第17話 将来の夢
「「零音!誕生日おめでとう!!」」
クラッカーの音が鳴り響き、紙吹雪が舞う。
「ありがとう!!みんな!!」
今日は9月3日。零音の17歳の誕生日だ。
零音の家には明日流、斗馬、大護、かおる、杏樹が来ていた。
「さあみんな!!すき焼きいっぱい食べて!!」
咲来はテーブルの上の鍋を両手を広げて指し示した。
「「いただきます!!」」
みんな鍋から肉を取り、生卵につけて食べる。
「ん~うまい!!」
口に肉を頬張った零音は満面の笑みで喜んだ。
「そうでしょ!今回はかおるちゃんも作るの手伝ってくれたのよ!」
咲来がそう言うとかおるは自慢げな顔をした。
「そうなんだ!ありがとうかおる!おいしいよ!!」
「…!!そんな…おいしいだなんて…やめろよ~エヘヘ…」
零音に褒められた瞬間、かおるの顔はものすごい笑顔になった。
「相変わらず誕生日はすき焼きなんですね。」
大護は肉を食べながら咲来に話しかけた。
「そうなのよ!零音の誕生日はやっぱりすき焼きよね~。」
咲来も肉を口に頬張る。
「あ、キノコは苦手だから…」
斗馬は箸で取ったえのきを鍋に戻した。
「おい!あたしはな!鍋で一度箸で持ったものを『やっぱいいや』で戻すやつが、この世で二番目に嫌いなんだよ!!」
かおるは斗馬に怒鳴った。
「わかったわかった!食べるから!!」
斗馬は仕方なく鍋に戻したえのきを取り皿に入れた。
「オリペン怒られてやんのー。」
「うるせぇ!」
杏樹は怒鳴られた斗馬をバカにした。
「フーフー…あっつ!!」
明日流は肉が熱すぎて取り皿に腕をぶつけ、生卵をこぼして服にかけてしまった。
「あ!大丈夫明日流くん?その服脱いで零音の服に着替えて!」
咲来は零音の部屋に行こうと席を立つ。
「あ!大丈夫です!少し、外で乾かしてきます…」
「うん…お肉残しておくわねー!」
明日流はリビングから庭に移動した。
「母ちゃん。明日流は人前で上着は脱がないよ。」
「え?どうして?恥ずかしがり屋さん?」
「違うよ。右腕に火傷の跡があるんだよ。それを見せたくないから、明日流は昔からずっと長袖を着てるんだ。」
「そうだったのね…」
「…僕、ちょっと明日流と話してくる!」
零音は席を立って庭に向かった。
「おーい、いなくなんのかよ!本日の主役!」
「すぐ戻ってくるから!」
零音はかおるにそう言い残して庭に出た。
「明日流!」
「…零音。どうしたんだ?」
零音は庭に座っている明日流の横に座った。
「…覚えてる?僕たちが出会った時のこと。」
「どうした急に?」
「改めて思い返してみたんだ。今の僕があるのは、明日流のおかげだからね。」
「おいおい、大げさだなぁ!」
「ほんとだよ!小学校の初日。明日流がいなかったら僕は夢を諦めてた!」
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10年前の4月。
小学校の初日。
「それじゃあみんな、一人ずつ立って名前と将来の夢を言ってくださーい!」
「「はーい!!」」
生徒が一人ずつ名簿順に立ち上がって、名前と将来の夢を言っていく。
そしてすぐに零音の番が回ってきた。
「伊武 零音です!将来の夢はヒーローになることです!!」
零音は立ち上がって元気よく言った。
「ヒーローだって!」
「ぷぷぷ!バカみたい!」
しかし、生徒たちは一斉に笑い出し、零音のことを馬鹿にする。
零音は落ち込み、立ったままうつむいてしまう。
すると一人の生徒が机を叩いて勢いよく立ち上がった。
生徒たちはその音に驚き、静まり返る。
「橘 明日流。俺の夢もヒーローになることだ。人の夢を馬鹿にするんじゃねぇよ!!」
明日流はそれだけ言って、再び座った。
「…!!」
零音は衝撃を受け、呆然としていた。
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休み時間になり、零音は明日流の席に来た。
「さっきはありがとう!明日流くん!」
「ん?ああ…」
「ねえ明日流くん!ストロングマンブラザーズって知ってる?」
「ああ…知ってる。」
「ほんと!?僕大好きなんだ!!」
「零音…くんはストロングマンブラザーズが好きだからヒーローになりたいのか?」
「うーん…それもあるけど…昔からよく同じ夢を見るんだ!その夢で誰かが『俺はヒーローになるんだ!』って叫んでるんだよ!その夢の影響かなぁ!」
「…そっか。」
「ねえねえ!今度一緒にヒーローごっこしようよ!」
「…うん。」
明日流は軽く頷いた。
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「あの時明日流が立ち上がってくれなかったら、僕はヒーローになる夢を諦めてたかもしれない。」
「そうかぁ?お前なら諦めない気がするけどな。」
