表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/56

聖女は囚われていることに気がつかない 2



 意外にも快適なベッドの中、横になった私は、なかなか眠ることができずにゴロゴロと寝返りを打っていた。

 もしかすると、もふもふの感触がないと寝られない体になってしまったのかもしれない。


 レイモンド様は、部屋から出て、扉の横に体を預けて立ったまま眠っているらしい。

 この部屋で休んでほしいと頼んだけれど「――――そんなことしたら、殺されます」と、お断りされてしまった。


 ――――一体誰に? 謎が謎を呼ぶ。


「ふう……」


 ここは、東の離宮だ。

 かつて、聖女と結婚しながらも、ほかの令嬢と恋に落ちてしまった王族が、側室を迎え入れた場所。

 そこに、私をわざわざ連れてきた意図が不明だ。


 ――――偽聖女を、今になって連れてきて、生き残っていたと断罪するわけでもなく、会おうとする訳でもない。意図が分からないわ……?


 そして、それよりも何よりも、アース様が心配だ。

 結局、この時間になっても、私とアース様は会えない。

 つまりアース様は、すでにもふもふした、半狼の姿になってしまっている可能性が高いのだ。


「どうしよう……」


 本当は、レイモンド様は、アース様を探しに行くべきなのだ。

 それなのに、私がこんな場所に連れてこられたせいで、そして偽聖女である私をかくまったせいで、この場所から動くことができない。


「――――私」


 私にできること。いつもそれを探して、生きてきた。

 だから、何もできないこの状況が、私にはとてもつらく感じられる。


 役に立たなければ……。

 そう、誰かの役に立てなければ、私は。


『――――いや。これは命令ではない。ただのお願いだ』


 自分のふがいなさに、落ち込んで、気分が底の底に沈みかけた私の脳裏に、ふいにアース様の声が響く。


「…………アース様」


 アース様は、私に役に立てとは言わなかった。

 お願いだ、とそう言っただけで……。


 そうですよね。役に立つ、立てないよりも。


 くっと、顔を上げる。

 運の良いことに、ここは王宮だ。

 アース様は、両陛下と会った。そこまでは間違いないもの。


 抜け出そうとして、そっとドアを開けると、気配を消していないレイモンド様が笑顔で立っていた。


 明らかに、ここから出してくれることはないようだ。

 早々にこの包囲網を突破することを諦めた私は、音もなく閉められた扉に背を向けて、すごすごとふかふかのベッドに、戻ったのだった。

聖女は囚われてしまったようです。主に味方に。


最後まで、お付き合いいただきありがとうございます。下の☆を押しての評価やブクマいただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かわいいものが、書きたくなって、新作投稿しました。鬼騎士団長と乙女系カフェのちょっと訳あり平凡店員のファンタジーラブコメです。
☆新作☆ 鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
― 新着の感想 ―
[良い点] レイモンド様が笑顔で通せんぼ!爽やかです?(^◇^;) ジルベールという心強い味方もできてよかった! 早くアース様と会ってもふもふできるといいですね*\(^o^)/*
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