第一部隊会議(アースside)1
「待たせたな」
会議室に入室したとき、少数精鋭でありながら、一人一人が実力は部隊長クラスの人間ばかりで構成される第一部隊のメンバーはすでに全員が……。
……ん? 数人足りないな?
やはり、常時何かの案件を抱えている第一部隊が、戦時以外で全員集合するのは難しいようだ。
それに関しては、いつものことなので気にしないことにする。
「メンバー全員集合なんて、災害級の魔獣でも出ましたか?」
全員無事に帰還したか……。
誰も欠けることなく激戦を終えた。
まるで、奇跡のようなものだ。
「そういえば、団長。お姿、元に戻ってよかったですね?」
矢継ぎ早に質問してくるのも、困ったものだ。
だが、質問を重ねてきた騎士、ロイが第一部隊のムードメーカーであることは誰にも否定できないだろう。
「ロイ、残念ながら、呪いは完全には解けていない」
「そうですか」
「それだけか?」
「特に。団長が、俺たちの敬愛する団長だってことは、変わりないですからね」
そういうところだろう。
貴族出身のロイが、堅物や変わり者揃いの訳あり集団の中で、うまくやっていけるのは……。
「さて、議題は二つだ。どちらも国家機密レベルだが、どれから話そうか……」
そのことを告げた途端に、視線が俺に集中する。
それはそうだろう、国家機密レベルの案件など、いくら我が騎士団が誇る第一部隊だとしても、そんなに頻繁に起こってたまるか。
だが、残念ながら起こっているのが事実だ。
「まあ、とりあえず俺の姿からいくか。まだましだからな」
「王国の防衛線そのものと言われるアース団長の姿が変わったことより大きい問題か、恐ろしいな」
相変わらずその体躯のせいで、森の中であったら熊と間違えそうなディランが、つぶやく。
「……おそらく、この姿は聖獣様が関係している」
辺境を出立する直前に、神殿長ベレーザ殿から告げられた言葉。この姿は、呪いというよりは聖獣様の神聖な力を感じると……。
「王族の血を引いた人間に、聖獣様の力ですか? おだやかじゃないですね。アースクリス・サーシェス様?」
気配を消したまましゃべられると、全員驚くからやめような? レイモンド……。
「騎士団内では、その名で呼ぶなと言っているだろう。……後ほど話す内容とも関係するが、俺は」
俺は? この言葉を、口に出してしまえばもう後戻りはできない。
ここにいるメンバーは、信頼できる人間ばかり。口外する心配はなくても、この言葉を告げた途端に各自がそのために動き出してしまうだろう。
「まあ、それはあとにするか。もう一つの話だが、行方不明になっていた聖女を見つけた」
その言葉に、ロイは立ち上がりその勢いで椅子が倒れ、ディランは冬眠開けの熊のような雰囲気を醸しだし、レイモンドはなぜか完全に気配を消した。
会議室は、異様な雰囲気に包み込まれたのだった。
続きます(*^^*)