第22話 狙われた零音
玄司はゆっくりと零音の家の扉を開けた。
そして零音とともに中に入った。
家の中は真っ暗だ。
玄司は警戒しながらリビングに侵入した。
「……誰もいないみたいだな…」
誰もいないことを確認し、玄司はリビングの電気をつけ、カーテンを閉めた。
「師匠…どうして僕の家に…?」
「腹ごしらえだ。今人の目につかずに飯を食える場所など、ここしかない。」
「なるほど…」
「なにか食料がないか漁ってみる。お前は手を洗ってこい。」
「…」
零音は自分の手を見た。
その手は暴走したときに殴った人々の血がこびりついていた。
「はい…」
――――――――――――――――――――――――
零音は洗面所に行き、手を洗う。
血はなかなかとれない。
「…!?」
ふと顔を上げ鏡を見ると、鏡に映った零音の姿は、ファルブロスになっていた。
そして背後には洗面所が埋まるほどの大量の人がいる。
「お前が殺さなければ…俺はまだ生きれたのに…」
「次の日家族で遊園地に行く約束してたのに…」
「彼女とデートだったのに…」
「結婚式だったのに…」
「お前のせいだ…お前が俺たちを殺した…!!」
人々の幻影はボソボソと呟く。
「ひっ…うわあああああああああ!!!」
零音は思わず鏡に映るファルブロスを殴った。
鏡は大きな音を立てて割れる。
「ごめんなさい…!!ごめんなさいいいいっ!!!」
零音は頭を抱えてその場にしゃがみ込む。
「零音!!おい零音!!」
叫び声を聞いて洗面所に駆け込んできた玄司は、零音の肩を掴む。
「落ち着け!!零音!!」
「はっ!!…ハァ…ハァ…師匠…?」
零音は落ち着きを取り戻した。
「……レトルトカレー…できたぞ…」
――――――――――――――――――――――――
零音と玄司はリビングでレトルトカレーを食べる。
「…」
カレーを口に入れた零音は咲来のカレーを思い出した。
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「零音!今日なに食べたい?」
「カレー!!」
幼い零音は飛び跳ねながら咲来に言った。
「またカレー?本当にカレーが好きねぇ。」
「うん!僕、母ちゃんのカレー大好き!!」
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「はい!召し上がれ!」
咲来はキッチンからカレーを運んできた。
「いただきまーす!!」
零音は早速カレーを口に入れる。
「んんっ!!おいしーーーー!!」
「そっかそっか!」
咲来は零音の頭を撫でまわした。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「ううっ…」
レトルトカレーを咀嚼している零音の目から涙が溢れ出す。
「…しっかり食っとけ。ここもいつバレるかわからんからな…」
玄司はレトルトカレーを食べながら言った。
「…はい!」
零音は腕で涙を拭き、ガツガツとレトルトカレーを食べる。
『クンクン…玄司!!外だ!!』
しばらく食べていると、突然カグツチが叫んだ。
「っ…!!」
玄司は零音の頭を掴み、ともに伏せた。
すると窓が割れ、外から銃弾を飛び込み、さっきまで零音たちが座っていた椅子に穴が開いた。
「……向かいの家からか…」
「向かいの家…?まさか!!?」
零音は立ち上がり、割れて風でカーテンが浮いている窓から外を見た。
向かいの家の屋根の上に、スナイパーライフルを構えている人影がある。
その姿は、向かいの家のおばさん、佐藤 悦子だった。
「まさか…おばさんまで…!?」
「外に出るぞ!!」
玄司は零音の腕を引っ張り、玄関に向かう。
佐藤はそれを追うように銃を撃つ。
銃弾はさっきまで零音たちがいた場所に着弾する。
「…行くぞ!!」
玄司はカグツチを鞘から引き抜き、合図とともに玄関のドアを開けて外に飛び出す。
予想通り銃弾が飛んできたので、玄司はカグツチで銃弾を防ぐ。
「走れ!!」
玄司と零音は一斉に走り出す。
