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日常の終わり

「おい、いい加減起きろ!」


薄暗くなった放課後の教室で、そんな声とともに一人の男が目を覚ます。

男は目を擦りながら周りを見渡すと、自分の真横に幼馴染である『佐竹 正樹(まさき)』がいた。


時計は18時40分を指す、ちょうど部活動が終わった辺りの時間だ。


…授業中に眠っちゃってから、誰も起こしてくれずにこんな時間までここでぐっすりお眠か。


「お前いつまで寝てんだよ、もう新しいクラスになって一ヶ月経ったのに…クラスに起こしてくれる友達とかいねぇのか?」


寝起きの者に向かって心無い言葉を浴びせているこの男は、彼の幼馴染である『佐竹 正樹』。

幼稚園からの幼馴染で、小中高全て同じ学校に通ってる。


「うるさい、これ以上俺の傷口を広げないでくれ。俺だってもっと友達欲しいと思ってるけど…」


「まぁ、お前が人見知りなのは知ってるけどよ。少しは自分から動けるようにならんとな」


うぅ…返す言葉が見つからない。



俺の名前は『内野 勇太』、現在高校二年生。

花のような高校生活を送っている…訳ではない。

勉強も運動も出来ないし顔も地味、その上人見知りだ。当然異性から言い寄られる事もない。


「いいよな正樹は…サッカー部のエースだし、性格と顔含めてイケメンだし、コミュ力もあるし。人生楽しそうだな」


「そんな褒めんなって。てかそういうのは努力してから言えよ」


そう、こいつはかなりモテるし、そんな奴だから当然彼女もいる。他校の子で、サッカーの練習試合で他校に行った時に出会ったらしい。


この事はあまり学校で広がっていないので、よくクラスの女子とかに

「佐竹君の好みのタイプって分かる?」

「昔の佐竹君ってどんな感じだった?」

こんなのを色々聞かれる。俺に話しかけてきた女子は全員が正樹についての質問をする為だった。


まぁ、さしぶりに女子と話せて浮かれ、質問には全部答えたし昔の話もしちゃったけど…


「…って、そろそろ帰るぞ。俺は部活終わった後だから疲れてんだわ、早く風呂入りてぇー」


そうか、俺がぐっすり眠てた間に部活があったの。俺も腹減ってきたからさっさと帰ろう。




内野は佐竹と共に下校した。

内野の家は通学時間20分程度の所で、俺と正樹の家は100mも無いくらい近所だ。


「あっ…学校に課題忘れた」


佐竹の家の前にまで来た所で内野は思い出してしまった。明日提出しなければならない課題を机の上に置いてきてしまった事を。


「やらかしたな、確か先生19時半位に教室閉めるから急げば間に合うかもしれんぞ」


「よし、荷物はお前に預けておくわ。じゃ行って来る」


現在の時刻は19時00分。疲れているものの走れば間に合わない時間では無い。

鞄を正樹の足元に置いてから早口でそう言い、内野は駅へと走り出した。




何とか内野は19時半前に学校に着き、目的の物の回収に成功した。ただ体力が無いので走って10分経過した頃にはヘトヘトで、腹が減ったのも相まって内野の体力は限界を迎えていた。


後はまったりと帰ろう、これ以上走ったら死ぬ…

ああ…腹減ったなぁ…ハンバーグ食べたいなぁ…


内野は晩飯の事を考えながら普段通りの通学路を歩いていた。

いつもこんな暗くなってからここを歩かないので少し新鮮な感じはするも、普段を何も変わらない世界、日常だった。


だがその刹那、内野の意識は途絶えた。

そしてそれと同時に内野のこれまでの日常は終わりを告げる。

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