偽聖女の祝福 1
「あの……。それは」
パターンとして膝枕は、基本よね!
そう思った私は、早速ベッドの上で、ポンポンと太ももを叩いた。
明らかに困惑しているアース様に気がつかないままに、私は大真面目に、もう一度、ポンッと太ももを叩いた。
「それならば……。失礼して」
怖ず怖ずと、ベッドに膝から上がり、私の膝に頭を乗せたアース様。
こうすると、モフモフの狼顔が間近に見える。
これはもう、撫でずにいられるはずがない。
……ナデナデ。
「頭の毛も、ふわふわですね」
「……そうか」
撫でているうちに、アース様の頭がだんだん重くなっていく。遠慮して、首で頭を支えるのは大変ですものね?
……静かな室内には、ランプのオレンジ色の光。
もう、日の光は落ちて暗くなりかけた室内。
最近、眠れていなかったのかもしれない。レイモンド様も忙しすぎて睡眠時間が確保できないと、壁際で立ったまま、うたた寝していたもの。
けれど、時間がたつにつれ、使命感が羞恥心に塗りつぶされていく。
あれ? 私は、なんてことをしているのかしら。
すやすやと眠る、アース様は完全に眠ってしまったみたい。
あら、どう考えても、女性として意識はされていないわよね?
疲れているからといって、こんな風に眠ってしまえるはずないもの。
でも、信頼はされているみたい……。
その事実が、うれしくもあり悲しくもあり。
…………悲しい? どうして。
柔らかい光と、膝元の柔らかくて温かい感触。
幸せって、こんな時間のことを言うのかもしれない。
最近は、ソファーではなく簡易ベッドが用意された。
私が眠っている間も、手をつないでいるだけで、アース様が眠っている姿を見たことがなかった。
いつも、アース様は左手を私とつなぎながらも、何かを読んだりして、夜遅くまで起きているし、起きるのも、ものすごく早い。
「ゆっくり休んでくださいね?」
今夜はこのまま起きていよう。そう決意する。
けれど、途中まで、覚えていたにも関わらず、気がつけば私は、なぜがアース様に腕枕されていた。
「あっ、あわわ?!」
あまりにアース様の狼顔が近くて、おかしな声が出てしまう。
いつもみたいに、私より早く起きたアース様は、なぜか私の顔を眺めていたらしい。
……というより、動けなかったのよね?
パターン変更の第一夜はこうして幕を閉じたのだった。
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