第16話 爆弾ゲーム
虹林市の港。
子供たちが氷漬けにされているコンテナの中で玄司は、氷のマテリアス、狩尾 冷貴に遭遇していた。
「くっ…!!」
玄司はマガジンを取り出し、起動しようとした。
「おおっと!!コンテナの中をよく見ろ!」
「…?」
玄司は後ろを振り向き、コンテナの奥を見た。
「これは…!!?」
「あっひゃっひゃっひゃ!!俺が氷漬けにした爆弾だ!!お前が変身すれば、火で氷が解け、ガキどもはドカーンだ!!」
狩尾は手を広げ、爆発を表現した。
『冷貴…貴様…!!』
カグツチは怒りを露わにした。
「くっ…」
玄司は、構えたマガジンを仕方なく下ろした。
「それに、氷は時間が経つとどんどんとけていく。もたもたしてても爆発するぜぇ?」
「…!?」
「あっひゃっひゃっひゃ!!さあ!変身せずに俺を倒せるかな??行くぞ!!」
狩尾は地面に氷を張り、コンテナの隙間を滑って移動した。
「っ…!!」
玄司はコンテナの外に出て、辺りを見渡した。
左右のコンテナの隙間から滑って移動している狩尾の姿がたまに見える。
その姿は怪人態に変化していく。
「あっひゃっひゃ!!」
気が付くと狩尾は飛び上がっており、上から玄司に襲い掛かる。
「っ…!!」
玄司はカグツチを引き抜き、狩尾のバットを受け止めた。
「ぐ…!!!」
玄司は変身していないため、狩尾の力に押される。
「どうしたどうした!!」
狩尾は玄司の脇腹に蹴りをいれる。
「ぐはっ…!!」
玄司は吹き飛ばされ、地面を転がる。
「どうしたもっとこいよ!!」
「…っ!!うおおおおお!!!」
玄司は狩尾の胸に斬りかかる。
刃は狩尾に当たるが、力が入りきらず、狩尾の体は斬れない。
「おらぁっ!!」
狩尾は玄司の腹を正面から蹴る。
「っ…!!!」
吹き飛ばされた玄司はコンテナの壁に激突し、地面に倒れる。
「ぐっ…なぜ…子供たちを巻き込む…!?」
倒れている玄司は狩尾に問いかける。
「あー…俺は子供のころ積み木遊びが好きだった…だが何度も遊んでいるうちに、積み上げることより壊す方が楽しいということに気づいた…そのうちブロック遊びにも飽き、今度は人を壊すことの方が楽しいと思えるようになった!!」
狩尾は語りながらバットを振り下ろした。
玄司は咄嗟に前転してそれを避ける。
「今はお前の大切のもの、お前の人生を壊すのを最高に楽しんでいるのさ!!」
「ぐっ…!!」
狩尾は続けてバットを振り下ろしてくる。
玄司は左手でカグツチの峰を持って攻撃を防ぎ、両手で耐える。
「うおおおおおおっ!!!」
玄司は力を振り絞って立ち上がり、カグツチの柄を両手で持ち、狩尾の腹に突き刺す。
「うっ…へっへっへ…」
狩尾は腹にカグツチが突き刺さっているのにも関わらず、どんどん玄司に接近し、さらに深くカグツチが刺さっていく。
「っ…!?」
「オラオラオラ!!」
狩尾は玄司の頭を何度もバットで殴った。
「ぐっ…ぐぁ…!!」
「ふんっ!!!」
そして最後に、玄司の頭に思いっきり頭突きした。
「っ……くっ!!」
玄司は一瞬失神しかけたが、なんとか意識を保ち、狩尾の腹からカグツチを引き抜いた。
「ハァ…ハァ…」
玄司の頭から血が垂れてくる。
「モタモタしてるとガキが爆発するぞ~?」
「ハァ…ハァ…」
玄司はカグツチを杖にして立っているのがやっとだった。
「…!!」
玄司はフラフラとした足つきで斬りかかるが、簡単に避けられてしまう。
「プッ!!」
あまりにも弱すぎる攻撃に狩尾は思わず吹き出し、そのまま玄司を蹴り飛ばした。
「っ…!!!」
玄司は子供たちがいるコンテナの中に吹き飛ばされた。
「ハァ……ハァ……」
玄司は足を震わせてながらなんとか立ち上がった。
その目はほぼ白目を剥いている。
立ち上がった玄司は、ついにポケットからマガジンを取り出し起動した。
《ブレイブファイヤー》
『何をするつもりだ玄司!!』
「ハァ…変身する…」
「ガキを見殺しにするつもりかぁ!!いいぞー!!あっひゃっひゃっひゃ!!」
狩尾は手を叩いて笑った。
「…全員守る……ハァ…すべての戦えない子供たちに変わって…お前を殺す…!!」
