悪女になるには 1
それにしても…………。
第三部隊の騎士様達に取り囲まれつつ、私は思案していた。
誰一人、私に乱暴なことをしようとはせず、少しだけ離れて取り囲む。
それにしても、どうしたら悪女になれるのかしら?
偽聖女を語ったのだから、すでに私の存在は王都で悪女と言われているのに違いないわ?
でも、なんとかして、悪女を演じ続けて、第一部隊の騎士様と、アース様は、偽物聖女にだまされたという設定を作り上げなくては……。
「なあ…………。本当にこの少女が、元聖女ルーレティシア・マルベルク伯爵令嬢なのか? 下働きの格好をしているぞ」
「ああ、だが先ほどの……」
「たしかに、あの威厳と清廉な美しさ。……本当に偽物なのか? そういえば彼女が来てから王都周囲の魔獣が」
「……っ、余計なことを言うな!」
思わず漏れてしまった騎士様の困惑はもっともだ。
後半は、よく聞こえなかったけれど……。
そもそも、辺境の神殿で下働きをしていたこともあって、私のお肌は健康的に焼けている。
深窓の令嬢のように青白いほどに透き通った肌ではない。
信じられないのも、当然よね……。
そういえば、聖女の役割を担っていた間、ほとんど中央神殿から出ることはなかったけれど……。
周囲を見渡す。たくさんの騎士様達に囲まれて。
そうそう。神殿の神官達に、こんな風に囲まれながら外に出たものだわ。
中央神殿の外に出る理由は、高位貴族に治癒魔法を掛けるとか、魔獣が入り込まないために結界を張り直すとかそういうものだった。
「――――皆様も、大変ですよね」
えっ! という驚きの声が周囲から上がる。
なぜ驚くのか分からないけれど、悪女と言われている偽聖女が王都に潜んでいたなんて、どう考えても重大事件だもの。
さあ、頑張って、悪女を演出して、第一部隊の皆様を巻き込まないためにがんばるわ!
たとえ、その結果として、もっとひどい場所に送られたり、場合によっては命を失うことになるとしても。
それでも、私はアース様と皆様のお力になりたい。
せめて、足を引っ張りたくはないわ!
耳元で、ため息が聞こえる。
いつも以上に気配を消したままのレイモンド様は、私の真横に控えている。
第三部隊の騎士様。ごめんなさい、皆様が囲んでいるのは偽聖女だけではなく、第一部隊の副隊長様もなのです……。
なんとか、アース様の無実を証明するわ!
そのためには……。ん? もしかすると、偽聖女であることをもっと表に出せばいいのかしら?
そんな、ずれた思考に気がつかないまま、私は騎士様達に護衛されるように王宮まで向かうのだった。
悪女ムーブ(誤解)(^^;)
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