第19話 真実
「俺は…ヒーローになるんだあぁぁぁ!」
そう叫んでいるのは1人の少年だった。
少年の後ろには幼い男の子もいる。
辺りにはなにもない真っ暗な暗闇。
少年がパンチを繰り出すと、突然爆発が起き、大きな爆音とともに真っ暗な空間が火に包まれた。
ぐらつく視界の中で自分のものであるだろう手が少しだけ見えた。
その手はまるで怪物のような手だった。
「うわっ!」
零音は爆発に驚き目を覚ました。
しかしそこは真っ暗な暗闇ではなく、薄暗い研究室だった。
どうやら零音は夢を見ていたようだ。
「…ここは……」
零音の体は鎖で壁に縛られていた。
「なんだこれ…紫絵理さんは…?」
「おはよう!伊武 零音くん…だったっけ?」
困惑している零音に男が話しかけてきた。
よく研究室を見渡すと、何人か人がいて、零音に向かって銃を構えている人もいる。
「あ…あなたは…?」
零音は男に問いかけた。
「私の名は金山 小平。レイジングフォックスの長官だ。ようこそ、レイジングフォックスへ。」
金山と名乗る男は手を広げた。
「レイジングフォックス…?」
零音が研究室の奥の方を見ると、そこには咲来がいた。
咲来のそばにはユーティライザーも置いてある。
「あ…!母ちゃん!!これどうなってるんだよ!外してくれよ!!」
零音は暴れ、鎖をほどこうとした。
「ふっふっふ…はっはっはっは!!言ってやれ!伊武!!」
金山は顎で咲来に指示を出した。
「…零音…私はあなたの母親じゃない…」
咲来は零音を睨みながら言った。
「えっ…」
零音の中の時は止まった。
「…母親じゃないって…どういうこと…?」
「ふははははは!!!すべて教えてやる!!」
金山はニヤニヤしながら零音に顔を近づけた。
「伊武 零音。お前は…ファルブロスだ。」
「…っ!!?」
零音はさらに衝撃的なことを言われ、目を見開いた。
「どういうことだよ…僕がファルブロスって…」
「2022年6月19日。241万1068人が行方不明になり、63人が死亡した星戸府消滅。それをやったのは…お前なんだよ!!」
「…!!?」
零音は混乱し、唖然としていた。
「そして我々レイジングフォックスは、お前に大切な人を奪われた人々で構成されている。伊武は恋人を殺されたと言っていたな。」
「えっ…」
零音は過去の咲来の発言を思い出した。
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「父ちゃんは怪物…ファルブロスに殺された…!!」
「私はファルブロスを絶対に許さない…!!」
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「…」
咲来はただ黙って零音を睨んでいた。
「…僕がファルブロスだなんて…そんなの嘘だ!!」
「ふっふっふ…これを見れば信じるかな?」
金山はそう言って机のボタンを押した。
すると零音の目の前に、天井からモニターが降りてきた。
「これは昨日の映像だ。」
モニターには、虹林南高校の屋上で倒れている零音が映し出されていた。
シェリーに毒を盛られた直後の映像だ。
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力尽きて気を失った零音の目は突然開いた。
零音はゆっくり立ち上がり、腰にユーティライザーを巻く。
そして体の中から光る物体が飛び出し、それを手で掴んだ。
光る物体は形を変え、マガジンになった。
零音はそのマガジンを起動する。
《エンプティボイド》
そしてマガジンをユーティライザーにセットした。
《ローディング》
ユーティライザーから警告音が鳴り響く。
「…」
零音は無表情でレバーを倒した。
《フォースドライズ》
「うおおおおオオオオオオオオッ!!!!」
零音は叫び出し、その体は大きくなっていく。
《リバイトレオン ファルブロス アクティブ》
「ウオオオオオオオオオオッ!!!」
零音はリバイトレオン ファルブロスフォームに変身した。
そして屋上から飛び降り、校庭に着地した。
「えっ…!?なにこいつ…!?」
