるはずだ。何か別の原因があると考えた方が良いのかもしれない』

「そういえば、ウンディーネ様は【愛】の記憶を保管してるって言ってたよね?」

『ああそうだ』

「ヴィオに閉め出されたショックも、その【愛】の記憶を引き継げば癒される可能性もあったりして」

「本当に悪かったと思ってるのよ……繊細なあの子をアレクと同じ扱いしてしまったことを!」


 アレクが変装グッズ出してきたあたりから、外に追い出しておくのが正解だったわ。


「…………僕の扱いはあれでいいんだ」

『閉め出されるの得意ではないか』

「ははっ、ジンまで地味にひどい!」


 何故かいじけているアレクの肩にぽんと手を置いて私は言いきった。


「アレク。連れていってくれないなら、自分で行くわ。お父様にお願いして、護衛付けてもらえば問題ないでしょ」

「あーもう、結局そうなっちゃうのか!」

「行くって言ったら、絶対行くわ」

「そういう一度決めたら絶対に譲らない芯の強い所もヴィオの魅力ではあるんだけど、でも……」

「それに自分の身は自分で守る。伊達に王立アカデミーを首席で卒業してないわよ」

「茨の淑女だっけ……学園でおっかない二つ名持ってたよね……」

「あら、あまり学園通ってなかったのによく知ってるわね」


 アレクは私より一つ年上で、一応学園では先輩にあたる。ただ籍があるだけで、アレク自身はほぼ学園には通ってなかった。


 国王様に出された難題任務に忙しかったっていうのもあるけど、王族は子供のうちにアカデミーで習うことを習得しているから色々免除されてるらしい。


「魔法の実技試験で、騎士科の男子生徒を植物魔法で呆気なく倒したとか何とか……」

「ふふっ、そんな事もあったわね」


 精霊と契約している学生は、魔法学の習得が義務化されていた。そこには戦闘形式の実技試験もあって、召喚した茨で壁に張り付けにしてあげたのよね。


 そうしたら一部から【茨の淑女】なんて変なあだ名で呼ばれるようになった。対戦した男子学生達から廊下ですれ違う度に敬礼されて、目立つから本当に止めて欲しかった。


「分かった、君が普通の女性より強いのは認めるよ。でも心配だから、一緒に行こう」

「最初から素直にそう言ってくれればいいのよ」

「同行する精霊騎士を選抜しないといけないから、出発に三日くらい時間かかると思う。それまでに準備を済ませておいて」

「分かったわ」


 こうして、アレクと共にログワーツ領へ行くことになった。

ここまで連載を追いかけてくださり、ありがとうございます!


風邪でダウンしている間にストックが尽き、数日前から自転車操業で更新分をその日に書いているのですが……少し設定やプロットを練る時間や推考する時間が欲しいので、もしかしたら今後毎日更新が難しくなるかもしれません。


主人公と妹ちゃんサイドの時系列が整理出来てなくてすいません。とりあえず最後まで書ききってから最後に調整しようと思ってます。


クライマックスに向けて頑張って書きますので、最後まで見守っていただけたら嬉しいです。


ブックマークやいいね、評価や感想などとても励みになります。本当にありがとうございます!

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[一言] いつも楽しく読んでいます(⋈◍>◡<◍)。✧♡ 季節の変わり目・・体調崩しやすい時期ですよね。ご無理なさらず・・ゆっくり進めてくださいね。
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