第14話 ゴーストバイク
「ヒャッホオオオオウ!!!」
虹林市の観光通り。
ここは夜になると暴走族がよく現れる。
今日も大勢の暴走族がバイクで駆け抜けている。
「ギャハハハハハ!!」
バイクの騒音が夜の街に鳴り響く。
そんな中、後ろからもう一台バイクが接近してくることに、一人の暴走族の男が気づいた。
「ん?おい誰かもう一人呼んだー?」
「呼んでねーよ。」
「なんだよ…ヘッヘッヘ…じゃああのバイクの道塞いでやろうぜ!」
「フォオオオオオオ!!」
暴走族は道路を蛇行運転し始めた。
「ん?おい…」
「あ?」
「あのバイク…人が乗ってなくねぇか?」
「は?なに言ってんのお前?」
他のメンバーは、一人のその発言を信じなかった。
後ろのバイクはどんどん近づいてくる。
「お…おい!やっぱ誰も乗ってねぇって!!」
「うるせぇな!なに言って…は!!?」
他のメンバーが後ろを振り向いて迫りくるバイクを確認すると、確かにそのバイクの運転席には誰も乗っていなかった。
「お…おい!なんだあれ!!??」
「と…とにかく逃げるぞ!!」
暴走族はスピードを出して無人バイクから逃げた。
しかし無人バイクはもの凄いスピードで追いかけてくる。
「はえぇ!!追いつかれる!!」
無人バイクはあっという間に暴走族に接近した。
そして、無人バイクのハンドルから生え、タイヤを挟んでいる腕のようなものが動き出し、その腕が暴走族を襲う。
「ギャアアアアア!!!」
暴走族は全員横転し、バイクから放り投げられた。
「ヘッヘッヘ…」
無人バイクは暴走族を蹴散らした後、笑い声を発しながらそのまま過ぎ去っていった。
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翌日。
「はぁっ!!たぁっ!!!」
零音は家の庭で戦闘の特訓をしている。
そんな中、インターホンが鳴った。
「はーい。」
咲来は玄関に行き、扉を開けた。
「あら、佐藤さん!」
訪ねてきたのは向かいの家のおばさん。佐藤 悦子だった。
「こんにちは伊武さん!これ昨日の晩御飯の煮物!作りすぎちゃったから食べて!!」
佐藤は大きい鍋を咲来に渡した。
「わっ!ありがとうございます!!」
「ところで伊武さん、あんた知ってる?」
「なんですか?」
「ここ最近観光通りに現れるっていう無人バイクよ!!」
「無人バイク?」
玄関で話している声は、庭にいる零音にも聞こえていた。
零音は手を止め、話し声に耳を傾ける。
「そうそう。最近暴走族が事故を起こしててね。みんな口をそろえて無人バイクにやられたって言うらしいのよ~。あれは多分、暴走族に轢かれて亡くなった人の幽霊よ!きっと!!」
「は、はぁ…」
「怖いわよね~。伊武さんも夜出かける時は気を付けてね~。」
そう言い残し、佐藤は向かいの家へ戻っていった。
「は、はい!煮物ありがとうございます!」
咲来は家の扉を閉め、リビングに戻った。
「ねぇ母ちゃん。今の話…」
庭にいた零音は家の中に入り、咲来に話しかけた。
「うん…マテリアスかもしれないわね。みんなを集めて今夜、観光通りに行きましょう!」
「母ちゃん!僕、もう変身していいよね?」
「そうね…もう怪我もよくなっただろうし、いいわよ!」
――――――――――――――――――――――――
昼頃、零音の家に玄司が入ってきた。
「なっ!?なんでお前らがここにいるんだ!!?」
玄司は、来夢とみどりがリビングにいることに驚いた。
「あら、ごきげんよう。」
「おおっ。お前か。」
来夢とみどりは煮物を食べながら、リビングに入ってきた玄司の方を見た。
「くっ…」
玄司はバッグからカグツチを取り出し、鞘を握った。
「待ってください師匠!二人は仲間になったんですよ!!」
「仲間だと…?」
「そういうことです。よろしくお願いいたします。」
「よろしくなー。」
「ふざけるな!!お前たちはムーブメントだろ!!」
玄司はカグツチから手を離さない。
「カグツチをしまいなさい玄司くん。二人はムーブメントを裏切ったのよ。」
「そんなの信じられるか!俺は認めないぞ!!」
咲来は説得するが、玄司は聞く耳を持たない。
「そうカッカしねぇでお前も煮物食えよ!うめぇぞ!」
「っ…!!」
玄司は来夢の呼びかけにイラつき、カグツチを少し引き抜いた。
「まあまあまあまあ!!落ち着いて!!」
零音はそんな玄司を宥めた。
「さあ!全員揃ったことだし、本題に入るわね。」
