第11話 恩師と母校
ライジン、フウジンとの戦闘の翌日。
零音と咲来は、咲来の部屋で話していた。
「ふーん、ウィザーティーチ…一体何者かしら…?」
咲来は丸メガネをかけてオーバークリエイトマガジンを眺めながら言った。
「私以外にマガジンを作れる人…もしかしてMr.INDIGO?」
「Mr.INDIGOはマガジンを作れるの?」
零音は咲来からオーバークリエイトマガジンを受け取りながら聞いた。
「そうねぇ。じつはマガジンとカグツチは、Mr.INDIGOから送られてきた設計図をもとに作ったものなのよ。」
「え!?母ちゃんの発明じゃないの!?じゃあ母ちゃん天才じゃないじゃん!」
「ユーティライザーはちゃんと私の発明よ!!母ちゃん天才だもん!」
咲来はムスッとした表情でパソコンに顔を向けた。。
(ウィザーティーチ…本当にMr.INDIGOだったのかな…)
零音が考え事をしていると、インターホンがピンポンと鳴った。
「零音、出てくれる?」
咲来はパソコンの画面に顔を向けまま、零音に言った。
「うん、わかった。」
零音は玄関に向かった。
「はーい。」
零音が家の扉を開けるとそこには、スキンヘッドでメガネをかけていて、小太りした中年のおじさんが怖い顔で立っていた。
「うわあああああっ!!」
零音はその怖い顔に驚き、腰を抜かして倒れた。
「どうしたの零音?」
咲来は零音の悲鳴を聞きつけ、玄関に来た。
「え!?元林先生!!」
咲来は丸メガネをおでこにずらして驚いた顔をした。
「よっ!咲来!久しぶり!」
おじさんは笑顔で咲来に向かって片手を上げた。
「へ?先生??」
倒れたままの零音は、咲来とおじさんを交互に見ながら困惑した。
三人はリビングに移動した。
「紹介するね!この人は私の中学生の頃の担任の先生、元林 龍二先生!」
咲来は椅子に座っている元林を手で指して零音に紹介した。
「母ちゃんの中学のときの…!!」
「そしてこっちは私の息子の零音です!」
咲来は今度は零音を手で指して元林に紹介した。
「零音くんかぁ!元林だ!よろしく!」
元林は零音に対して手を差し出して握手を求めてきた。
「あ…よろしくお願いします!」
零音は元林の手を握り、握手をした。
「いやぁ、卒業生から結婚して子供ができたって連絡が来ることはよくあるんだけど、まさか咲来も結婚してたとはなぁ!それにこんな大きな子供までいるなんて!」
「そ、そうですね!いろいろ忙しくて連絡できなくて…!」
咲来は苦笑いをした。
「元林さん!!中学生の頃の母ちゃんって、どんな感じだったんですか?」
零音は輝いた目をして元林に聞いた。
「そうだなぁ…女番長!!って感じだったなぁ…ほんとやんちゃで落ち着きがなかったよ!」
「母ちゃんが…やんちゃだったんだ…!!」
「も~やめてくださいよ恥ずかしい!!」
咲来は赤くなった顔を手で隠しながら言った。
「私のことはどうでもいいんですよ!何しに来たんですか!先生!!」
「あ、そうだそうだ!咲来!来年の4月に同窓会をやるから、その招待に来たんだよ!咲来の連絡先を知ってるやつがいなかったから、なんとか家を探して来たんだ!」
「同窓会ですか…」
咲来の表情が曇った。
「私、友達少なかったからなぁ…」
「母ちゃん友達少なかったの!?」
「咲来はね…。自習教室で勉強してたんだ。」
「そうそう!メタセコね!」
暗い表情をしていた咲来は一気に明るい表情になった。
「メタセコ…?」
零音は聞き慣れない言葉に首を傾げた。
「メタセコイア。自習教室の名前だよ。みんなメタセコって呼んでたけどね!」
元林は零音に説明した。
「懐かしいなぁ…!」
咲来は目を輝かせて懐かしんでいる。
「でも、そのメタセコももうすぐでなくなっちゃうんだよ。」
「え!?なくなるってどういうことですか!?」
咲来は前のめりになって聞いた。
「造町中学校は今、新校舎ができててね。私たちが通っていた旧校舎はもうすぐで解体されちゃうんだよ。」
「解体!?そんな…」
咲来はうつむいた。
「母ちゃん…。そうだ!元林さん!今からその旧校舎の中に入ることってできますか?」
零音は元林に聞いた。
「え?今から!?そうだなぁ…許可が取れれば行けるかもな…」
「今からみんなで行きましょう!ね!母ちゃん!」
「零音…!」
零音は落ち込む咲来を元気づけるために提案した。
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三人は造町中学校旧校舎の玄関前に来た。
