第20話 伊武 零音
明日流はレイジソルジャーアルファに、かおるはレイジソルジャーベータに、斗馬はレイジソルジャーガンマに、杏樹はレイジソルジャーデルタにそれぞれ変身した。
大護は変身せずに、立ち尽くしている。
「うおおおおおおおおっ!!」
アルファは零音の顔面を殴る。
「うっ…!!」
零音は路地裏の外まで吹き飛ばされた。
「みんな…なんで…」
「さっき言っただろ。お前は俺たちの家族を殺した。俺たちは復讐のためだけにこの10年間、お前とくだらない友達ごっこをしていた!それだけのことだ!!」
「ぐぁっ…!!」
アルファは零音の腹を蹴り上げた。
「くっ…ううっ…」
零音は立ち上がり、泣きながら走って逃げた。
「逃げるのやめなー。」
デルタが飛び上がり、零音の上に回り込んで二丁拳銃で零音の足元を撃った。
「くっ…」
「オラァ!!」
零音が立ち止まっていると、ベータが零音の顔面に回し蹴りを食らわせた。
「っ…!!」
零音は地面に倒れた。
すると零音の顔の真横に矢が突き刺さった。
「っ…!?」
「動くな…」
弓を持っているガンマが次の矢を構えている。
「くっ…」
零音はゆっくりと立ち上がる。
そんな零音にアルファが迫ってくる。
「…さっき…いつまでも友達だって言ったじゃないか…!僕は…みんなを…本当に友達だと思ってた…!!」
「お前だけだ。」
アルファはそれだけ言ってベルトにセットされているマガジンを押し込んだ。
《リローディング》
「あっ…!!明日流くん!我々の目的はファルブロスの捕獲です!殺してはダメです!!」
大護が叫んだ。
「…」
しかしアルファは大護の言うことを聞かずにベルトのボタンを押した。
《アルファレイジブレイク》
「死ね…!!」
アルファはエネルギーを溜めた右手で零音に殴り掛かる。
「…!!」
零音は涙を流しながらただ立ち尽くしている。
パンチが直撃し、激しい揺れが起こり、煙が舞う。
煙が晴れると、零音の目の前で、アダムがアルファのパンチを手で受け止めていた。
「…!!アダム!?」
「なに!?」
アダムはアルファの手を払いのけ、手から光弾を放った。
「くっ…!!」
光弾はアルファに直撃した。
「ふっ!」
アダムは零音の腕を掴み、体を発光させた。
「うっ…!」
その場にいる全員が思わず目を瞑る。
目を開けると、そこにはアダムと零音の姿はなかった。
「クソぉっ!!」
アルファは壁を思いっきり殴った。
「大護!発信機の情報を!」
変身解除した斗馬は大護に迫った。
「は…はい!」
大護はバッグからパソコンを取り出し、開いた。
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「うわぁっ!」
人間態になったアダムは零音を放り投げた。
その反動で、零音のポケットからお守りと、腰に巻かれたユーティライザーが外れて地面に転がった。
「…アダム…なんで…?」
「すべてを知ったようだな、ファルブロス。」
零音は起き上がった。
「アダム…僕がファルブロスというのは本当なのか…?」
「ああ、本当だ。君は無のマテリアス、ファルブロスだ。」
零音の質問にアダムは即答した。
「いまだに信じられない…なんで僕が…」
「君は12年前、星戸府を消滅させた後、我々を裏切ったカグツチの手によって体を失った。」
「え…?カグツチさんに…!?」
「君とカグツチはコアのみが残り、どちらもレイジングフォックスに回収された。カグツチのコアは修復機能を失っていたため、兵器に改造された。しかし、君は壊れた修復機能で徐々に体を復元していった。まるで人間の成長のように。」
「でも、そんなのまったく覚えてない…」
「君はカグツチの攻撃の影響で記憶喪失になっていたんだ。だがすべての記憶を忘れたわけではあるまい。なにか覚えていることはないか?」
「……まさか!あの夢!!?」
零音は昔からよく見る夢を思い出した。
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「俺は…ヒーローになるんだあぁぁぁ!」
叫んでいる1人の少年。
少年の後ろには幼い男の子。
辺りにはなにもない真っ暗な暗闇。
少年がパンチを繰り出すと、突然爆発が起き、大きな爆音とともに真っ暗な空間が火に包まれる。