「へへへ…それから一緒にヒーローごっこするようになって…いじめられてる大護を助けたこともあったよね!」
「…そんなこともあったな。」
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「お前いつもイヤホンで何聞いてんだよ!」
「よこせよ!!」
「や、やめてよ~!!」
いじめっ子二人が大護からイヤホンを強引に奪おうとしている。
そこに二人の影が近づく。
「人々を脅かす悪の手先よ!刮目せよ!」
「覚悟しろ!」
「正義のヒーロー!ストロングマン!」
「情熱の相棒!パッションマスク!」
「「ここに、参!上!」」
零音は右手で指を差し、明日流は零音の体にに寄り掛かって左手で指を差す。
「は?なんだこいつら。」
「だっさ。行こうぜ~。」
いじめっ子の二人は呆れてその場を去った。
「はっはっは!あいつら俺たちにビビッて逃げたぜ!!」
明日流は腰に手を当てて笑った。
「もう大丈夫だよ!君も一緒に遊ぼうよ!!」
零音は倒れている大護に手を差し伸べた。
「っ…!!ありがとうございます…!」
大護は零音の手を掴んだ。
これが零音と大護の出会いだった。
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「さ!そろそろ戻ろう!早くしないとお肉がなくなっちゃう!」
「ふっ…そうだな!」
二人は立ち上がってリビングに戻った。
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翌日。
夏休みはとっくに終わっており、零音たちはいつも通り学校に通っていた。
「おはよう!みんな昨日はありがとう!!」
教室に入ってきた零音は明日流たちに言った。
「おう!おはよう!」
明日流たちは手を上げて軽く挨拶した。
零音は自分の席についた。
「おはようございます伊武さん。昨日お誕生日だったんですね。おめでとうございます。」
隣の席で本を読んでいる紫絵理は零音に話しかけた。
「え!?委員長、僕の誕生日覚えててくれてたの!?ありがと…あっ!!」
紫絵理の発言に驚いた零音は、机の上に置いたリュックを床に落としてしまった。
リュックのチャックが開いていたため、リュックの中からユーティライザーが飛び出し、床に転がった。
「ん?これは…」
(まずい!!)
紫絵理は床に転がったユーティライザーを発見し、拾い上げた。
「また学校におもちゃを持ち込んで…これは没収します!」
「違うんだよ委員長!!それはおもちゃじゃないんだ!!」
零音は慌てて紫絵理に迫る。
「おもちゃじゃないならなんなんですか?」
「えっと………筆箱!」
「そんなわけないでしょう!没収します。」
(し…しまったぁ…!!どうしよう…)
零音は紫絵理にユーティライザーを没収されてしまった。
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下校時間になり、六人で下校しようとしている零音だが、学校の外に出ても紫絵理に交渉を続ける。
「お願い委員長!さっきのおもちゃだけはどうしても返してほしいんだ!!」
「ダメです。」
「いい加減諦めろよ。おもちゃくらい。」
かおるは零音に呆れていた。
「そういうわけにはいかないんだよ!」
こうして帰り道を歩いている零音たちだったが、七人の前に一人の女性が現れた。
「すいませーん。みなさん楽しそうですねぇ。」
その女性は細身で、髪型はツインテール。黒いマスクをしており、胸元にリボンがついているピンクの服に黒いスカートを履いている。いわゆる地雷系女子と呼ばれる容姿をしている。
そしてなにより目に入るのが、その女性は男性の遺体を抱きかかえており、女性の左手の小指に巻かれている赤い糸が男性の遺体の小指に繋がっている。
「え…」
零音たちはその容姿に驚き、呆然としていた。
「私も一緒に遊んでいい~?」
女性がそう言って右手を動かすと、明日流、斗馬、大護が突然、かおると杏樹に殴り掛かってきた。
「うわっ!!な、なんだ体が勝手に!!」
「いって!!なにすんだよ明日流!!」
明日流の拳はかおるの顔面を殴った。
「ぐっ…!!杏樹!逃げろ…!!」
「ど、どうしたのオリペン!!?」
斗馬は杏樹に襲いかかり、杏樹は逃げ回る。
「う、うわああああああ!!!」
「えっ…!!?」
大護は紫絵理に襲い掛かる。
「危ない!!」
零音は紫絵理をかばい、大護に背中を殴られた。
「うっ…どうしたんだみんな!!」
「くっ…ごめん零音くん!体が勝手に動くんだ!!」
大護は謝りながらも再び零音に殴り掛かる。
零音は紫絵理の手を引っ張ってそれを避ける。
「キャハハハ!!」
女性はその様子を見て笑っている。
(あいつ…まさかマテリアスか…!!)