咲来は強引に話を始めた。
「今回の敵は無人バイク。おそらくバイクのマテリアスだと思われるわ。」
「バイクか…速そうだな。」
来夢は腕を組んで話を聞く。
「そうだ来夢!君めっちゃ速いから追いつけるんじゃない?」
零音は名案を思い付いたかのように来夢に言った。
「当然だ。俺のスピードについてこれるやつはいない。」
「そうね…バイクの弱点はタイヤよ。来夢くんはバイクを追い越して待ち伏せしてタイヤを狙撃、スピードが落ちて減速したところをみんなで叩く。これでいきましょう!」
咲来は思い付いた作戦をみんなに説明した。
「狙撃か…わかった。任せろ。」
「よーし!それじゃあ今日の夜、みんなで観光通りに行こう!!」
零音は張り切り、腕を突き上げた。
そんな中、玄司は一人、不満そうにしていた。
――――――――――――――――――――――――
深夜0時が過ぎた。
昼間は車通りが多い観光通りも、すっかり静まり返っている。
そんな観光通りの歩道に、零音、玄司、来夢、みどり、咲来の五人はいた。
「0時を過ぎたわ。そろそろ暴走族が現れ始める時間帯だけど…もしかしたら無人バイクの噂を聞いて、暴走族が走るのを控えている可能性もあるわね…」
咲来はスマホの時計を見ながら言った。
「てことは、マテリアスは現れないかもしれないのか?」
「その可能性もありますが、待つに越したことはないかと…」
みどりはそわそわしている来夢を安心させるように言った。
すると、さっきまで静かだった観光通りに、バイクのエンジン音が鳴り響く。
道路の奥から、大勢のバイクのライトで辺り一面は照らされた。
「あれは…暴走族!!」
零音は歩道から車道に飛び出した。
「お、おい!!」
突然の行動に驚いた来夢は、零音に向かって手を伸ばした。
零音は車道の真ん中で手を広げ、道を塞いだ。
「うおっ!!」
暴走族は、零音の存在に気づき、一斉にブレーキをかけて止まった。
「なんだてめぇ!!あぶねぇだろ!!」
「今この辺りで無人バイクが暴走族を襲っているんだ!君たちも危ないから走るのをやめるんだ!!」
「無人バイクだぁ?そんなの知ったことか!行くぞおめぇら!!」
暴走族は一斉に走り出し、零音を避けて先に進んだ。
「そんな…!!」
零音は行ってしまった暴走族を見て、車道に立ち尽くしていた。
「まったく…お前の優しさにはつくづく呆れるぜ…」
来夢はため息をつきながら言った。
「フフフ…マテリアスを倒して守ればいい話です。」
「あんなやつら…守る価値もない。」
玄司はみどりの発言に水を差した。
するとしばらくしないうちに、またバイクのエンジン音が迫ってきた。
「ん?あれは…」
『匂うぞ!!マテリアスの匂いだ!!』
そのバイクの接近とともに、カグツチはマテリアスの匂いをかぎ取った。
車道の真ん中に立っている零音は迫りくるバイクを目を凝らして見た。
「無人バイク…!!」
そのバイクの運転席には、人が乗っていなかった。
バイクのマテリアス、モーターサイクルマテリアスだ。
「現れたか…」
「行きましょう。」
「…」
来夢とみどりと玄司も、歩道から車道に出た。
「みんな…行こう!!」
零音はユーティライザーを腰に巻き、全員マガジンを取り出し、起動した。
《ジャスティスクリエイト》
《ブレイブファイヤー》
《ストライクサンダー》
《ブロウウインド》
そして、マガジンを変身アイテムにセットする。
『《《《ローディング》》》!』
零音は変身ポーズをとり、玄司はカグツチの鞘を握り、パラライザーを上に向けた来夢の髪は逆立ち、みどりは一回転してファンライザーで口元を隠す。
「「「変身!!」」」
そして、零音はユーティライザーのレバーを倒し、玄司はカグツチを抜刀し、来夢はトリガーを押し、みどりは風を起こした。
《ユーティライズ》
『イグニッションライズ!』
《パラライズ》
《ファンライズ》
零音の姿は変化していき、玄司は火の狼を斬り、来夢に雷が落ち、みどりは竜巻に包まれる。
《リバイトレオン クリエイト アクティブ》
『リバイトウルス ファイヤー アクティブ!』
《リバイトクライム サンダー アクティブ》
《リバイト風凛 ウインド アクティブ》
四人はリバイトに変身した。
「よーし、来い!無人バイク!!」
レオンは身構えるが、接近してきたモーターサイクルマテリアスは、四人の間を通過し、奥に進んでしまった。
「うわっ…!!速い!!」
レオンは風圧で少しよろけながら言った。
