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虹色のヒーロー  作者: 葛木真時
第2章
14/23

第14話 ゴーストバイク

「ヒャッホオオオオウ!!!」


 虹林市の観光通り。

 ここは夜になると暴走族がよく現れる。

 今日も大勢の暴走族がバイクで駆け抜けている。


「ギャハハハハハ!!」


 バイクの騒音が夜の街に鳴り響く。

 そんな中、後ろからもう一台バイクが接近してくることに、一人の暴走族の男が気づいた。


「ん?おい誰かもう一人呼んだー?」

「呼んでねーよ。」

「なんだよ…ヘッヘッヘ…じゃああのバイクの道塞いでやろうぜ!」

「フォオオオオオオ!!」


 暴走族は道路を蛇行運転し始めた。


「ん?おい…」

「あ?」

「あのバイク…人が乗ってなくねぇか?」

「は?なに言ってんのお前?」


 他のメンバーは、一人のその発言を信じなかった。

 後ろのバイクはどんどん近づいてくる。


「お…おい!やっぱ誰も乗ってねぇって!!」

「うるせぇな!なに言って…は!!?」


 他のメンバーが後ろを振り向いて迫りくるバイクを確認すると、確かにそのバイクの運転席には誰も乗っていなかった。


「お…おい!なんだあれ!!??」

「と…とにかく逃げるぞ!!」


 暴走族はスピードを出して無人バイクから逃げた。

 しかし無人バイクはもの凄いスピードで追いかけてくる。


「はえぇ!!追いつかれる!!」


 無人バイクはあっという間に暴走族に接近した。

 そして、無人バイクのハンドルから生え、タイヤを挟んでいる腕のようなものが動き出し、その腕が暴走族を襲う。


「ギャアアアアア!!!」


 暴走族は全員横転し、バイクから放り投げられた。


「ヘッヘッヘ…」


 無人バイクは暴走族を蹴散らした後、笑い声を発しながらそのまま過ぎ去っていった。


――――――――――――――――――――――――


 翌日。


「はぁっ!!たぁっ!!!」


 零音(れおん)は家の庭で戦闘の特訓をしている。

 そんな中、インターホンが鳴った。


「はーい。」


 咲来(さくら)は玄関に行き、扉を開けた。


「あら、佐藤(さとう)さん!」


 訪ねてきたのは向かいの家のおばさん。佐藤 悦子(さとう えつこ)だった。


「こんにちは伊武(いぶ)さん!これ昨日の晩御飯の煮物!作りすぎちゃったから食べて!!」


 佐藤(さとう)は大きい鍋を咲来(さくら)に渡した。


「わっ!ありがとうございます!!」

「ところで伊武(いぶ)さん、あんた知ってる?」

「なんですか?」

「ここ最近観光通りに現れるっていう無人バイクよ!!」

「無人バイク?」


 玄関で話している声は、庭にいる零音(れおん)にも聞こえていた。

 零音(れおん)は手を止め、話し声に耳を傾ける。


「そうそう。最近暴走族が事故を起こしててね。みんな口をそろえて無人バイクにやられたって言うらしいのよ~。あれは多分、暴走族に轢かれて亡くなった人の幽霊よ!きっと!!」

