聖女と聖騎士様 2
本編で少ししか出なかったロイ様編です(^-^*)
目が覚めたルーシアに、もふもふの感触が寄り添っていた。
「アース様……」
久しぶりのその感触に、顔を埋める。
ふんわりした感触と、ルーシアとおそろいの石けんの香り。
目を開けると、白銀の毛並みが目に入る。
「ワフ?」
「……聖獣様?」
なぜか、一緒にいたのは聖獣様だった。
そう、寝起きで忘れていたけれど、アース様は現在王国全土の視察に回っているのだった。
ちなみに、私は今、神殿に寝泊まりしている。
ここが一番安全なのだと、聖騎士様一同が満場一致だったのだ。
控えめなノックの音。
扉を叩く音って、意外にも個性的なのだわ。
妙に感心しながら扉を開けば、案の定、本日の私の護衛を務めてくださるのは、淡い茶色の髪と同じ色のつぶらな瞳。聖騎士団のムードメーカー、ロイ様だった。
「おはようございます、聖女様」
「おはようございます。ロイ様。本日はよろしくお願いいたします」
「はい。どうかお手柔らかに」
私が、東の離宮に閉じ込められ、しかもレイモンド様の前から姿を消してしまって以来、これはどうなのかしら、と思うほどに皆様が過保護だ。
特に、聖獣様と一緒にいるときは、転移魔法が発動する可能性があると、厳戒態勢が敷かれているところがある。
確かに、アース様にもしものことがあれば、いつでも駆けつけたいとは思っているけれど……。
「聖女様、本日のご予定……。うわ、働き過ぎではないですか?」
「……? そうかしら」
今日の予定は、朝のお祈り。そして、王妃教育。それから、貴族のご婦人達と昼食をともにして、書類の決裁。その後は、午後のお祈りをして、聖騎士団の皆様のためのお洗濯。そして、午後のお茶会に参加した後に、お洗濯。それから……。
「えっと、僭越ではありますが、洗濯は他のものにまかせてはいかがでしょうか?」
「――――だめです」
「え?」
「だめです。唯一の趣味の時間です」
「そ、そうですか……」
泡立つ石けんの香りも、洗濯物を広げて干す瞬間も、取り入れてたたむのも大好きで心安らぐ瞬間だ。
聖獣様と一緒にいると、時々洗濯物で遊んでしまって汚されてしまうことがあるけれど……。
「さ、行きましょうか?」
「かしこまりました」
ロイ様は、大きな薄茶色の瞳を細めて笑った。
ロイ様が護衛の日は、一日中笑いが絶えない。
そして、意外にもハッキリとものを言うロイ様に、私もついつい本音を伝えてしまう。
さあ、今日も一日頑張りましょう。
私の一日は、まだ始まったばかりだ。