「出て来たぞ!追え!!」
レイジングフォックスの隊員たちが零音と玄司を追いかける。
佐藤は走っている零音に向かって発砲する。
「うわっ…!!」
銃弾は零音の足元に着弾し、零音は思わず立ち止まる。
「動くな!!」
零音は追いついた隊員たちに囲まれ、銃を向けられる。
「っ…!!零音!!」
先にいる玄司は足を止め、零音のもとに駆け寄る。
その時、突風が起こり、零音を囲む隊員たちは吹き飛んだ。
「ぐあああああっ!!!」
そして、零音の近くの家の屋根に、雷が落ちる。
雷が落ちた場所には来夢が、そして零音のそばにみどりが現れる。
「待たせたな!零音!!」
「ごきげんよう。」
「来夢!!みどりさん!!」
「事情はわかっています。ここは私たちに任せて逃げてください!」
みどりはファンライザーを構えて、零音の前に立つ。
「…ありがとう!!」
零音は玄司とともに走り出す。
みどりと来夢はマガジンを取り出し、起動した。
《ブロウウインド》
《ストライクサンダー》
二人はマガジンをセットする。
《《ローディング》》
「「変身。」」
来夢はパラライザーを上に向けてトリガーを押し、みどりはファンライザーで口元を隠す。
《ファンライズ》
《パラライズ》
《リバイト風凛 ウインド アクティブ》
《リバイトクライム サンダー アクティブ》
二人はリバイトに変身した。
「スナイパーは俺がやる!下の奴らを頼む!!」
クライムは屋根から風凛に指示を出した。
「わかりました。はぁっ!!」
風凛は次々とやってくるレイジングフォックスの隊員たちを蹴り倒す。
クライムはパラライザーを構え、佐藤を狙う。
しかし佐藤の射撃はとても早く正確で、クライムは避けるので精一杯になり、撃つタイミングがない。
「くっ…!!」
クライムは瞬間移動し、他の家の屋根を転々と移動して佐藤の背後に回り込む。
そして佐藤に向かってパラライザーから電撃を発射する。
「っ…!!」
しかし、佐藤はその場でローリングし、電撃を避けて背後に銃を向ける。
佐藤は咄嗟にクライムを狙い、発砲する。
「…!!」
クライムは傘を展開し、銃弾を防ぐ。
そしてそのまま電撃を発砲する。
「はっ…!!ぐああああああっ!!」
銃弾を防がれたのが予想外だった佐藤は油断し、電撃を食らった。
「うっ…」
佐藤は倒れ込んだ。
「はぁっ!!」
「うっ…!!」
風凛は隊員の頭に蹴りを食らわせた。
「ふぅ…」
すべての隊員を気絶させた風凛は変身解除した。
「くっ…貴様…ファルブロスに伝えろ…」
最後に蹴りを食らわせた隊員が、倒れながらみどりに話しかける。
「…?」
隊員はみどりに何かを呟いた。
「なっ…!!?」
それを聞いたみどりは驚愕した。
佐藤の家の屋根の上に来夢は立ち尽くしていた。
「……私の夫と息子は、ファルブロスに殺された…」
倒れている佐藤は来夢に語りかけた。
「復讐が果たされるまで…我々は決してお前たちに屈しない…!!」
佐藤は起き上がり、腰からナイフを取り出して、背を向けている来夢に向かって走り出す。
「…っ!!」
来夢は振り返り、接近してきた佐藤の体をパラライザーで押さえる。
「!?ああああああああああっ!!!!」
パラライザーから電撃が流れ、佐藤は感電する。
「ううっ…」
佐藤は気絶し、倒れる。
「…悪いな。俺たちも屈するわけにはいかないんだ。」
来夢は倒れている佐藤に向かって呟いた。
「来夢!!」
みどりが屋根に飛んでくる。
「どうした、みどり。」
「すぐに零音さんたちを追いましょう!」
みどりはすごく焦っている様子だった。
――――――――――――――――――――――――
「ハァ…ハァ…」
「止まれぇ!!」
零音と玄司は、他の道から現れた隊員たちから走って逃げていた。
「ハァ…ハァ…キリがない…」
「くっ…一度止まって戦うぞ!」
玄司と零音は立ち止まり、マガジンを取り出す。
その様子を付近の路地裏で、久夛良木が見ていた。
「ふっ…ちょっと助太刀しようかな…」
久夛良木はそう言い、シャープインジェクターを左手に持ち、ボタンを下に向けて親指で押す。
