聖女と聖騎士様 4
アース様との番外編です。
いつもならとっくに、騒がしかったり、遠慮がちだったりと個性豊かなノックの音が聞こえているはずなのに。
不審に思った私は、扉を開けてみたけれど、やっぱり誰もいない。
「今日の護衛は、なしなのかしら?」
「いや、今日の護衛は、俺だ。ルーシア」
朝早くに公務のため出かけていたはずの声が、聞こえてきた。
驚いて振り返ると、なぜか窓からアース様が入ってくるところだった。
「アース様」
なぜかアース様は、聖騎士の白い騎士服をお召しになっていて、しかももふもふの姿だった。
「何かのご褒美ですか……」
白銀の毛並みと、騎士服があまりにも似合っていたため、時を止めて見惚れてしまう。
それにしても、出かける前には、人間のお姿だったのに、どうしてもふもふに。
「……なぜかわからないが、聖獣様がお力を使い果たしたようで、この姿になってしまったため、戻ってきたんだ」
「え?」
「不思議だな。まだ、冬だというのに、花が満開になり、空からは銀の星のような光が降り注いでいた」
「…………」
思い当たる節がある。
私の影に尻尾を丸めて隠れているのは、子犬みたいな姿になった聖獣様だ。
狼姿の聖獣様と戯れていたところ、興奮しすぎた聖獣様が、聖なる力を放出してしまったのだ。
その結果が、目の前のもふもふ姿のアース様と、私の後ろの子犬みたいな聖獣様というわけだ。
「あの、お仕事……。それにそのお姿」
「代わりに、レイモンドとロイが行ってくれたので問題ない。二人には、働き過ぎだからちょうど良いと言われたよ。この服か? ルーシアが、着てほしいと言っていたから」
やっぱりご褒美だった!
確かに、結婚式を挙げたにも関わらず、アース様の周囲は、まだまだ解決しなければならないことで溢れていて、ほとんど私のそばにいなかった。
「もしかすると、ルーシアとふれあう時間が少なすぎたせいで、この姿になったのかもしれないしな」
「あ、えっと……。聖獣様と遊びすぎてですね」
「つれないな。そばにいてくれないのか?」
「…………そばにいます!」
こんな時に素直にならないなんて、私らしくない。私は、聖獣様に密かに感謝しながら、アース様のもふもふの腕に飛び込んだのだった。
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