「うわぁ…!久しぶり!!」
咲来は旧校舎を見つめて少し涙ぐんだ。
「ここが母ちゃんの母校かぁ…」
「許可は取れたから中に入れるよ!さあ行こう!僕もここに来るのは久しぶりだ!」
元林は玄関を開け、中に入った。
咲来と零音もついていき、中に入った。
「先生!私メタセコに行きたい!」
「よーし!じゃあメタセコに行こう!!」
三人は玄関で靴を脱ぎ、スリッパを履いて、玄関から正面階段に向かった。
「ん?」
階段を上ろうとしたその時、零音は、誰もいないはずの廊下の電気がついていることに気づいた。
零音は階段を上らず、電気のついている廊下の方に向かった。
元林と咲来はそんな零音に気づかず、二階へ上がった。
そして二階の廊下を進み、職員室の正面にある<メタセコイア>と書かれた札が扉の上についている教室の前に来た。
咲来はメタセコの扉を開き、中に入った。
「うわああああ!懐かしい!!」
教室の中には、ダンボールで仕切られた大きな白いテーブルが四つ一組に繋がっていて、それがもう一組ある。
中はしばらく使われていないため、かなり埃っぽい。
「そうそう!ここに座って自習してたんだよなぁ…!!」
咲来は、入って一番手前の席に座った。
元林はそんな咲来を穏やかに見つめている。
「あっ…」
席を立った咲来は、隣のテーブルを見た瞬間、暗い表情になった。
「…咲来…柊人のことは…残念だったな…」
元林はしんみりとした顔をして、咲来の肩に手を置いた。
「…」
咲来はしばらく下を向いて黙っていた。
「…あれ?零音は?」
咲来は零音がいないことに気づき、我に返った。
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一方、電気がついている廊下の方に向かった零音。
その廊下のみ、奥まで蛍光灯が点灯している。
「なんでこの廊下だけ電気がついてるんだ…?」
零音は廊下の奥まで、恐る恐る進んだ。
そして、その廊下の先にあったのは体育館だった。
「体育館…?」
零音は体育館の扉を開いた。
体育館の中は照明が点いておらず、カーテンが閉まっているため真っ暗だ。
そんな真っ暗な体育館の中心で、大の字になって倒れている人がいるのが、廊下の明かりのおかげでうっすら見えた。
「誰か倒れてる…!?」
零音が倒れている人に気づいたその瞬間、体育館の照明がすべて点灯し、倒れていた人は零音の目の前に瞬間移動してきた。
「うわあああああ!!??」
零音は突然目の前に移動した男に驚き、後ろに下がった。
その男は白いスーツに長い白髪、そして目元に白い仮面をつけている。
アダムだ。
「アダム!?なんでここに!!?」
零音は、その男がアダムだと気づいた瞬間、拳を構えて臨戦態勢に入った。
アダムは零音の目の前から、右上のギャラリーに瞬間移動した。
「私は昔から体育館を独り占めするのが夢だった。広さ、明るさ、木の香り。いいと思わないか?」
アダムはギャラリーで、柵に手をかけながら体育館を見回して言った。
「…え?」
零音は困惑した。
敵のボスであるアダムがここいること、そして突然体育館を語り始めたこと、すべての意味がわからなかった。
「よくわからないけど…とにかく、僕と戦え!アダム!!」
零音はユーティライザーを装着し、オーバークリエイトマガジンを起動した。
《オーバークリエイト》
そしてユーティライザーに装填した。
《ローディング》
「変身!!」
ギャラリーにいるアダムを睨みながら、レバーを倒した。
《リバイトレオン オーバークリエイト アクティブ》
零音はオーバークリエイトフォームに変身した。
変身が完了したのと同時に、アダムがギャラリーから飛び降りながら、怪人態になった。
真っ白なその怪人態は、まるで天使のような姿だ。
アダムは空中から、レオンに向かって殴り掛かってきた。
「ふっ!!」
レオンはバックステップでアダムの攻撃を避け、着地したアダムに向かって殴り掛かった。
アダムは体制を立て直し、レオンのパンチを片手だけで受け流した。
レオンはひたすらパンチを繰り出すが、すべて片手で受け流される。
「っ!?」
何度もパンチを繰り出しているうちに、強い力で右手を掴まれた。
アダムは掴んだ手を払い、よろけたレオンの腹に右手から光弾を三発撃ち込んだ。
「ぐっ…!!」
ひるんだレオンが顔を上げると、さっきまで目の前にいたアダムはいなくなっていた。
「消えた…!?」
アダムはレオンの後ろに回り込んでおり、レオンに回し蹴りを食らわせる。
(後ろか…!!)