玄司はカグツチを納刀し、マガジンをセットした。
『……ローディング…』
「ハァ…うおおおおおおおおおおっ!!!」
玄司は最後の力を振り絞り、カグツチを抜刀した。
『イグニッションライズ!!!』
すると爆弾が解凍され、コンテナの中で爆発が起きた。
「あーひゃっひゃっひゃっひゃ!!!ガキども全員殺しやがった!!やっぱりお前は最高だぜ!!」
狩尾は拍手し、大笑いした。
「あっひゃっひゃっひゃ!!…あ?」
しかし、コンテナの中の爆発は思ったより小さい。
『リバイトウルス ファイヤー アクティブ!!!!』
「うおおおおおおおおおっ!!!!!」
すると爆炎の中からリバイトウルスが現れ、ウルスはカグツチで爆炎を吸い込み、そのまま爆炎を纏ったまま狩尾の腹に斬りかかる。
「くっ…!!」
狩尾の氷の体は火で溶けて行く。
「おおおおおおおおおおおおお!!」
「ぐあああああああああああああっ!!!」
そして狩尾の胴体は真っ二つに斬れた。
「ハァ…ハァ…」
すべての力を出し切ったウルスは、片膝立ちをした。
「…やられちゃった~。」
「っ…!?」
次の瞬間、ウルスの背後に斬られたはずの狩尾が現れ、バットでウルスの頭を殴った。
「ぐああああっ!!!」
ウルスは強制変身解除され、地面に倒れ込んだ。
「なぜ…」
「あっひゃっひゃ!!体を斬られる直前、コアだけ体から脱出して体を再生したのさ!!お前が斬ったのは俺の形をした氷像だ!!」
「くっ…そ…」
玄司は再び立ち上がろうとするが、もう力が入らない。
「ふん…わざと爆弾を起動して爆炎を吸収し、俺にぶつけたか…ガキは全員無事…やるなぁ!さすが相棒の代わりだ!」
狩尾は拍手した。
「楽しかった…また遊ぼうぜ…お兄ちゃん。あっひゃっひゃっひゃ!!!」
そして狩尾は高笑いしながら地面を凍らせ、滑ってどこかへ去ってしまった。
「待て…!!」
玄司は追いかけようとするが、我に返り、コンテナの中の子供たちに目を向ける。
氷はとけたが、子供たちは気を失い、凍傷でかなり危険な状態だ。
「くっ……」
玄司は子供たちに手を伸ばすが、力尽き、気を失ってしまう。
『玄司!?玄司!!』
カグツチが必死に呼びかけるが、その声は玄司には届かない。
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「…しょう!…師匠!!」
「んっ…」
玄司が目を覚ますと、目の前には零音がいた。
「師匠!よかったぁ…」
「…ここは?」
「僕の家です。」
玄司は零音の部屋の布団で横になっていた。
「…子供たちは…!!」
「大丈夫です!全員病院に送りました。」
「零音が爆音を聞きつけてなかったら危なかったわよ!一体なにがあったの?」
咲来は玄司に聞いた。
「…氷のマテリアス…狩尾 冷貴に会った。」
「!?氷のマテリアスって師匠の妹さんを…」
「狩尾 冷貴…!!大量殺人犯の元死刑囚ね。」
零音と咲来は同時に驚いた。
「あいつ…次会った時は必ず殺す…!!」
玄司は拳を強く握った。
「怪我がひどい。しばらくは安静にしてなさい。」
咲来はそう言って部屋を出た。
「あ、あのトマトジュース買ってきました。飲みます?」
零音は缶のトマトジュースを玄司に差し出した。
「…気分じゃない。お前が飲め。」
「え…僕トマトジュース苦手…」
「…」
「わかりました!僕が飲みます!」
うつろな目をしている玄司の言うことを、零音は断れなかった。
「いただきます…」
零音はトマトジュースを口に含んだ。
「ブーーーーーーッ!!!」
無理して飲んだため、零音はつい口に含んだトマトジュースを吹き出してしまった。
「あ、そうそう玄司くん。定期的に包帯を取り換え…っ!?」
再び部屋に戻ってきた咲来は、その光景を見て驚いた。
「零音!!どうしたの!?何があったの!?」
咲来はトマトジュースを吹き出した零音を、吐血していると勘違いした。
「ちが…これ…トマトジュース…ゲホッ!ゴホッ!!」
「零音!しっかりして!」
「……ふっ…」
玄司は二人のそのやり取りを見て、少し笑った。




