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虹色のヒーロー  作者: 葛木真時
第1章
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第1話 透明なモノ

「俺は…ヒーローになるんだあぁぁぁ!」


 そう叫んでいるのは1人の少年だった。

 少年の後ろには幼い男の子もいる。

 辺りにはなにもない真っ暗な暗闇。

 少年がパンチを繰り出すと、突然爆発が起き、大きな爆音とともに真っ暗な空間が火に包まれた。


「うわっ!」


 青年は爆発に驚き目を覚ました。

 しかしそこは真っ暗な暗闇ではなく、明るくて狭い一室だ。

 どうやら青年は夢を見ていたようだ。


「はぁ…またこの夢か…。」

零音(れおーん)!!遅刻するよー!」


 下の階から女性の声が聞こえてくる。

 青年は布団の近くに置いてある時計で時刻を確認した。

 時計の針は8時7分を指していた。


「やば!」


 青年は咄嗟に起き上がり、身支度を始める。


 青年の名は伊武 零音(いぶ れおん)。現在高校2年生だ。


 寝巻から制服に着替えた零音(れおん)は部屋を出て、階段を下りた。


「おはよ。ほら、早く歯磨いておいで!」

「うん!」


 女性は落ち着いて零音(れおん)にそう言った。


 女性の名は伊武 咲来(いぶ さくら)零音(れおん)の母親だ。


 歯を磨き終わった零音(れおん)はリビングのテーブルに置いてある弁当をバッグに入れて玄関に向かい、すぐに家を出て走り出した。


「いってきます!」

「あ、零音(れおん)!お守り忘れてる!」


 咲来(さくら)はお守りを片手に玄関から、家を出て間もない零音(れおん)に呼びかけた。


「そうだそうだ!あぶね~。」


 零音(れおん)咲来(さくら)から、〈いつも見てるよ〉と刺繍で書かれている少し古びた手作りのお守りを受け取り、再び走り出した。


「いってきまーす!」

「いってらっしゃーい!」


「あら、零音(れおん)くん!いってらっしゃい!」


 家を出てすぐ、話しかけてきたのは、ホウキで家の前を掃除している向かいの家のおばさん。佐藤 悦子(さとう えつこ)


「おはよう!おばさん!いってきます!」


 零音(れおん)は走りながら佐藤(さとう)に軽く挨拶し、そのまま走り抜けた。


 零音(れおん)を見送った咲来(さくら)はリビングに戻り、さっき食べ終わった朝ごはんの食器を洗い始めた。

 そして、洗い物をしながらテレビで流れている報道番組の音に耳を傾けた。


〈今日は2034年6月19日。ファルブロスによる星戸府(せいとふ)の消滅から今日で12年が経過しました。〉


「あれから12年かぁ…。」


 その時、スマホから通知音がなり、それに気づいた咲来(さくら)は水を止め、手を拭き、ズボンのポケットからスマホを取り出した。

 スマホを起動すると、1件のメールが届いていた。

 送信者名は"Mr.INDIGO(ミスターインディゴ)"。内容は


<時は来た。>


 その一言のみだった。

 それを見た咲来(さくら)は何かを察し、自分の部屋の方を見た。

 その目は、部屋の中に置いてあるアタッシュケースを見つめていた。


――――――――――――――――――――――――


 学校に向かって走る零音(れおん)

 途中、一人の同級生と鉢合わせた。


「よっ!零音(れおん)!お前も遅刻か!」

「おはよ明日流(あする)!」


 彼は(たちばな) 明日流(あする)零音(れおん)とは小学校からの付き合いで、まさに親友と呼べる存在である。


「ねえ明日流(あする)!昨日のストロングマンブラザーズ見た??」


 ストロングマンブラザーズとは、零音(れおん)明日流(あする)が昔からハマっている特撮ヒーロー番組だ。


「もちろんだ!驚きの展開だったよな!」

「ね!いやぁ~まさかあそこでパッションマスクと対立するとはなぁ~。」


 気づいたら二人は立ち止まって会話していた。

 そんな二人の話を遮るかのように学校からチャイムが鳴り響いた。


「「あ。」」


――――――――――――――――――――――――


 虹林(にじばやし)南高校2年1組。その教室ではすでにホームルームが始まっていた。


「起立、気をつけ、おはようございます。」

「「おはようございます。」」

「はいおはようございまーす。あれ?伊武(いぶ)(たちばな)がまだ来てないみたいだけど…また遅刻かな?」

「「おはようございまあああぁぁぁす!!」」


 零音(れおん)明日流(あする)は勢いよく教室に入ってきた。


「はい、二人遅刻ね。あとで反省文書いてね~。」

「「え~!」」


 白衣を着て、黒い手袋をつけている担任の教師、久夛良木(くたらぎ) (のぼる)は微笑みながら二人にそう告げた。


 二人はトボトボ歩き、自分の席に向かった。


「おはようございます。また遅刻ですか。」


 そう話しかけたのは零音(れおん)の隣の席に座っている、風紀委員長の腕章を左腕につけ、メガネをかけたおかっぱヘアの女子。深夜 紫絵理(みよ しえり)