レオンは咄嗟に輝石で回し蹴りを防ぐが、威力が強すぎてレオンは輝石ごと吹き飛ばされた。
「ぐああああああああああっ!!!」
レオンは体育館のステージまで吹き飛ばされた。
壁に衝突するその瞬間、アダムはステージの上に先回りし、吹き飛んできたレオンを受け止めた。
「あまり壊したくないんだ。暴れないでくれ。」
「うああああっ!!」
レオンはそう囁いてきたアダムに向かってパンチを繰り出したが、アダムの姿は一瞬にして消えた。
(また消えた…なんの能力だ…?)
「ぐあっ!」
レオンがそう考えていると、後ろから攻撃を食らった。
アダムの姿はまだ確認できない。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「私はアダム。選ばれしものたちを正しい方向へ導く、希望の光だ。」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
(もしかして…光か…!!)
レオンは昨日、アダムが言っていた言葉を思い出し、アダムの能力を推測した。
「ぐあっ!!」
そんな推測をしている間も、アダムは襲い掛かってくる。
(アダムは僕の隙をついてくる…今の僕の隙は……右斜め後ろ!!)
「おおりゃああああああ!!」
レオンは背後に腕の形の輝石を生成し、パンチを空振りした。
パンチと連動して伸びた輝石は、背後から接近していたアダムに直撃した。
「くっ…!」
アダムはステージから吹き飛ばされ、体育館の床に転がった。
「今だ!!」
レオンはレバーを起こして倒した。
《リローディング》
《オーバークリエイトフィニッシュ》
「はああああああああっ!!!」
そして空中に飛び上がり、足に円錐状の輝石を纏ってキックを放つ。
「動くな。」
アダムがそう言って拳をぐっと握りしめると、レオンは空中でキックの体制のまま静止した。
(なんだ…?体が…動かない…!!)
「ふっ…!!」
アダムは空中で止まっているレオンに向かって指から光線を撃ち込んだ。
「うああああああああぁぁぁ!!!!」
光線が直撃したレオンは空中で爆発し、強制変身解除して床に落ちた。
「くっ…うう…」
零音は床に転がり、もがき苦しんでいる。
「零音!!」
「零音くん!!」
爆発音を聞きつけた咲来と元林は、体育館に駆け付けた。
「なんだ…!あの怪物は…!?」
元林はアダムの姿を見て言った。
「…」
アダムは人間態に戻った。
「…この校舎の解体を中止してください。さもなければ、我々は解体業者を襲撃します。」
アダムは元林に向かってそう言い残し、姿を消した。
「零音!!大丈夫!?」
咲来と元林は倒れている零音のもとに駆け寄った。
「ハァ…ハァ…母ちゃん…あれはアダムだ…」
「アダム!?あれが!?…なんでここに…?」
「あ、アダム…?」
元林は一人、状況を理解できずにいた。
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三人は家に帰り、零音は咲来に怪我の手当をしてもらっている。
「やつは解体を中止しなければ、解体業者を襲撃すると言っていました…。目的は不明ですが解体は中止した方がよさそうですね。」
「うん…造町中学校の校長先生に相談して、旧校舎の解体は中止してもらうことにするよ。」
椅子に座っている元林は深刻な顔をしながら言った。
「零音くん。怪我は大丈夫かい?」
元林は立ち上がり、零音のもとに来た。
「はい、大したことありま…イテテテ…」
零音は腹を押さえた。
「お大事にね。じゃあ僕はそろそろ帰るよ!零音くん!これからもお母さんを大切にするんだよ!」
元林はそう言いながら右手を差し出して握手を求めた。
「…はい!!」
零音は元林と強く握手を交わした。
三人は玄関に移動した。
「先生!私同窓会行きます!」
咲来は帰ろうとする元林に言った。
「おお!そうか!同窓会は来年の4月29日だ。次は同窓会で会おう!!」
「はい!!」
「それじゃあ!」
元林は手を振って、玄関を出た。
咲来と零音も手を振り、元林を見送った。
(…アダムが造町中学校の旧校舎の解体を阻止…?一体なぜ…?)
「母ちゃん!お腹すいた!!」
考えている咲来に零音は言った。
「そうね…ご飯にしよっか!なに食べたい?」
「カレー!!」
「おっけー!」
咲来は考えるのをやめ、キッチンに向かった。
「あ、零音!あなた最近無茶しすぎだから、しばらく変身禁止ね~。」
「えー!?」




