下働き令嬢の帰還と騎士団第一部隊 3
「レイモンド! ようやく帰って来たのか。団長の具合はどうなんだ」
「騒がしいですよ……」
「久しぶりに再会した仲間に冷たいな」
大きな焦げ茶色の熊みたいな騎士様は、ずいぶんと快活なのね……。
明るくて元気な騎士様には、好感が持てるわ。
そんな言葉をレイモンド様に投げかけた、体格の良い騎士様は、かなり身長差がある私のほうに視線を落とした。
……あら、頭の位置が胸のあたりになってしまうわ。レイモンド様とアース様も長身だけれど、本当にこちらの騎士様は背が高いのね。
「その制服からすると、新しい職員か? 俺はディラン・ボルドーだ。よろしく頼む。ディランと呼んでくれていいぞ?」
「ルーシアと申します」
ワンピースの裾をそっとつまんでお辞儀をする。
私のお辞儀を見て、一瞬瞠目したディラン様。
そういえば、お辞儀をするたびに、なぜか一瞬皆様が動きを止めるのだけれど、何かおかしいことがあるかしら?
「…………さあ、この後緊急会議がありますから。昼食を食べたら、団長室に集合するように、第一部隊の隊員全員に声をかけてきてください」
「あ、ああ……。それじゃ、ルーシアちゃん! また後でな」
「はい、ディラン様。ごきげんよう」
……はぁ。それにしても、立派な体格だったわ。
見上げるような背丈に、私なんてぶら下がったところで何ともないような二の腕。
レイモンド様とアース様は、どちらかというと細身に見えるけれど、ディラン様はいかにも現場で戦う騎士様といった感じでとてもカッコいい。
神殿や貴族たちにはいなかったタイプのディラン様に感動してしまって、その背中が見えなくなるまで見送る私。
「えっと……。まさか、ディランのようなタイプが好みなのですか?」
「え? 好み……? たしかに、あんなふうに鍛えていらっしゃると、守ってもらえそうで憧れますよね」
でも、好みという意味では、アース様のもふもふした白銀の毛並みに勝るものはないわね。
そんなことを想像した瞬間、今朝の醜態を思い出してしまって赤面してしまう。
「え…………。本気」
盛大な誤解をされかけていることに、もちろん私は気がつかない。
それよりも、早く働き始めなくてはということに、意識がシフトしてしまっている。
「あの、レイモンド様?」
「――――あ、はい」
なぜか物思いにふけっていたらしいレイモンド様。
いつも、気配を消しているか、びしっと立っているレイモンド様にしては、珍しい。
「とりあえず、早く働き始めたいのですが!」
「とりあえず、ルーシア嬢の私室にご案内するのが先ですよ」
「あら……」
明らかに落胆した私を見るレイモンド様の視線は、今日も優しい。本当にいい人だ。
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