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鼻粉砕

最後まで残った内野と学級委員長。勝利を確信してるBチーム。


小西はにやけながら内野の方へ2つのボールを転がす


「あ、やべー、相手にしたボール取られたー(棒)」

「うわー、こっち負けるかもしれんぞ」

「終わったわー、向こう学級委員長いるもん。ぜってー強いわw」

「てかあの学級委員じゃねぇ奴誰だよ。」

「え、本当誰?」


明らかな舐めプ。


山田を汚い手で倒したこと、煽られてること、クラスメイトなのに俺の事を全く覚えてないこと。全部後悔させてやる。


「内野君…降参しようよ…絶対にあのボール当たったら痛いし…」


内野の後ろにいた学級委員長がビクビクしながらそう言う。


学級委員長は内野よりも小柄で、運動も俺より出来ない。

だが、俺みたいな日陰者の名前を覚えてくれているいい人だ。


「大丈夫、任せて!」


内野はそう言い前に出て、転がってきたボール拾う。

外野からは山田にパスしろという声が上がっていたが、内野は誰かにパスするつもりはなかった。


「おっ山田にパスせずやる気か?やっぱり男は逃げたら駄目だもんなw

いいぜ、来いよ」


小西は右手の中指を立て煽ってくる。周りの小西の仲間もそれを見て笑っている。


…ふぅ…絶対顔面狙ってやる


内野は完全に油断している小西の顔面を目掛け、全力で球をぶん投げた。

投げた球はプロ野球選手の豪速球かの様な速さで飛んでいったが、ボールは狙いが外れ、小西のすぐ横に飛んでいき誰にも当たることなくコート外へ。


「……え?」


突然の事に間抜けな声が出る小西。

相手どころか味方含め、その場の全員が一体何が起きたのかを理解できなかった。


「お前…何やったんだ…」


そしてようやく何が起きたのか理解出来た小西の表情から、先程の余裕は一切無くなっていた。

それはBチームの全員も同じだった。


「い…今のって…」

「あいつがやったのか…?」


内野は近くに転がっているもう一つのボールを拾い上げる。

それに反応し、Bチームの全員は真剣に身構えはじめる。

あんな球に当たったらひとたまりもないが、女子が見てる前で逃げる訳にはいかず、Bチームの全員に退路は無い。


「内野君頑張れ!」


皆が黙り込む中、外野にいた山田が一人そう声を上げた。


「が、頑張れ!」

「あんま知らんけどお前ならやれるぞ!」

「いっけぇぇ!」

「山田君の分まで頑張れー!」

「やっちゃえー!」


山田の声に続き、Aチームのメンバーと観戦してる女子達が一斉に声をあげる。

さっきは小西が怖くて何も言えなかった皆が、今は内野の応援をしている。

内野はこんな大勢の人に期待される事は初めてであった。


皆に応援され…注目されるのってこんなに気持ちが良かったのか…


ステータスが無かったら絶対に味わえなかったであろう快感に、この時初めてクエストに巻き込まれた事に感謝した。


そして皆に応援されて気合い十分になった内野は、ボールを投げ始める。

反撃の開始だ。


さっきの反省をし、威力よりも正確さを意識して投げた。これにより速さは落ちたが相手を着実に倒していく。

豪速球が男の急所部分に当たり戦闘不能になった者。顔面セーフのルールのせいで2回球に当たることになった者などもいた。


感情が高揚している内野は加減など一切せず、それを誰も止めることは出来ない。

小西と松野ぐらいしか球を避ける事が出来ず、殆どずっと内野のターンで反撃の機会など無かった。



数分でBチームで残ったのは小西と松野の2人のみになる。


内野が飛んできたボールを全て受け止めた事により、Aチーム側にはまだ学級委員長は残っている。

内野にボールが2つあるの邪魔だから持っててと言われ、ただボールを一つ持ってその場で立ち尽くしていた。


早くボールに当たって…外野に行きたかったな……


そう思っていた委員長だったが、その願いは叶う事は無かった。

無慈悲にもゲームは進み続ける。


「松野、お前がボールを受け止めろ!最悪当たっても俺がボールを持てればいい!」