「は、はぁ…」

「怖いわよね~。伊武(いぶ)さんも夜出かける時は気を付けてね~。」


 そう言い残し、佐藤(さとう)は向かいの家へ戻っていった。


「は、はい!煮物ありがとうございます!」


 咲来(さくら)は家の扉を閉め、リビングに戻った。


「ねぇ母ちゃん。今の話…」


 庭にいた零音(れおん)は家の中に入り、咲来(さくら)に話しかけた。


「うん…マテリアスかもしれないわね。みんなを集めて今夜、観光通りに行きましょう!」

「母ちゃん!僕、もう変身していいよね?」

「そうね…もう怪我もよくなっただろうし、いいわよ!」


――――――――――――――――――――――――


 昼頃、零音(れおん)の家に玄司(けんじ)が入ってきた。


「なっ!?なんでお前らがここにいるんだ!!?」


 玄司(けんじ)は、来夢(らいむ)とみどりがリビングにいることに驚いた。


「あら、ごきげんよう。」

「おおっ。お前か。」


 来夢(らいむ)とみどりは煮物を食べながら、リビングに入ってきた玄司(けんじ)の方を見た。


「くっ…」


 玄司(けんじ)はバッグからカグツチを取り出し、鞘を握った。


「待ってください師匠!二人は仲間になったんですよ!!」

「仲間だと…?」

「そういうことです。よろしくお願いいたします。」

「よろしくなー。」

「ふざけるな!!お前たちはムーブメントだろ!!」


 玄司(けんじ)はカグツチから手を離さない。


「カグツチをしまいなさい玄司(けんじ)くん。二人はムーブメントを裏切ったのよ。」

「そんなの信じられるか!俺は認めないぞ!!」


 咲来(さくら)は説得するが、玄司(けんじ)は聞く耳を持たない。


「そうカッカしねぇでお前も煮物食えよ!うめぇぞ!」

「っ…!!」


 玄司(けんじ)来夢(らいむ)の呼びかけにイラつき、カグツチを少し引き抜いた。


「まあまあまあまあ!!落ち着いて!!」


 零音(れおん)はそんな玄司(けんじ)を宥めた。


「さあ!全員揃ったことだし、本題に入るわね。」


 咲来(さくら)は強引に話を始めた。


「今回の敵は無人バイク。おそらくバイクのマテリアスだと思われるわ。」

「バイクか…速そうだな。」

 

 来夢(らいむ)は腕を組んで話を聞く。


「そうだ来夢(らいむ)!君めっちゃ速いから追いつけるんじゃない?」


 零音(れおん)は名案を思い付いたかのように来夢(らいむ)に言った。


「当然だ。俺のスピードについてこれるやつはいない。」

「そうね…バイクの弱点はタイヤよ。来夢(らいむ)くんはバイクを追い越して待ち伏せしてタイヤを狙撃、スピードが落ちて減速したところをみんなで叩く。これでいきましょう!」