視界がぐらつき、怪物のような自分の手がうっすらと見える。
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「あれはただの夢じゃない…過去の記憶だったんだ…」
「記憶喪失になった君を再びファルブロスに戻すために、私はわざと弱いマテリアスを生み出して君と戦わせた。闘争本能を刺激するためだ。だが君は最終的に死を目の前にして生存本能でファルブロスに戻った。」
零音はシェリーに毒を盛られ、死にかけたことでファルブロスに覚醒したのだ。
「レイジングフォックスは、君がいつファルブロスに戻っても対処できるように常に監視していたようだな。」
「…」
「どうだ?これで人間の醜さがわかっただろう?私とともに来い。ファルブロス。新世界の創造には君の力が必要だ。君が人類をこの地球ごと消滅させ、新たな地球をマテリアスたちに作らせることで新世界は完成する。」
アダムは零音に手を差し伸べた。
「…」
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「…零音…私はあなたの母親じゃない…」
「2022年6月19日。241万1068人が行方不明になり、63人が死亡した星戸府消滅。それをやったのは…お前なんだよ!!」
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「お、おい!ファルブロスだ!ファルブロスがいるぞ!!」
「キャーーーーッ!!」
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「あたしたちはレイジングフォックスの諜報員。10年間あんたをずっと監視するためだけに近づいた。」
「俺たちはお前に家族を殺されてるんだよ…この10年間…お前を殺したいと思わなかった日はない…」
「ファルブロス…お前を殺す!!」
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零音はこれまでのショックだった出来事を振り返った。
「…!!」
そして、アダムの手を掴もうと手を伸ばす。
その時、アダムと零音の手の間を遮るかのようにカグツチが振り下ろされる。
リバイトウルスだ。
「ふっ…!!」
ウルスはアダムに斬りかかる。
「くっ…」
アダムは怪人態になり、カグツチを腕で受け止めた。
「…まあいい、覚醒の日は近い…」
アダムはそう言い残し、瞬間移動して姿を消した。
ウルスはカグツチからマガジンを引き抜いて変身解除した。
「…」
「師匠…」
零音と玄司はその場に立ち尽くしていた。
「…師匠!!僕を殺してください!!」
零音は玄司が持っているカグツチの剣先を握り、自分の首に持ってきた。
「僕はファルブロス…!!大勢の人間を殺した怪物だ!!僕はこの世にいてはいけない!!僕が死ねばみんなが喜ぶ!!」
零音は泣きながら玄司に訴えかけた。
「さあ!!早く!!」
カグツチを握る手からは血がにじみ出る。
「…それは、お前の意志でやったのか?」
「…え?」
「お前は大勢の人間を殺すことを、自ら望んでやったのか!?」
玄司は初めて零音の前で大声を出した。
「……それは…」
「どうなんだ!!?」
「……」
零音はカグツチから手を放し、膝から崩れ落ちた。
「…そんなわけ…ないじゃないですか…!!」
零音の目からボロボロと涙がこぼれ落ちる。
「お前の名前はなんだ…?」
「僕は…ファルブロス…」
「違う!!お前の本当の名前はなんだ!?」
「……僕の…名前は…」
零音は咲来と過ごした日々を思い出した。
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「零音!!」
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「僕の名前は…伊武 零音です!!」
零音は思いっきり叫んだ。
「そうだ、お前はヒーローを目指す一人の人間、伊武 零音だ。」
玄司はカグツチを鞘に納刀した。
「バカなことは考えるな。これからもお前は、お前らしく生きろ!!」
「…はい!!」
零音は涙を腕で拭きながら立ち上がった。
「でも…また僕がファルブロスになって、誰かに襲い掛かったら…」