そして針が飛び出したシャープインジェクターを首に刺した。
リブ細胞活性化液が体内に流れ込み、久夛良木の姿はウィザーティーチに変貌する。
零音と玄司の目の前に大量の木が生え、隊員たちは行く手を阻まれる。
「えっ!?」
「ハロー!君たち!元気?」
路地裏から零音たちの前に、ウィザーティーチが現れる。
「ウィザーティーチ!?」
「何者だ…!?」
玄司はカグツチの柄を握る。
「大丈夫です師匠!!ウィザーティーチは以前、僕にオーバークリエイトマガジンをくれた人です!」
零音は玄司を落ち着かせた。
「あげたマガジン、使ってくれてるみたいだね~。嬉しいよ!」
ウィザーティーチは頭の後ろで手を組んだ。
「ところで君たち、今困ってるんだろ?俺んちこない?」
「え…?」
零音はウィザーティーチの発言に困惑した。
「信用できんな。行くぞ、零音。」
玄司はウィザーティーチの言葉に耳を傾けず、歩き始めた。
「…ありがとうございます!案内してください!!」
「なっ…!?」
玄司は足を止め、振り向いた。
「おっし!俺についてこい!!」
ウィザーティーチは走り出し、零音は追いかける。
「おい!本当に信用できるのか!?」
玄司は渋々追いかけ、零音に問いかけた。
「このまま逃げ回っててもキリがありません!今はウィザーティーチを信用しましょう!」
零音は玄司を説得し、走り続ける。
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しばらく走り、三人は古いアパートにたどり着いた。
「ここが俺の家でーす!さっ!入って入って!」
ウィザーティーチは自分の部屋の鍵を開け、扉を開けた。
「…お邪魔します。」
零音と玄司は、ウィザーティーチの部屋の中に入った。
ウィザーティーチは、オレンジ色の照明を点ける。
部屋はとても狭く、畳の上は散らかっており、中央にはちゃぶ台が一個置かれている。
「よいしょ…適当にくつろいでー。」
「は…はい。」
ウィザーティーチと零音は、畳の上にあぐらをかいて座った。
ちゃぶ台を挟んで、零音と怪人態のウィザーティーチが見合っているその光景はとてもシュールだ。
玄司はまだウィザーティーチを警戒しており、座らずに押し入れに寄りかかっている。
「お茶飲む?煎餅もあるよ~。」
ウィザーティーチは床に散らばっている物を漁り、煎餅の袋を取り出した。
「あ、ありがとうございます…いただきます。」
零音は煎餅の袋を開け、ボリボリと食べ始めた。
『…ウィザーティーチという男の声…どこかで聞いたことがあるような…』
カグツチは玄司の腰でそう呟いた。
「…?」
玄司はそんなカグツチの独り言を疑問に思いつつ、適当に聞き流した。
すると、突然部屋の扉が開き、誰かが部屋の中に入ってきた。
「っ…!?」
全員が扉の方を見た。
玄司はカグツチの柄を握り、戦闘態勢に入った。
「俺たちだ。零音。やっと追いついたぜぇ。」
「来夢!みどりさん!無事でよかった!!」
部屋に入ってきたのは、来夢とみどりだった。
「こいつら仲間?」
ウィザーティーチは零音に聞いた。
「はい!来夢とみどりさんです!」
「零音さん!大変なことになりました…!」
みどりは慌てた様子で零音に迫った。
「どうしたのみどりさん…?」
「さきほど、レイジングフォックスの隊員がこんなことを言っていました…」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「くっ…貴様…ファルブロスに伝えろ…」
隊員が、倒れながらみどりに話しかける。
「…?」
「長官からの伝言だ…明日、レイジングフォックス本部前の広場に来い…さもなければ、伊武 咲来を殺す…」
「なっ…!!?」
それを聞いたみどりは驚愕した。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「…母ちゃんを…殺す…!?」
零音は目を見開いて、驚いていた。