「おはよう委員長。今日また居残りだよ~。はぁ…。」


 零音(れおん)はため息をつきながら席に座った。


 そしてホームルームが終わり、休み時間になった。


「おはようございます。」

「よう遅刻マンブラザーズ!どうせ今日もなんとかマンブラザーズとかの話でもして遅刻したんだろ?ほんといつまでおこちゃまの番組みてんだよ。」

「おこちゃまはオリペン一人でじゅうぶーん!」

「いや俺はおこちゃまじゃないだろ!!」


 そう話しかけてきた四人は明日流(あする)と同じく、零音(れおん)とは10年来の友人だ。


 一条院(いちじょういん) 大護(だいご)。非常におとなしく、真面目な男子。よくイヤホンをつけて音楽を聴いている。

 小桃(こもも) かおる。髪を後ろで結んだ男勝りな女子。基本怖い顔をしている。口調も荒っぽい。

 笠井(かさい) 杏樹(あんじゅ)。リボンで髪を横で結んだ女子。なにを考えているのかよくわからない不思議ちゃん。かおるからは杏樹(あんじゅ)っちと呼ばれている。よく手でキツネの影絵のポーズをするが、意味は不明。

 織辺 斗馬(おりべ とうま)。目が細いのが特徴な男子。いじられ役で、ツッコミが得意。杏樹(あんじゅ)からはオリペンと呼ばれている。


「うるせぇな!いいだろ別に!!」


 みんなにいじられた明日流(あする)は顔を赤らめ、そっぽを向いた。


「ヒーローが好きなのに年齢は関係ないよ!僕達は永遠にヒーローを愛し続ける!!行くぞ明日流(あする)!」


 そういって零音(れおん)はリュックからおもちゃの変身ベルトと剣を取り出し、明日流(あする)とともにベルトを腰に巻き、決めポーズを取った。


「人々を脅かす悪の手先よ!刮目せよ!」

「覚悟しろ!」

「正義のヒーロー!ストロングマン!」

「情熱の相棒!パッションマスク!」

「「ここに、参!上!」」


 零音(れおん)明日流(あする)は交互に決め台詞を言い放った。

 四人は二人を見て呆れた表情をした。


「はい、没収します。学校におもちゃを持ち込まないでください。」


 紫絵理(しえり)は後ろから二人が持っているおもちゃの武器を取り上げた。


「委員長ーー!!返してーー!!」


 そんな慌ただしい零音(れおん)たちの様子を遠くから見て、廊下に出た生徒が一人いた。


伊武 零音(いぶ れおん)…!なんであんなふざけたやつに友達がいるんだよ…。」


 生徒はボソッと呟き、トイレに向かった。


「嫉妬…それはこの世で最も難しい感情。そして最も強い感情でもある。」


 人気のない廊下で生徒の後ろに突然、全身に白いスーツを纏い、腰までの長さの白髪で、白い仮面で目を隠した男が現れた。


「うわっなんだ!お前!!」

「私はあなたを正しい方向へ導く、希望の光です。自分の感情に正直になってみませんか?」


 仮面の男は右手に持っている光る赤い球体を、左手に持っている白いチョークと融合させた。

 すると光る球体は白色に光りだし、男はそれを生徒の体に埋め込んだ。


「うぐっ!!うああああアアアアアアァァァ…!!!」

 

