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虹色のヒーロー  作者: 葛木真時
第1章
6/23

第6話 折り鶴の恩返し

 虹林南高校2年1組の教室。

 昼休み中、杏樹(あんじゅ)は折り紙を折っていた。


「なにやってんだ?杏樹(あんじゅ)っち。」


 そんな杏樹(あんじゅ)にかおるは声をかける。


「折り紙ー!千羽鶴折ってるのー!」


 杏樹(あんじゅ)は大量に作っている鶴の一つを持ってかおるに見せつけた。


「なんだ、誰か入院でもしてんのか?」

「ううん、作りたいだけー!」

「…相変わらず自由奔放だなぁ。お前は。」


 かおるは杏樹(あんじゅ)の自由さに苦笑いした。


「あ!!でっかい鶴!」


 杏樹(あんじゅ)は突然叫んだ。


「あ?どれも同じ大きさじゃねぇか。」


 かおるは杏樹(あんじゅ)の机の上に置かれた大量の鶴を見て言った。


「違う違う。あれー。」


 杏樹(あんじゅ)は窓の外を指さした。


「は!?なんだあれ!?」


 かおるも窓の外に目を向けると、そこには目を疑う光景が広がっていた。

 窓から見える町の上空に、巨大な白い折り鶴が浮かんでいたのだ。


 明日流(あする)と話していた零音(れおん)は、かおるの大声が気になり、窓の外を見た。


「!?あれは!!」


 巨大な折り鶴に気づいた零音(れおん)は窓に近寄った。


(マテリアスだ…!!)


 零音(れおん)は慌てて教室を出た。


「おい、零音(れおん)!どこ行くんだよ!もうすぐ昼休み終わるぞー!」


 明日流(あする)零音(れおん)に向かって言うが、その声は零音(れおん)には届かなかった。


――――――――――――――――――――――――


「ハァッ…ハァッ…変身!」


《ユーティライズ》

《リバイトレオン クリエイト アクティブ》


 零音(れおん)は町に出て、走りながらリバイトレオンに変身した。

 そして輝石で階段を作り、上空の折り鶴の付近まで登り、階段の先端で飛び上がった。


「はああああああああああっ!!」


 折り鶴の真上まで飛び上がったレオンは、折り鶴にキックした。

 レオンは折り鶴ごと地面に落下した。


――――――――――――――――――――――――


 一方教室では…昼休みが終わり、国語の授業が始まっていた。


「おい、伊武(いぶ)どこ行った。」

「えっと…保健室です…。」


 明日流(あする)は国語の教師に嘘をついた。

 杏樹(あんじゅ)は窓の外の折り鶴が地面に落下するのを見ていた。


「あ、鶴落ちた。」



――――――――――――――――――――――――


 「いって~!」


 地面に落ちた折り鶴は、ペチャンコになり、声を発した。


「やっぱりマテリアスか!」


 巨大折り鶴の正体は紙のマテリアス、ペーパーマテリアスだった。

 

「ひぃっ!やめてくれ!!殺さないで~!!」


 ペーパーマテリアスは折り鶴の状態から一度一枚の紙になり、体をパタパタと変形させて人型になった。

 そして人間の姿に戻り、うずくまった。


「え?あ、いや…。」


 レオンは変身解除した。


「殺さないよ!大丈夫大丈夫!」


 零音(れおん)はうずくまっている男を落ち着かせた。


「え?ほんとに…?」


――――――――――――――――――――――――


 零音(れおん)と男は、河川敷に移動し、体育座りして夕日と川を眺めながら会話した。


「僕は伊武 零音(いぶ れおん)。」

「俺は神木 依折(かみき いおり)っす。」


 神木 依折(かみき いおり)は高校1年生の青年だ。


「なんで折り鶴になってたの?」

「俺の親父…癌で入院してるんすけど…手術しても助かる可能性は低いって…だから病室にいる親父を少しでも笑わせたくて、病室の窓から見える位置で折り鶴に…」


 神木(かみき)は下を向いて悲しそうな顔をした。


「そうだったんだ…。ごめん!突き落としちゃって!」


 零音(れおん)は両手を合わせて謝った。


「いいっすよ…たしかにいきなりあんな巨大な折り鶴が現れたら怪しいっすもんね。」

「どうして直接お見舞いに行かないの?」

「親父と会うのが気まずくて…俺、いつも親父に反抗して迷惑ばかりかけてて…お袋が死んでから男手ひとつで俺を育ててくれてるのに…だから会うのは気まずいけどなにか恩返しをしたくて…」