シェリーは突然現れたレオンに驚いた。
「グルルルル…ウアアアアッ!!」
レオンはシェリーに向かって走ってくる。
「くっ…!!」
シェリーは手から毒を出し、レオンに撃ち込む。
毒は直撃するが、レオンにはまったく効いていない。
「ウウウウウッ!!!」
レオンのパンチはシェリーの顔面に直撃し、シェリーは吹き飛んだ。
「うっ…」
吹き飛ばされたシェリーにレオンは飛びかかり、馬乗りになった。
そしてシェリーの顔面を何度も殴る。
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映像はそこで止まった。
「そんな…紫絵理さん…」
「これでわかっただろう?お前はファルブロスなんだよ。」
モニターが上がると、再び金山の顔が見えた。
「嘘だ…嘘だああああああああアアアアアアアッ!!!」
零音が叫ぶと、零音の胸から光る物体が飛び出た。
「ひぃっ!!」
金山は飛んできた光る物体に驚き、腰を抜かした。
光る物体は空中でマガジンに変化し、起動した。
《エンプティボイド》
そしてマガジンは、咲来のそばに置いてあるユーティライザーのスロットにセットされた。
《ローディング》
「はっ…!!」
ユーティライザーは中に浮き始めた。
咲来は急いでユーティライザーを掴んだ。
「ううっ…ああっ!!」
しかしあまりにも強い勢いで引っ張られ、咲来は手を放してしまう。
ユーティライザーは零音に向かって飛んでいく。
そして零音の腰に巻き付き、勝手にレバーが倒れた。
《フォースドライズ》
「ウオオオオオオオオッ!!!」
《リバイトレオン ファルブロス アクティブ》
零音はファルブロスフォームに強制的に変身し、鎖を引きちぎった。
「ひっ!!う、撃て!撃てえええ!!」
金山は腰を抜かしたまま周りにいる隊員に指示を出した。
レオンは隊員にアサルトライフルで撃たれる。
「オオオオオオオオッ!!」
しかしまったく効いておらず、レオンは二人の隊員を腕で薙ぎ払った。
そしてレオンは研究室の扉を破壊し、外に脱走した。
「街に出たら大変なことに…長官!避難指示を出しましょう!」
咲来は腰を抜かしている金山に言った。
「いや…しばらく泳がせておこう。」
「なぜです!このままでは危険です!!」
「ふっふっふ…もう一度世間に奴の恐ろしさを味わってもらう…」
金山はニヤッと笑った。
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「うっ…あれ…?ここは?」
目を覚ますと、零音は潰れた車の天井の上に倒れていた。
外は夜だ。
「うわっ…!まさか…僕…またファルブロスに…?」
零音は自分の手のひらを見ながら言った。
その手には血がこびりついていた。
「…」
零音は混乱しながら、とりあえず街を歩いた。
しばらく歩くと、人が集まっているところに出た。
人々はビルの壁に設置された大きなモニターでニュースを見ている。
『レイジングフォックスの金山長官は、12年前に星戸府を消滅させたファルブロスが、人間に擬態して生きていると発表しました。』
すると画面に零音の顔写真と、零音が虹林南高校の屋上でファルブロスフォームに変身する映像が映し出された。
『ファルブロスは、伊武 零音という偽名で12年間人間に擬態していたとのことです。ファルブロスは現在も逃走中です。この顔を見かけたら、すぐに警察、もしくはレイジングフォックスに通報してください。』
「なっ…!?」
零音はその映像を見て唖然としていた。
「ねぇあの人、写真と同じ顔じゃない…?」
「お、おい!ファルブロスだ!ファルブロスがいるぞ!!」
「キャーーーーッ!!」
零音の顔を見た人々は悲鳴を上げ、逃げ惑った。
「…!!」
零音は何もできず、その場に立ち尽くしていた。
「いたぞ!!」
するとレイジングフォックスの隊員が零音を発見し、零音に向かって走ってくる。
「……くそぉっ!!!」
零音は走り出し、隊員から逃げる。
(なんでこんなことに…!!昨日まで普通に学校に通ってたのに…!!なんで…!!)