 咲来(さくら)は思い付いた作戦をみんなに説明した。


「狙撃か…わかった。任せろ。」

「よーし!それじゃあ今日の夜、みんなで観光通りに行こう!!」


 零音(れおん)は張り切り、腕を突き上げた。

 そんな中、玄司(けんじ)は一人、不満そうにしていた。


――――――――――――――――――――――――


 深夜0時が過ぎた。

 昼間は車通りが多い観光通りも、すっかり静まり返っている。

 そんな観光通りの歩道に、零音(れおん)玄司(けんじ)来夢(らいむ)、みどり、咲来(さくら)の五人はいた。


「0時を過ぎたわ。そろそろ暴走族が現れ始める時間帯だけど…もしかしたら無人バイクの噂を聞いて、暴走族が走るのを控えている可能性もあるわね…」


 咲来(さくら)はスマホの時計を見ながら言った。


「てことは、マテリアスは現れないかもしれないのか?」

「その可能性もありますが、待つに越したことはないかと…」


 みどりはそわそわしている来夢(らいむ)を安心させるように言った。

 すると、さっきまで静かだった観光通りに、バイクのエンジン音が鳴り響く。

 道路の奥から、大勢のバイクのライトで辺り一面は照らされた。


「あれは…暴走族!!」


 零音(れおん)は歩道から車道に飛び出した。


「お、おい!!」


 突然の行動に驚いた来夢(らいむ)は、零音(れおん)に向かって手を伸ばした。

 零音(れおん)は車道の真ん中で手を広げ、道を塞いだ。


「うおっ!!」


 暴走族は、零音(れおん)の存在に気づき、一斉にブレーキをかけて止まった。


「なんだてめぇ!!あぶねぇだろ!!」

「今この辺りで無人バイクが暴走族を襲っているんだ!君たちも危ないから走るのをやめるんだ!!」

「無人バイクだぁ?そんなの知ったことか!行くぞおめぇら!!」


 暴走族は一斉に走り出し、零音(れおん)を避けて先に進んだ。


「そんな…!!」


 零音(れおん)は行ってしまった暴走族を見て、車道に立ち尽くしていた。


「まったく…お前の優しさにはつくづく呆れるぜ…」


 来夢(らいむ)はため息をつきながら言った。


「フフフ…マテリアスを倒して守ればいい話です。」

「あんなやつら…守る価値もない。」


 玄司(けんじ)はみどりの発言に水を差した。

 するとしばらくしないうちに、またバイクのエンジン音が迫ってきた。


「ん?あれは…」

『匂うぞ!!マテリアスの匂いだ!!』


 そのバイクの接近とともに、カグツチはマテリアスの匂いをかぎ取った。

 車道の真ん中に立っている零音(れおん)は迫りくるバイクを目を凝らして見た。

 

「無人バイク…!!」


 そのバイクの運転席には、人が乗っていなかった。

 バイクのマテリアス、モーターサイクルマテリアスだ。


「現れたか…」

「行きましょう。」

「…」


 来夢(らいむ)とみどりと玄司(けんじ)も、歩道から車道に出た。


「みんな…行こう!!」


 零音(れおん)はユーティライザーを腰に巻き、全員マガジンを取り出し、起動した。


《ジャスティスクリエイト》

《ブレイブファイヤー》

《ストライクサンダー》

《ブロウウインド》


 そして、マガジンを変身アイテムにセットする。


『《《《ローディング》》》!』


 零音(れおん)は変身ポーズをとり、玄司(けんじ)はカグツチの鞘を握り、パラライザーを上に向けた来夢(らいむ)の髪は逆立ち、みどりは一回転してファンライザーで口元を隠す。