「…。」


 零音(れおん)神木(かみき)の話を真剣な表情で聞いていた。


「…僕の父は、僕がまだ小さいころに死んじゃったんだ。」


 零音(れおん)はうつむいて呟いた。


「…え?」

「星戸府消滅…あの日、父はファルブロスに殺された。」


 零音(れおん)は父親について咲来(さくら)に聞いた日のことを思い出した。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 10年前、6歳の零音(れおん)咲来(さくら)にあることを聞いた。


「母ちゃん。なんで僕には父ちゃんがいないの?」

「んー?急にどうしたの?」

「学校のみんながお父さんの話してた。」


 咲来(さくら)は暗い表情になった。


「そっかぁ…零音(れおん)、あなたの父ちゃんはね。あなたがもっとちっちゃかったころに死んじゃったんだ。」

「え!?」

「星戸府消滅…あの日父ちゃんは星戸府にいた。」

「せいとふしょうめつ…?ってなーに?」

「2年前、ファルブロスっていう未確認生命体が星戸っていう府をそこにいる人ごと消滅させたの。」

「みかくにんせいめいたい…?」

「簡単に言うと怪物よ。」

「怪物!?」

「そう、父ちゃんは怪物…ファルブロスに殺された…!!」


 咲来(さくら)はポケットから白いお守りを取り出し、強く握りしめた。


「私はファルブロスを絶対に許さない…!!」

「…母ちゃん??」


 いつも優しい顔をしている咲来(さくら)が珍しく顔をしかめたため、零音(れおん)は少し怖がった。


「あっ…ごめんごめん!怖かったね!」


 咲来(さくら)零音(れおん)の頭を撫でた。


「ねぇねぇ、父ちゃんはどんな人だったの?」

「え?そうね…父ちゃんは…どんな理不尽な目にあっても決してやり返さない、優しくてかわいい人だったよ!」

「父ちゃんかわいかったの!?」

「うん!とっても!」

「へ~!!」


 零音(れおん)咲来(さくら)は笑い合った。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「そうだったんすか…。」

「うん、だから一緒にいた記憶もまったくないんだ。僕は父ちゃんに一回会ってみたい。でももう会えない…。」


 零音(れおん)は立ち上がった。


「僕の場合はどうしようもないけど、神木(かみき)くんはまだ間に合う!お父さんに会ってあげなよ!」

「…わかりました!俺、親父に会います!」


 そして神木(かみき)も立ち上がった。


「ところで、いつから紙の体になれるようになったの?」

「ああ…それなんすけど…親父が助からないかもしれないって聞いて絶望してたとき、目に仮面をつけた白い髪の人に体になんかされて…それからこうなりました。」


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「そしたら仮面をつけた男に怪物にされたんです。」


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


(また仮面の男が…。)


 零音(れおん)はシザースマテリアスだった男の発言を思い出し、心の中で思った。


「神木くん。お父さんに会う前に、君の体は今危険な状態なんだ。」

「え!?俺が!?」

「そう、だから一回…」

「うぐっ…!!」


 すると突然、神木(かみき)は苦しみだした。


神木(かみき)くん!!」

『フッフッフ…そろそろ満足しただろ?』

「なんだ!?誰だ!?誰の声だ!!??」


 神木(かみき)から別人の声が出始め、神木(かみき)は困惑した。

 コアの意志だ。


『ハッハッハ…お前の親父を殺して完全に体を乗っ取ってやる!』

「親父を…!?やめろ…!やめてくれえええ!!」


 神木(かみき)の体はペーパーマテリアスに変貌し、体を紙飛行機に変形させ、空を飛び始めた。


「そうはさせない!神木くんと、神木くんのお父さんの未来は、僕が守る!!」


 零音(れおん)はユーティライザーを腰に巻き、マガジンを起動してセットした。


《ジャスティスクリエイト》

《ローディング》


 零音(れおん)は変身ポーズをとった。


「変身!!」


《ユーティライズ》

《リバイト レオン クリエイト アクティブ》


 零音(れおん)はリバイトレオンに変身した。


「ふんっ!!」

 

