下働き令嬢と騎士団第一部隊 5
部屋で休んでるけれど、レイモンド様が気になってしまう。壁により掛かったまま、身動き一つしないのだけれど、大丈夫なのかしら?
そんなことを思って、壁を見つめている。それにしても気配がない。
「とりあえず、昼食の時間ですね。そのあと、少々集まりがありますので」
再び、気配を感じられるようになったレイモンド様が、扉を開けて出て行く。しばらくすると、プレートに山盛りの食事をのせて戻ってきた。
「まだ、団員たちにルーシア嬢のことを説明できていないのでここで待っていて下さい」
「分かりました」
ご迷惑はおかけしたくないもの。
まだ、お仕事をさせていただけないのは、少し残念だけれど、物には順序というものがある。当然よね?
「結界を……」
「あ、ご心配なく。自分でできますから」
比較的、聖女と呼ばれていたときから、結界を張るのは得意だった。
なぜか、魔獣と遭遇することがほとんどなかったから、役に立たないと言われていたけれど……。
「えいっ!」
神殿長ベレーザ様に、辺境の神殿にいる間、使ってはいけないと指示されていたから、本当に久しぶりだわ。ちゃんとできているかしら?
「あら? レイモンド様?」
「この中で、倒れたりしないでくださいね? ちゃんと俺かアース様が来たときには、結界を解除してください」
当たり前のことを言うレイモンド様が、なぜか焦りをにじませているように見える。
どうしたのかしら?
「うーん、やはり一度解除していただけませんか? いざというときに阻まれてしまって、中に入ることができないと困ります」
「え? まさか」
レイモンド様は、そんなことを言うけれど、やっぱり私の結界はお粗末なのだろう。
私を傷つけまいとして、そんなことを言うなんて本当にいい人過ぎる。
私は、言われたとおり結界を解いた。
なぜか、レイモンド様が安堵したかのようなため息をついて、結界を張ってくれる。鮮やかなお手並み。さすがだわ。
「はは、珍しく疲れました。なんですか、あの結界」
「そんなにひどかったですか……」
「味方も助けに入れないという意味では……」
確かに、味方が入れないのは困るわね?
今度、味方を認識する機能がある結界を考えてみようかしら。
瞳の色と魔力の組み合わせなんてどうかしら?
「とりあえず、冷めないうちに食べてください。何がお好きか分からなかったので、俺の好みの物ばかりで申し訳ないのですが……」
「はいっ! 好き嫌いないですし、どれもおいしそうです」
「それはよかった。本当に……」
疲労感を醸し出したレイモンド様は、なぜかまた気配を消して去って行った。
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