零音は紫絵理を守りつつ思った。
(どうしよう…ユーティライザーは没収された…このまま師匠や来夢、みどりさんが来るのを待つか…?いや、それだとみんなを守り切れない…!!)
「委員長…僕から没収したおもちゃ、今持ってる…?」
「え?持ってますけど…」
「それを僕に渡してくれ!!早く!!」
零音は紫絵理に手を伸ばした。
「は…はい!」
紫絵理は困惑しながらバックに手を入れた。
そして、零音から没収した変身ベルトを取り出し、零音に渡した。
「ど…どうぞ!!」
「ありがとう!変身!!」
零音は急いでベルトを腰に当ててレバーを下げた。
《キュピーン!刮目せよ~♪正義のヒーロー♪ストロングマーン!》
ベルトから音楽が流れ、周囲に鳴り響いた。
「……ん?」
零音は今一度腰に当てているベルトを見た。
それは以前、紫絵理に没収されたおもちゃの変身ベルトだった。
「違う!!これじゃなくて、今朝僕から没収したやつ!!早く!!」
零音はおもちゃのベルトを思わず投げ捨て、再び紫絵理に手を伸ばす。
「は…はい!!」
紫絵理は再びバックに手を入れ、変身ベルトを取り出し、零音に渡す。
その変身ベルトは今度こそユーティライザーだ。
「よし!」
零音は受け取ったユーティライザーを腰に巻き、マガジンをポケットから取り出して起動した。
《ジャスティスクリエイト》
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「いい?零音、あなたがリバイトであることは学校のみんなに言っちゃダメよ。」
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「…母ちゃん、ごめん。」
零音はマガジンをユーティライザーにセットする。
《ローディング》
零音は目をつぶり、変身ポーズをとる。
「…変身!!」
そして目を開け、レバーを倒す。
《ユーティライズ》
《リバイトレオン クリエイト アクティブ》
零音はリバイトレオンに変身した。
「えっ…!?」
紫絵理や、その場にいる全員は、零音が変身したことに驚いた。
「はああああああっ!!」
レオンは女性に向かって走り出し、殴り掛かる。
「キャハハハ!!」
レオンのパンチが女性の顔面に当たる直前、レオンの体は固まって動かなくなった。
「っ…!!体が…!!」
「私はあずてゃん。糸のマテリアスだよ!よろしくねぇ!」
あずてゃんと名乗る女性は怪人態に変貌した。
「糸…?そういうことか…!!」
よく見るとレオンの体や、明日流たちの体に糸が引っかかっており、あずてゃんの手によって操られていた。
「うおおおおおお!!!」
レオンは力を振り絞って暴れ回り、自分の体に引っかかっている糸を振りほどいた。
そしてオーバークリエイトマガジンを取り出して起動した。
《オーバークリエイト》
レオンはレバーを起こしてジャスティスクリエイトマガジンを引き抜き、オーバークリエイトマガジンをセットした。
《ローディング》
そしてレバーを倒した。
《ユーティライズ》
《リバイト レオン オーバークリエイト アクティブ》
レオンはオーバークリエイトフォームにフォームチェンジした。
「はあっ!!」
レオンは空中に巨大な輝石の剣を作り出し、腕を横に振ると、連動して輝石の剣が動く。
輝石の剣は明日流たちの体に引っかかっている糸を一斉に斬った。
「うっ!!」
糸が斬れて、明日流たちは膝から崩れ落ちる。
「オリペン!!怖かったよ~!!」
「ハァ…ハァ…わりぃ杏樹…」
杏樹はしゃがみこんでいる斗馬に抱き着いた。
「おい、大丈夫かよ。」
かおるは明日流の頭をペシっと叩いた。
「ああ…悪い…それよりあれは…」
明日流はレオンの方に目を向けた。
「はあああっ!!」