 レオンは右手に輝石を纏い、空中にいる紙飛行機(ペーパーマテリアス)に向かって伸ばした。

 そして輝石の先端をマジックハンドのように変形させ、紙飛行機(ペーパーマテリアス)をつまんだ。


『ぬぅっ!?』

「うおおおおおおおおおおおっ!!」


 レオンは輝石を右手から分離して、その長太い輝石を両手で持って振り回した。


「おりゃあああああ!!」


 そしてその勢いのまま、紙飛行機(ペーパーマテリアス)ごと輝石を地面に叩きつけた。

 輝石は粉々に砕けた。


『ぐああああっ!!ちくしょうっ!!』


 ペーパーマテリアスは、手裏剣に変形して、回転しながらレオンに突撃した。


「うわっ!!」


 レオンは寸前で避けたが、手裏剣(ペーパーマテリアス)は背後から再びレオンに突っ込んでくる。

 レオンは輝石で刀を生成し、受け止めた。

 手裏剣(ペーパーマテリアス)は高速で回転し、火花が散った。


「ああっ!!」


 レオンはなんとか受け流し、手裏剣(ペーパーマテリアス)は地面に突き刺さった。


(鉄みたいに硬い…紙ってこんなに硬くなるのか…)

「はああああああああっ!!」


 地面に突き刺さった手裏剣(ペーパーマテリアス)にレオンは斬りかかった。

 しかし手裏剣(ペーパーマテリアス)は一枚の紙に変形し、攻撃をかわした。


「あれ…?」


 そして次はパックンチョに変形して、レオンの全身に嚙みついた。


「うわああああああああっ!!!」


 パックンチョ(ペーパーマテリアス)はレオンを咥えたまま、空中に浮かび上がった。


「くっそぉ…」


 レオンはパックンチョ(ペーパーマテリアス)の口の中でレバーを上げた。


《リローディング》


「うああああああああああっ!!」


 レオンは力を込めて、パックンチョ(ペーパーマテリアス)の口をこじ開けて脱出した。

 そして左手でレバーを倒し、輝石の刀にエネルギーを溜めた。


《クリエイトフィニッシュ》


「これで終わりだ!!」


 レオンは空中で回転斬りし、パックンチョ(ペーパーマテリアス)を斬り裂いた。


『ぐああああああああああああああっ!!!』


 レオンは地面に着地し、ペーパーマテリアスは空中で爆発した。

 そして空中から落ちてきた神木(かみき)をキャッチした。


――――――――――――――――――――――――


 数日後、2年1組の教室。


「千羽目できたー!!」


 杏樹(あんじゅ)は千羽鶴を完成させた。


「よく一人で作ったなぁ。」


 かおるは千羽鶴を見て感心した。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「だから病室にいる親父を少しでも笑わせたくて、病室の窓から見える位置で折り鶴に…」


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「そうだ!!杏樹(あんじゅ)!その千羽鶴ちょっと貸して!」


 零音(れおん)神木(かみき)の発言を思い出し、杏樹(あんじゅ)に両手を合わせて頼んだ。


「いいよー。なにに使うのー?」

「みんなも手伝って欲しいんだ!」


――――――――――――――――――――――――


 虹林県立中央病院のとある病室。

 神木(かみき)はマテリアスになった反動で入院し、ベッドに座っていた。


「お父様の手術は成功しました…!」

「ほんとっすか!!」


 先生が神木(かみき)にそう伝え、神木(かみき)は喜んだ。


依折(いおり)さんもよくなったらお父様に会ってあげてください!」

「…はい!!!」


 神木(かみき)は大きく返事した。

 先生は病室から出ていき、神木(かみき)は安心した表情で窓の外を見た。


「ん?」


 すると突然空から一羽の折り鶴が降ってきた


「なんだなんだ!!?」


 降ってくる折り鶴はどんどん増えていき、様々な色の大量の折り鶴が空から舞い降りてくる。

 神木(かみき)は唖然とした。


「それぇっ!!」


 病院の屋上で零音(れおん)たちは、杏樹(あんじゅ)が折った千羽鶴を下に落としていた。


「うちがせっかく折った千羽鶴~!!」


 杏樹(あんじゅ)はいじけていた。


「ごめん杏樹(あんじゅ)!あとで全部拾うから!!」


 零音(れおん)は折り鶴を落としながら杏樹(あんじゅ)に謝った。


「あとで病院の人に謝らないとですね…。」


 後ろで見ている大護(だいご)は苦笑いした。


「おらっ!ほんとに見えてんのか?これ。」


 明日流(あする)は折り鶴を落としながら零音(れおん)に聞いた。


「きっと見えてるよ!!」


 零音(れおん)は微笑みながら、さらに折り鶴を落とす。


(笑ってくれてるかな…?神木(かみき)くん。)


「ふっ…はははは!」


 神木(かみき)はその美しく、おかしな光景に笑った。

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― 新着の感想 ―
[一言] ペーパーマテリアル、強い…!紙なのに強いのは、実は紙というものが異様に強いというメタファーのような気もして、なかなか面白いアイデアだと思いました!
2022/08/25 22:03 退会済み
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