必死に走る零音の目からは涙が溢れていた。
「おい!こっちだ!!」
しばらく走って逃げていると、零音は路地裏から伸びた手に腕を掴まれた。
「えっ…!?」
そしてそのまま路地裏に引っ張られた。
手を引っ張ったのは明日流だった。
明日流だけでなく、そこには斗馬、大護、かおる、杏樹もいる。
「明日流!!みんな!!?」
「シーッ!!」
杏樹は零音の口を塞いだ。
壁に張り付いている明日流は、レイジングフォックスの隊員が通過するのを確認した。
「どうやら行ったみたいだな…」
杏樹は零音の口から手を放した。
「プハッ!みんな…なんで!?」
「いやぁニュースで見てびびったぜ…まさかお前がファルブロスだったなんてな!」
斗馬は笑いながら言った。
「僕のことが怖くないの…?」
「当たりめぇだろ。何年お前と一緒にいると思ってんだ。」
かおるは呆れたように言った。
「もう何が起きても驚きませんよ!ですよね?明日流くん!」
大護は明日流に問いかけた。
「ああ…俺たち、いつまでも友達だぜ!」
明日流は親指を立てた。
「みんな…!!」
「ほら!行こー!しばらくは明日流くんが家で匿ってくれるって!」
杏樹は零音の手を引っ張って走り出した。
ほかのみんなも走って先を進む。
「うっ…ううっ…ありがとう…!!みんな!!」
零音は泣きながら走る。
「はっ…!!」
しかし、零音は、シェリーに襲い掛かった映像を思い出して我に返った。
「ダメだ!!」
零音は立ち止まり、杏樹の手を振り払った。
「零音くん…?」
「僕のそばにいたらダメだ…またファルブロスになったら…みんなに襲い掛かるかもしれない…みんなごめん!!」
零音はみんながいる方とは反対方向に走り出した。
「ちっ…」
次の瞬間、明日流は飛び上がり、零音に向かって飛び蹴りをした。
「うわっ!!」
零音は吹き飛ばされ、地面に転がった。
「うっ…」
起き上がった零音は明日流の方を見た。
「あーあ。やっちゃったか。」
かおるはため息をついた。
「もう我慢の限界だ…ようやく本性を見せたと思いきや、いつまで友達ごっこを続けなきゃならねぇんだ…?」
明日流の顔はさっきまでとは違い、ものすごい形相で零音を睨んでいる。
「明日流…?なに言ってるの…?」
零音は困惑した顔で明日流を見る。
「このまま本部に連れていくつもりだったけど…こうなったらもう隠してても無駄だな…」
斗馬はそう呟いた。
「あたしたちはレイジングフォックスの諜報員。10年間あんたを、ずっと監視するためだけに近づいた。」
かおるは零音を睨みながら言った。
「え…?」
「俺たちはお前に家族を殺されてるんだよ…この10年間…お前を殺したいと思わなかった日はない…」
明日流はそう言うと、腰にベルトを装着した。
そしてかおる、斗馬、杏樹もベルトを装着し、マガジンを取り出した。
四人はマガジンを起動した。
《プロトアルファ》
《プロトベータ》
《プロトガンマ》
《プロトデルタ》
四人はマガジンをベルトの右側のスロットにセットした。
《ローディング》
そしてベルトの左側にあるボタンを押した。
《アームドライズ》
《レイジソルジャーアルファ ウェアリング》
《レイジソルジャーベータ ウェアリング》
《レイジソルジャーガンマ ウェアリング》
《レイジソルジャーデルタ ウェアリング》
四人は黒い鎧を纏い、鎧の隙間がそれぞれ青、ピンク、緑、黄色に発行しているレイジソルジャーに変身した。
「っ…!!?」
「ファルブロス…お前を殺す!!」
アルファは零音に殴り掛かる。