「俺に任せろ!!」
クライムは電撃を纏い、まるで稲妻のような速さで、モーターサイクルマテリアスを追いかけた。
「私も行きます。」
風凛は風になり、その場から消えた。
「僕たちは先回りしましょう!カグツチさん!匂いの方向へ誘導してください!!」
『ああ!わかった!!』
「…」
レオンとウルスは、カグツチの指示に従い、モーターサイクルマテリアスが進んだ方向とは、別の方向に進んだ。
「お、おい!あれ、無人バイクじゃないか?」
さきほどの暴走族が、後ろから迫りくるモーターサイクルマテリアスの存在に気づいた。
「嘘だろ…?本当にいんのかよ!!」
「逃げろおおおおお!!!」
暴走族はスピードを上げ、モーターサイクルマテリアスから逃げる。
しかし、どんどん差は縮まり、モーターサイクルマテリアスはすぐそこまで接近する。
その時、一本の稲妻がモーターサイクルマテリアスを追い抜く。
「うわぁ!なんだ!!?」
その稲妻は暴走族も追い抜き、少し先にあるビルの屋上に駆け上がった。
そして、体に纏った電撃を解除し、クライムは屋上からパラライザーを構える。
「…止まれ!!」
モーターサイクルマテリアスの腕が動き出し、暴走族に襲い掛かろうとしたその瞬間。クライムは発砲し、弾丸はモーターサイクルマテリアスのタイヤに命中した。
「ぐっ…なんだ!!?」
モーターサイクルマテリアスは一気に減速し、バランスを崩して蛇行し始めた。
するとモーターサイクルマテリアスの前方に竜巻とともに風凛が現れた。
「はぁっ!!」
風凛はファンライザーで風を起こし、モーターサイクルマテリアスは中に浮かんだ。
「ぐおおおおっ!!!」
「零音さん!!」
風凛が零音の名を叫ぶと、先回りしてオーバークリエイトフォームにフォームチェンジしていたレオンが、風凛の背後から空中に飛び上がった。
『オーバークリエイトフィニッシュ』
「はあああああああああああっ!!!!」
そしてレオンは足に円錐状の輝石を纏ったキックを、中に浮かんでいるモーターサイクルマテリアスに食らわせた。
「ぐあああああああぁぁぁぁっ!!!!!」
モーターサイクルマテリアスは爆発し、レオンは地面に着地した。
「くっ…ああっ…」
モーターサイクルマテリアスは人間の姿に戻り、もがき苦しんでいた。
「ふう…終わった!!」
「天晴です。零音さん。」
風凛は、汗を拭く仕草をしているレオンに一言そう言った。
そして後から追いついたウルスも含め、全員変身解除した。
「どうだ?これで俺たちのこと信用してくれるか?」
ビルから降りてきた来夢は自慢げな顔をして玄司に言った。
「…ふんっ」
玄司は不満そうに鼻息だけ吹いて目をそらした。
「ハァ…ハァ…やっと追いついた~。」
走ってきた咲来は、膝に手を当て、息を切らした。
「ねぇみんな!汗かいたし、この人を病院に送ったあと銭湯行かない?この辺りで、この時間でもまだ開いてるとこがあるの!!」
「銭湯??」
零音は首を傾げた。
――――――――――――――――――――――――
「ふあああああああっ!!!生き返るーーー!!」
湯舟に浸かった咲来は大声で叫んだ。
「正直、私にはお風呂の良さがわかりません…。なぜこのような施設があるのです?」
咲来の隣で湯舟に浸かっているみどりは、咲来に問いかけた。
「そりゃあ楽しいからよ!ほら!極楽って楽しみの極みって書くでしょ?なにか一つでも楽しみがないと、人生やっていけないわよ!!」
「楽しみですか…フフフ…探しておきます。」
みどりは咲来の回答に納得し、微笑んだ。
男湯では、零音と来夢が体を洗っている。
(師匠…結局来なかったな…)
零音は、一人だけ帰った玄司のことを考えていた。
「無人バイクの目的は、暴走族に轢かれた恋人の復讐だったらしいぞ。」
来夢は隣に座っている零音に言った。
「そっかぁ…やっぱりマテリアスにもいろいろあるんだな…」
零音と来夢は体を洗い流し、湯舟の方に向かった。
(ん?電気風呂?)
来夢は、普通の湯舟の横にある、電気風呂の看板の文字が気になった。
そして恐る恐る電気風呂に浸かった。
(!?これは…!!!)
来夢の体はピリピリと痺れ始めた。
(体が痺れる!!刺激される!!まさにこれは…充電!!!)
「ほぇ~…」
来夢は心地よさそうに脱力した。
「ど、どうしたの…来夢?」
「ふぇ~…」
普通の湯舟に浸かっている零音は心配したが、来夢は幸せそうな顔でニッコリと笑った。




