聖騎士団会議(アースside)
日も落ちた、暗い会議室に魔導ランプの明かりを灯す。最新鋭のランプの明かりは、煌々と室内を照らした。
次々と集まるのは、毎日顔を合わせているようなメンバーだ。だが、いつもの格式張った表向きの顔を脱ぎ捨て、誰もが気楽な雰囲気だ。
1名をのぞいて……。
「ジルベール、そんなにかしこまる必要はない」
「はっ」
うん。なぜこんなに緊張しているんだ?
最近は、品行方正で、婦女子に囲まれてしまう以外に欠陥が見つからないジルベール。
しかし、素の彼は、もっと自由な人間であることを、この場にいるメンバーは、全員知っているはずだ。
「……ジルベール?」
「あの、この会議は、王国の秘匿情報がバンバン行き交うという噂の第一部隊会議……ですよね?」
俺は、集まった騎士達をぐるりと見回す。
熊のような大柄で茶色の髪と瞳の聖騎士団長ディラン・ボルドーは、昨夜はひと晩中、王都に襲来した大蛇の魔獣と死闘を繰り広げていたらしい、髪の毛をぐしゃりとかき分け、どこか眠そうだ。
「そういえば、ジル君以外は、メンバー変わらないですよね?」
「おい! なんだ、ジル君って!」
「え? 俺のことも気軽にロイ君と」
「呼ぶか!」
うん、その方がジルベールらしくて良い。
相変わらず、重い空気を壊すのが得意な淡い茶色の髪と瞳。子リスのようなムードメーカー、ロイは、ニコニコ微笑んでいる。
確かに、ジルベール以外は、第一部隊の騎士達そのままだ。
淡い紫の髪と瞳のリザードがつぶやく。
「聖騎士のはずなのに、俺だけ毎回、聖女様の護衛任務予定の日に、討伐が入るのはなぜなんでしょうね?」
日頃の行いだろう。
ルーシアとの、距離が近いとか、なんとなく毎回口説いているようだからという理由では、決してない。
「よし。聖騎士団会議を開催する」
この会議で語られるのは、確かに王国第一級の秘匿事項だ。
検討事項は、主に聖女であるルーシアが引き起こした、大事件の解決だ。
「アース様。お姿が……」
「ああ。窓の外を見てくれるか? レイモンド」
気配がないままだったが、会議には参加していたらしいレイモンドの言葉で、自分の姿が人間から狼が混ざったような姿に変わったことに気がつく。
ずいぶん、この姿にも慣れてしまったものだ。
「銀の星が、流星群のように降り注いでおります」
「そうか……」
聖獣様と聖女。
その力を使い果たせば、俺の姿は、人から狼のようなそれになる。
バロメーターなのだろうか、この姿は。
「……とりあえず、原因を突き止めてきてもらえるか? レイモンド」
「……御意」
気を取り直して、会議を再開することにした。
本日の議題は、また一つ追加になるだろう。
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