――――――――――――――――――――――――


 夕方になり、零音(れおん)たちは帰り道を歩いていた。


「はぁ…反省文は書かされるし、おもちゃは没収されるし、散々な1日だったなぁ…。」

「いや、どっちも自業自得だろ。」


 落ち込む零音(れおん)斗馬(とうま)はツッコんだ。


「来週は遅刻しないでくださいね。」

「うん、そうするよ。じゃあね、また来週!」


 大護(だいご)にそう言われた零音(れおん)はみんなと別れ、ここからは一人で帰り道を歩く。


 住宅街を一人で歩いていると突然零音(れおん)の左側にある石の壁が大きな音を立てながら崩れ、壁の中から大柄な怪物が現れた。


「ウオオオオアアアアアッ!!!」

「え…」


 零音(れおん)は怪物に殴られ、吹き飛んだ。


「痛ってぇ…なんだ!?怪物!??」


 大柄な怪物は背中や腕から白いチョークが大量に生えており、まるで巨大なハリネズミが人型になったかのような姿をしている。

 困惑する零音(れおん)に考える隙を与えず、怪物はまた殴り掛かってきた。


「うわああああぁぁ!!」


 零音(れおん)はなんとか攻撃を避け、走って逃げた。

 すると怪物は、大量のチョークを体から放出し、弾丸のように飛ばしてきた。


「うっ…!!」


 零音(れおん)は避けきれず、チョークが背中に直撃し、倒れこんだ。

 ゆっくり立ち上がろうとする零音(れおん)に怪物は迫ってくる。


伊武 零音(いぶ れおん)…殺す…」

「喋った…?」


 怪物は低い声で言葉を放ち、右手を振り上げながらこちらに走ってくる。

 零音(れおん)は死を覚悟し、目を瞑った。


(やばい…死ぬ…殺される…ここで終わるのか…?僕の人生は…。)


 しかし、零音(れおん)は再び目を開けた。


「いや、まだだ!こんなところで死んでたまるか!みんなともっと遊びたいし、母さんのカレー食べたいし、ストロングマンブラザーズの続きも見たい!」


 零音(れおん)は立ち上がり、怪物を睨んだ。


「僕は…未来を諦めない!!」


 そう叫んだその瞬間。零音(れおん)の前方の地面から氷のように透明で巨大なトゲが生え、怪物に激突し、粉々に砕けた。


「え…なんだこれ!?」


 突然生えてきたトゲに零音(れおん)は困惑する。


零音(れおん)!!」


 遠くから咲来(さくら)の声が聞こえてきた。


「母ちゃん!?なんでここに!?」


 アタッシュケースを持った咲来(さくら)零音(れおん)のもとに走ってくる。

 しかし、怪物は再び体から大量のチョークを放出した。


「母ちゃん!危ない!」

「えっ…」


 零音(れおん)は急いで咲来(さくら)を守ろうと、駆け寄った。

 その瞬間、辺り一面が眩い光に包まれ、零音(れおん)は思わず目を瞑った。


 目を開けると、咲来(さくら)は無傷だった。そしてなぜか怪物は倒れて苦しんでいた。


(なんだ?なにが起こった?なんで母ちゃんじゃなくてあいつが倒れてるんだ?)


 零音(れおん)は目の前の状況に疑問を抱くが、咲来(さくら)は怪物が苦しんでいる隙に零音(れおん)に近づき、アタッシュケースを開いた。


零音(れおん)!これを使って変身して!」


 アタッシュケースの中には、複雑な構造をしている大きな機械のようなものと、真っ白で小さなUSBメモリのようなものが入っている。それはまるでおもちゃの変身ベルトのセットのようだった。


「変身って…今おもちゃで遊んでる場合じゃないよ!」

「これはおもちゃじゃない!正真正銘、本物の変身ベルトよ!」

「本物の…変身ベルト…!?」


 零音(れおん)はそれを手に取った。


「今のあなたなら変身できる!それを腰に当てて!早く!」


 零音(れおん)は大きな機械のほうを腰に当てた。

 すると機械から帯が現れ、自動的に腰に巻かれ、無機質な声が機械から流れた。


《ユーティライザー》


「うおっ!」

「次はこれのボタンを押して!」


 咲来(さくら)は小さなUSBメモリのようなものを渡してきた。

 零音(れおん)はそれの天面にあるボタンを押した。

 するとその瞬間、真っ白な前面にキャラクターの横顔の模様と〈JUSTICEジャスティス CREATEクリエイト〉と書かれた文字が浮かび上がり、それからも無機質な声が流れた。


