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【電子書籍化】偽物聖女だと追い出されましたが、聖獣様がモフモフにした騎士様に溺愛されてます  作者: 氷雨そら
本編

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騎士団第一部隊の下働き令嬢 4 



 大量の洗濯物。

 けれど、日常生活魔法を使いこなした私にかかれば、あっという間に洗い上がってしまう。


 干すのは魔法を使えないから、一つ一つ丁寧にしわを伸ばして干していく。

 ……あれ? これはもしや、アース様の騎士服ではないかしら?


 機能的なデザインの騎士服に、白銀の毛がたくさんついている。

 これは、後でブラシをしっかり掛けて取り除く必要がありそうだわ。


 そのうちの一本を、なんとなくつかんで光にかざしてみる。

 まるで、溶けかけた雪が輝いているようにキラキラと光っている白銀の毛。


 不思議ね? その姿は、人間に変わってしまうのに、もふもふした毛は、残っているのだわ。

 一体どういう仕組みになっているのかと、不思議に思う私。


「――――ああ、でも、人様の毛を持って、後生大事に眺めているなんて、本人に知られたら……」


 それはいけない。とっておこうかと思ってしまったけれど、そんなことアース様に知られてしまったら、生きていられない……。


 そっと、白銀の毛を風に乗せる。キラキラ輝きながら、流れて、なぜか消えてしまった。


「…………あら? 騎士服についていた毛も、消えているわ?」


 それでは、先ほど見たのは幻だったのだろうか。

 私は、気を取り直すと、洗濯物を再び干し始める。


「それにしても、ルーシアちゃんは、働き者だねぇ」


 あめ玉を差し出しながら、下働きのカリナさんが話しかけてくる。

 いい人ばかりで、素敵な職場で働けることがとてもうれしい。

 王都というと、神殿の中で祈っているか、実家でつまはじきにされていた記憶しかないので、少し構えていたのだけれど、辺境に負けないくらいこの場所は過ごしやすそうだわ?


 そのとき、私と同じくらいの年齢の若い騎士様三人が、洗濯場に近寄ってくるのが見えた。

 何か、洗濯してほしいものでもあるのかしら? そんなことを思って眺めていたら、なぜか私の方に近づいてくる。


「――――洗濯場に若い娘が入ってきたと聞いたのだが、本当だったな」


 口を開いたのは、金髪碧眼の若い騎士様だ。

 少し尊大なしゃべり方。おそらく貴族なのだろう。

 残り二人は、後ろで控えている。


「あの……」


「なんだ、自己紹介もできないのか?」


「あっ。ルーシアと申します」


 思わず淑女の礼をしそうになったけれど、メアリーの言葉を思い出して慌てて、ぺこりとお辞儀をする。


「ふん。挨拶も庶民的だな。……まあ、当たり前か」


 なぜか、手首を掴まれて引っ張られる。

 えっと、何か用事があるのでしょうか?


「何か、洗濯する物があるのですか?」


「――――本気か、この状況で」


 なぜか、カリナさんがオロオロしている。

 仕事の邪魔をしてしまっているのかしら……。


 そのとき、音もなく近づいてきたレイモンド様が掴まれた私の手を、若い騎士様から引き離した。

 私は気がついていたけれど、相変わらず気配がないから、若い騎士様は相当驚いたようだ。


「――――第三部隊の者か。騎士団の品位を乱すな」


「レイモンド殿……。どうしてこちらに」


「通りがかってな……」


 たぶん、うそだ。レイモンド様は、私が問題を起こしていないか心配して見に来てくださったに違いない。それにしても、面倒見のいい人だわ。


 若い騎士様達は、足早に去って行ってしまった。

 洗濯物……頼みたかったのではないのかしら?


「あの……」


「――――先ほどの礼は、よかったと思いますが……」


「そ、そうですか!」


「もう少し危機感を」


「危機感?」


「…………」


「…………」


 レイモンド様と私の間に沈黙が流れる。

 危機感を持つ? たしかに、騎士団の中で働く人間としての自覚が足りなかったのかもしれないわ?


「えっと、危機感を持って身を粉にして働きます!」


「確実にわかっていない……」


 それだけ言うと、レイモンド様は再び気配を消して去って行ってしまった。

 ご迷惑を掛けないようにしよう。そう思う私。


 けれど、この日から、連日あの若い騎士様が、洗濯場を訪れるようになった。

 それだけでなく、なんだかんだと汚れ物を持って若い騎士様達が、洗濯場に来るようになった。

 新人騎士様達は、洗濯物を押しつけられているのかしら?


 私は、首をかしげるのだった。

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かわいいものが、書きたくなって、新作投稿しました。鬼騎士団長と乙女系カフェのちょっと訳あり平凡店員のファンタジーラブコメです。
☆新作☆ 鬼騎士団長様がキュートな乙女系カフェに毎朝コーヒーを飲みに来ます。……平凡な私を溺愛しているからって、本気ですか?
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