レオンは手に輝石を纏い、あずてゃんに殴り掛かる。
「ふっ!!」
あずてゃんは指の先から糸を出し、なびかせた糸を固め、レオンの拳を受け止める。
「くっ…」
レオンは一度後ろに下がる。
あずてゃんは手のひらから太い糸を出し、レオンの体をぐるぐる巻きにする。
「くっ…」
「キャハハハ!!大丈夫ですかぁ~?」
あずてゃんは身動きが取れなくなったレオンに、指の先から出た糸で斬りかかる。
「ぐおおおおおおっ!!!」
レオンは巻き付いた糸を破り、迫りくるあずてゃんの顔面に回し蹴りを食らわせる。
「ぐぉっ…!!!」
あずてゃんは吹き飛んだ。
「…てめぇ…調子乗ってんじゃねぇぞ!!」
あずてゃんの口調が変わり、手のひらから糸を出してレオンを斬ろうとする。
「ふっ!!」
レオンは体を輝石のドームで覆って糸を防ぐ。
そして輝石のドームから飛び上がったレオンはレバーを起こして倒す。
《リローディング》
《オーバークリエイトフィニッシュ》
「はああああああああああっ!!!」
レオンは足に円錐状の輝石を纏い、あずてゃんに向かってキックを繰り出す。
「くっ…!!」
「キャッ!」
あずてゃんは紫絵理に糸を引っかけて引き寄せ、盾にする。
紫絵理は思わず目を瞑る。
「っ…!!?」
紫絵理が盾にされていることに気づいたレオンはキックの軌道を逸らし、あずてゃんの真横の地面に激突する。
「私飽きちゃったぁ。また遊ぼうね~。」
あずてゃんはそう言い残し、糸を周りの家に引っかけて、まるで空を飛んでいるかのようにその場から去っていった。
紫絵理に引っかかっている糸はほどけ、紫絵理は倒れ込んだ。
「待て!!」
レオンはあずてゃんを追いかけようとするが、紫絵理たちの安否を気にし、追いかけるのを諦める。
レオンはレバーを起こし、マガジンを引き抜いて変身解除する。
「委員長、怪我はない?」
零音は紫絵理に手を伸ばした。
「はい…なんとか…」
紫絵理は零音の手を掴み、立ち上がる。
「零音…お前……」
明日流たちの零音を見る目は、いつもと違っていた。
「…みんな…僕…本物のヒーローになっちゃった!」
零音は開き直って笑った。
「…す、すげえええええ!!まじかよ!!」
明日流は興奮し、大声で叫んだ。
「零音くんすごーい!!」
杏樹は輝いた目で零音を見た。
全員の零音を見る目は一気に輝いた。
「あは…ははは!!」
リバイトに変身できるということがみんなにバレてしまった零音だったが、受け入れられたため、安心した。
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「ねぇ~アダム様ぁ。リブ細胞使ってもいい~?」
ムーブメントのアジトに帰還したあずてゃんは、アダムに問いかけた。
「なにに使う気だ?あず。」
「ちょっとムカつくやつがいてぇ。イタズラしたいんだよねぇ。お願~い。」
あずてゃんは首を傾げて頼み込んだ。
「…まあいいだろう。」
「やったぁ!アダム様大好き!!」
あずてゃんは飛び上がって喜んだ。
――――――――――――――――――――――――
紫絵理は自分の部屋のベットに寝転んでいた。
紫絵理の部屋には本とぬいぐるみがたくさんある。
「…伊武さん、かっこよかったなぁ。」
紫絵理は変身して戦っていた零音を思い出して、独り言を呟いていた。
「もし、伊武さんとお付き合いができたら…いや私のことなんか好きになれないか…地味だし…」
「キャハハ…その恋…応援するよ!」
すると、糸で操られたクマのぬいぐるみが動き出し、甲高い声を発した。
ぬいぐるみは両手で紫色に光る物体。コアを持っている。
「え…!!」
クマのぬいぐるみは紫絵理にコアを投げ、埋め込んだ。
「うっ!?ああああああああああああっ!!!!」
紫絵理の姿はマテリアスに変化していく。