「その時はお前を敵とみなし、殺す。覚悟しておけ。」
「…はい!あっ…」
零音はお守りが地面に落ちていることに気づき、拾いに向かった。
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「いい?お守りには神様が入ってるの!神様が出て行っちゃったらお守りの意味がないから絶対に開けちゃダメよ!!わかった?」
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「っ…!」
零音は咲来からお守りを貰ったときのことを思い出した。
ついお守りの中身が気になった零音は、お守りを拾い、袋を開けて中身のものを取り出す。
それは、小さい機械のようなもので、赤いライトが点滅していた。
「これは…?」
「…!!発信機!?」
「え!?」
その機械を見て玄司は驚いた。
「いたぞ!!」
すると明日流たち、レイジングフォックスがその場所に現れた。
零音がずっと持っていた、〈いつも見てるよ〉と刺繍で書かれているお守りの中に入っていたものは、レイジングフォックスに零音の位置を知らせる発信機だった。
「…!!」
零音は発信機を握りつぶして破壊した。
「突破するぞ。」
玄司は落ちているユーティライザーを拾い、零音に差し出した。
「…はい!」
零音はユーティライザーを受け取り、腰に装着した。
《アームドライズ》
《《レイジソルジャーアルファ、ベータ、ガンマ、デルタ ウェアリング》》
明日流、かおる、斗馬、杏樹はレイジソルジャーに変身した。
零音と玄司はマガジンを起動した。
《ジャスティスクリエイト》
《ブレイブファイヤー》
零音はマガジンをユーティライザーにセットし、玄司はカグツチにマガジンをセットした。
『《ローディング》!』
零音は変身ポーズをとり、玄司は柄を握った。
「変身!!」
そして零音はレバーを倒し、玄司はカグツチを抜刀し、剣先から火の狼が飛び出る。
《ユーティライズ》
『イグニッションライズ!』
玄司は火の狼を斬る。
《リバイトレオン クリエイト アクティブ》
『リバイトウルス ファイヤー アクティブ!』
二人はリバイトに変身した。
「はあっ!!」
レオンはアルファに殴り掛かった。
アルファはレオンのパンチを手のひらでガードする。
すると上からデルタが銃弾を撃ち込んでくる。
「っ…!」
銃弾が飛んでくることに気づいたレオンはアルファから離れ、銃弾を避ける。
「ふっ!」
ウルスはベータに斬りかかる。
ベータは腰から刀を二本取り出して逆手持ちし、カグツチをガードする。
すると上からガンマが矢を三発放ってくる。
「ふんっ!!」
ウルスはベータを押し倒し、カグツチで矢を防ぐ。
「はぁっ!!」
そしてウルスは上にいるガンマとデルタに向かって火の斬撃を飛ばす。
「っ…!!」
するとアルファが火に驚き、しゃがみこんでしまう。
「ぐ…うっ!!」
右腕の火傷の跡が疼き、アルファは右腕を押さえた。
「ぐあああっ!!」
「うわーー!!」
そして上にいるガンマとデルタに火の斬撃は当たった。
「明日流!杏樹!斗馬!」
ベータは叫んだ。
「連携が乱れた…!今のうちに行くぞ!!」
「はい!!」
ウルスとレオンは走り抜ける。
「く…行かせるかぁ!!」
アルファは立ち上がり、レオンに殴り掛かる。
アルファの拳はあと少しでレオンに届く。
「う、うわあああああああ!!」
大護は震えた手でレオンに向かって銃を発砲する。
しかし、銃弾は壁に当たって跳ね返り、アルファに目の前に着弾する。
「くっ!!」
アルファは思わず立ち止まってしまう。
するとレイジソルジャーたちのベルトから警告音が鳴り始める。
「うっ…!体が…」
ベータは動こうとしたが、体が硬直して動かない。
「ちっ…オーバーヒートか…」
アルファはベルトからマガジンを引き抜いて変身解除する。
ほかのレイジソルジャーも変身解除する。
「…大護!!」
明日流は大護に迫り、大護の胸ぐらを掴む。
「てめぇのせいで逃げられたじゃねぇか!!」
「す…すいません…」
「やめろ。明日流…」
かおるは大護から明日流を引きはがす。
「ちっ…発信機は破壊された。プロトライザーも冷却しなければならない。一度本部に帰還するぞ…」
明日流たちはその場から立ち去った。