「え、あ…分かった…」


松野がボールに当たれば、小西が落ちたボールを手に入れる機会が訪れるって事か。


松野は小西の前に出て構える。相手の作戦は分かっているが、今は前にいる松野を狙うしかなかったので、そのまま松野へボールを投げる。

松野はどうにかしてボールを取ろうとしたが、残念ながら身体に当たりボールは地面へ落ちていった。

そしてボールは地面を転がる。


「俺がもらった!」


小西はAチーム側には転がっていくボールを追いかけ、ライン際でギリギリボールを手に入れられた。


「よっしゃ!これで決めてやる!」


意気揚々とボールを手に取り立ち上がる小西だったが、彼が顔を上げるとそこには


「ああ、これで決めてやるよ!」


もう一つのボールを投げる構えをしている内野がいた。

二人の距離は1mも無く、もう一つボールがあるのを忘れていた小西は完全無防備であった。


そして小西を目掛け、内野はボールを放った。




ボキッ!

顔面にボールが当たった小西は一切受け身を取れないまま後ろに倒れた。


小西は鼻から血を大量に流し気絶している。

一同は急いで小西の元に駆け寄った。


や…ヤバい、流石に至近距離で顔面に当てちゃった!


内野も急いで駆け寄る。もう試合の勝ち負けがどうこうだとかいう話では無く、急いで保健室に運び、数分した後小西は救急車で運ばれた。


おそらくあのやばい音は鼻折れた音だろうか。

皆に応援されたからって浮かれて…流石にやり過ぎた…




その後内野・委員長・松野・あと数名の男子が先生に呼び出され、経緯を説明した。

怪我をさせたのは内野だったが、今回は職員室に帰った先生の監督不行きもあって、故意に顔面を狙ったものではないと分かったので、特に何の罰もなく終わった。

だが内野だけ残り、学年主任のおじさんの先生と二人っきりで話すことになった。


「取り敢えず今回の件の話は終わりだが…一つ不安な事がある。ほら、小西って色々問題を起こしてる問題児だろ?

この事で君に…仕返しだとかしてくる可能性もある訳だ」


「噂では結構酷いことをしてると聞きますね…」


「全部の噂が本当なのかは分からないがな。

一応これまでにも色々問題を起こしているが…ものによっては小西の仲間が起こしたって事になり、あいつだけ罪から逃れてることも何回かあるんだ」


「え、それって小西の仲間が罪を被ったって事ですか?」


「恐らくそうだ。まぁ校内での問題は発覚して、去年は1月程停学になったのだがな。

だが…校外で起こした問題は全て他の者が被ったんだ。それで証拠も見つからなかったから退学にする事も出来ず終わった。

しかも小西の仲間の中には大人もいるようで、どっかのヤクザの組とも繋がっている。これは目撃情報があったからほぼ確定だろう」


え!?

ヤクザの組との繋がりって…小西はただの不良じゃなかったのかよ。

もしや…この事がきっかけでそんな危険なそいつらに絡まれる可能性もあるのか?


「脅すような事を言って申し訳ないが、これは隠しておくべきじゃないと判断したから色々話させてもらった。

今の話が分かったのなら、出来る限り夜道は歩かないようにし、外に出る時も人目の通る場所を通りなさい。

そして何かあったら直ぐに私に報告してくれ、いいね?」


「はい、分かりました。ありがとうございます」


先生との話が終わり内野は教室へと向かう。今は昼飯を食べる時間で、腹が減りながらも色々考えながら歩く。


今まで学年主任の先生は、顔が厳つくて怖いので避けていた。だけど今日初めて話して、俺の事を本気で心配してるのが何となく分かったし、あの人が良い先生だと分かってよかった。


ヤクザか…思ってた数倍面倒臭い事になったかも。小西に目の敵にされるのは想定してたが、小西以外の校外の人も絡んでくるとは思わなかった。

ま、俺のこの力があれば大丈夫か。


内野はそんな楽観的な考えをし、この事態をそこまで重くは考えていなかった。


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