「「「変身!!」」」


 そして、零音(れおん)はユーティライザーのレバーを倒し、玄司(けんじ)はカグツチを抜刀し、来夢(らいむ)はトリガーを押し、みどりは風を起こした。


《ユーティライズ》

『イグニッションライズ!』

《パラライズ》

《ファンライズ》


 零音(れおん)の姿は変化していき、玄司(けんじ)は火の狼を斬り、来夢(らいむ)に雷が落ち、みどりは竜巻に包まれる。


《リバイトレオン クリエイト アクティブ》

『リバイトウルス ファイヤー アクティブ!』

《リバイトクライム サンダー アクティブ》

《リバイト風凛 ウインド アクティブ》


 四人はリバイトに変身した。


「よーし、来い!無人バイク!!」


 レオンは身構えるが、接近してきたモーターサイクルマテリアスは、四人の間を通過し、奥に進んでしまった。


 「うわっ…!!速い!!」


 レオンは風圧で少しよろけながら言った。


「俺に任せろ!!」


 クライムは電撃を纏い、まるで稲妻のような速さで、モーターサイクルマテリアスを追いかけた。


「私も行きます。」


 風凛は風になり、その場から消えた。


「僕たちは先回りしましょう!カグツチさん!匂いの方向へ誘導してください!!」

『ああ!わかった!!』

「…」


 レオンとウルスは、カグツチの指示に従い、モーターサイクルマテリアスが進んだ方向とは、別の方向に進んだ。


「お、おい!あれ、無人バイクじゃないか?」


 さきほどの暴走族が、後ろから迫りくるモーターサイクルマテリアスの存在に気づいた。


「嘘だろ…?本当にいんのかよ!!」

「逃げろおおおおお!!!」


 暴走族はスピードを上げ、モーターサイクルマテリアスから逃げる。

 しかし、どんどん差は縮まり、モーターサイクルマテリアスはすぐそこまで接近する。

 その時、一本の稲妻がモーターサイクルマテリアスを追い抜く。


「うわぁ!なんだ!!?」


 その稲妻は暴走族も追い抜き、少し先にあるビルの屋上に駆け上がった。

 そして、体に纏った電撃を解除し、クライムは屋上からパラライザーを構える。


「…止まれ!!」


 モーターサイクルマテリアスの腕が動き出し、暴走族に襲い掛かろうとしたその瞬間。クライムは発砲し、弾丸はモーターサイクルマテリアスのタイヤに命中した。


「ぐっ…なんだ!!?」


 モーターサイクルマテリアスは一気に減速し、バランスを崩して蛇行し始めた。

 するとモーターサイクルマテリアスの前方に竜巻とともに風凛が現れた。


「はぁっ!!」


 風凛はファンライザーで風を起こし、モーターサイクルマテリアスは中に浮かんだ。


「ぐおおおおっ!!!」

零音(れおん)さん!!」


 風凛が零音(れおん)の名を叫ぶと、先回りしてオーバークリエイトフォームにフォームチェンジしていたレオンが、風凛の背後から空中に飛び上がった。


『オーバークリエイトフィニッシュ』


「はあああああああああああっ!!!!」


 そしてレオンは足に円錐状の輝石を纏ったキックを、中に浮かんでいるモーターサイクルマテリアスに食らわせた。


「ぐあああああああぁぁぁぁっ!!!!!」


 モーターサイクルマテリアスは爆発し、レオンは地面に着地した。


「くっ…ああっ…」


 モーターサイクルマテリアスは人間の姿に戻り、もがき苦しんでいた。


「ふう…終わった!!」

「天晴です。零音(れおん)さん。」


 風凛は、汗を拭く仕草をしているレオンに一言そう言った。

 そして後から追いついたウルスも含め、全員変身解除した。


「どうだ?これで俺たちのこと信用してくれるか?」


 ビルから降りてきた来夢(らいむ)は自慢げな顔をして玄司(けんじ)に言った。


「…ふんっ」


 玄司(けんじ)は不満そうに鼻息だけ吹いて目をそらした。


「ハァ…ハァ…やっと追いついた~。」


 走ってきた咲来(さくら)は、膝に手を当て、息を切らした。


「ねぇみんな!汗かいたし、この人を病院に送ったあと銭湯行かない?この辺りで、この時間でもまだ開いてるとこがあるの!!」

「銭湯??」


 零音(れおん)は首を傾げた。


――――――――――――――――――――――――


「ふあああああああっ!!!生き返るーーー!!」


 湯舟に浸かった咲来(さくら)は大声で叫んだ。


「正直、私にはお風呂の良さがわかりません…。なぜこのような施設があるのです?」


 咲来(さくら)の隣で湯舟に浸かっているみどりは、咲来(さくら)に問いかけた。


「そりゃあ楽しいからよ!ほら!極楽って楽しみの極みって書くでしょ?なにか一つでも楽しみがないと、人生やっていけないわよ!!」

「楽しみですか…フフフ…探しておきます。」


 みどりは咲来(さくら)の回答に納得し、微笑んだ。


 男湯では、零音(れおん)来夢(らいむ)が体を洗っている。


(師匠…結局来なかったな…)


 零音(れおん)は、一人だけ帰った玄司(けんじ)のことを考えていた。


「無人バイクの目的は、暴走族に轢かれた恋人の復讐だったらしいぞ。」


 来夢(らいむ)は隣に座っている零音(れおん)に言った。


「そっかぁ…やっぱりマテリアスにもいろいろあるんだな…」


 零音(れおん)来夢(らいむ)は体を洗い流し、湯舟の方に向かった。


(ん?電気風呂?)


 来夢(らいむ)は、普通の湯舟の横にある、電気風呂の看板の文字が気になった。

 そして恐る恐る電気風呂に浸かった。


(!?これは…!!!)


 来夢(らいむ)の体はピリピリと痺れ始めた。


(体が痺れる!!刺激される!!まさにこれは…充電!!!)

「ほぇ~…」


 来夢(らいむ)は心地よさそうに脱力した。


「ど、どうしたの…来夢(らいむ)?」

「ふぇ~…」


 普通の湯舟に浸かっている零音(れおん)は心配したが、来夢(らいむ)は幸せそうな顔でニッコリと笑った。

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