《ジャスティスクリエイト》


「起動した!それをベルトのスロットにセットして!」

「スロット…ここかな?」


 零音(れおん)はそれをベルトの斜め上を向いているレバーに空いている穴に装填した。


《ローディング》


 するとベルトから機械的な待機音が流れ始め、零音(れおん)の周りを囲むように空中に青いエフェクトが表示された。


「あとはそのレバーを下に倒して!変身よ!」

「よ、よし、変身!」


 零音(れおん)はレバーを握り、思いっきり下に倒した。


《ユーティライズ》


 零音(れおん)の体に鎧が、足元から徐々に生成されていった。


《リバイトレオン クリエイト アクティブ》


 零音(れおん)の姿は白い鎧を各所に纏った姿に変わり、その姿はUSBメモリのようなものに描かれていた横顔のキャラクターの姿だった。


「おおおおお!!僕、本当に変身した!!!」

零音れおん!前見て!」

「えっ、わっ!!」


 すっかり自分の姿に夢中になっていたレオンは怪物のパンチをもろに食らった。


「イテテ…、でもさっきより全然痛くない…!よーし…はぁっ!」


 レオンは怪物の胸にパンチを当てた。

 怪物は吹き飛び、倒れた。


「本当に強くなってる…!これなら…戦える!」


 レオンは起き上がった怪物に向かって走りだした。


「はあああああああっはあっ!」


 そして怪物に蹴りやパンチを繰り出した。

 怪物は倒れたが、倒れたまま体からチョークを放出した。


「うわっ!」


 レオンはチョークを食らい、後退した。


「これじゃ近づけないな…そうだ!」


 レオンはさっき透明なトゲを生み出したかのように今度は透明な壁を目の前に生成した。


「やっぱりできた!これで近づける!」


 レオンは壁でチョークを防ぎながら怪物に近づき、倒れている怪物を思いっきり蹴り上げた。

 怪物は上に吹き飛び、そのまま地面にたたきつけられた。


零音れおん!ベルトのレバーを元に戻してもう一度倒すと、力を溜めて強力な攻撃ができるわよ!」

「強力な…?必殺技ってことか!よし!」


 レオンは横になっているベルトのレバーを斜め上に上げた。


《リローディング》


 するとベルトから、パワーをチャージするような機械的な待機音が鳴り始め、レオンの右足にエネルギーが溜まっていく。


「必殺技はやっぱりキックでしょ!」


 そしてもう一度レバーを下に倒した。


《クリエイトフィニッシュ》


「ふっ!」


 レオンは空中に飛び上がった。


「たあああああああああああっ!!!!」


 そして空中で体制を変え、怪物に向かってキックを繰り出した。

 怪物の胸にキックは直撃し、怪物は押し出された。


「ウオオオオオオオオォォォォォ…!!!」


 怪物は断末魔を上げ、爆発した。

 爆煙が晴れると、怪物は零音れおんに嫉妬していたあの生徒の姿に変化した。


「え…!渡辺(わたなべ)くん…?なんで?」

「大丈夫、あの子は生きてるよ。」

「母ちゃん!一体どうなってるの!?あの怪物はなに!?」

「そうね…あの怪物は――」

「ようやく見つけたぞ!氷のマテリアス!!」


 二人が話していると、後ろから男の声が聞こえた。

 二人は振り返ると、そこには黒い服を着て、赤い竹刀袋を持った男がいた。


「マテ…リアス…?」


 レオンが初めて聞く言葉に困惑していると、男は竹刀袋から刀を取り出した。

 そしてポケットから零音れおんが変身に使用したのと同じ、USBメモリのようなものを取り出し、天面のボタンを押した。


《ブレイブファイヤー》


 それを刀の柄の先端に空いている穴に装填する。


『ローディング!』


 すると、和風な待機音が鳴り始めた。

 刀から鳴る声はレオンのベルトとは違い、無機質ではなく、気迫のある声だ。

 そして男は刀を鞘から抜刀した。


『イグニッションライズ!』


 すると刀身から火の狼が飛び出し、レオンたちの前を通過し、男のもとに戻っていく。

 男は思いっきり刀を振り下ろし、火の狼を斬った。

 真っ二つになった火の狼は狼の形を崩し、火となって刀に巻き付いた。

 そして火は男の体に燃え移り、その火は赤い鎧となって、男の姿は変化した。


『リバイトウルス ファイヤー アクティブ!』


 そしてその男、"リバイトウルス"はレオンに襲い掛かった。


「え?ちょ、ちょっと待って!!うわぁっ!」


 レオンはウルスに胸を斬られ、火花が散った。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます!!

 もしおもしろいと思っていただけたら、評価、ブックマーク登録よろしくお願いします!

 活動報告では、キャラクター紹介、用語解説を行っていますので、ぜひそちらもご覧ください!!

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― 新着の感想 ―
[一言] これぞヒーロー!と言った感じですね!そしてお母さんは何者なのでしょう…!すごく気になります。
2022/08/11 20:07 退会済み
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