プロローグ
小さな部屋に響き渡る子供の声。
力強く、それでいて美しい。
「くそ! うるせーんだよ!」
「きゃ!」
誰かが、いや、生まれてすぐに酒の瓶を母にぶつける父
この家族もまたはずれだ。もう一度、私の人生だけを
「リターン」
次はどんな家族に出会えるのだろう。
何度も何度も同じように部屋に響き渡る‥‥‥ん?
何度産声を上げても部屋に声は響かない。
「おお! やっと‥‥‥やっと生まれてくれた! 我が愛しの娘よ!」
自分の顔と父親らしき男の顔が擦れる。
正直痛いし硬い。でも、そんな事など忘れさせてくれる程に、今までの親とは違う優しさがそこにはあった。
「私の名はアルス・スカーレット。そしてこっちがお前を産んだ—」
「ママのクリスタ・スカーレットよ」
「そしてお前は我が娘! リリア・スカーレットだ!」
広い部屋、いや、部屋といって良いのかすらわからない場所で骨の下面に黒い服、赤い瞳に鋭い角がある父。
父とは違い普通の若い女性の母、私は今裕福な家庭に生まれ、これからもこの2人と楽しく過ごせるのだろう。そう感じていた矢先に元々体の悪かった母が私を産んだ影響で亡くなった。
「クリスタ! クリスター!」
父は母を亡くしたことへのショックで部屋に篭りっきりになってしまった。
そんな事もあったが、私は執事のアレクと共にすくすくと育ち今や15歳。ちなみにアレクは執事の家系に育った2つ上の兄的な存在。アレクは私が10歳の時に私の執事となり、若いながら頑張ってくれている。
そして今私は、この国リディアスの魔王アルスの娘をしている。
「リリア様。またリディアス王国の騎士がゴブリンの群れを壊滅まで追いやったとの情報が」
「またですって! 昔の、お祖父様の代のような戦争にはならないようこちらから手を引いているのに! あの王国は私達とまた争いがしたいの!」
「1500年前の『死者の花道』ですか」
生態系の半数を壊滅させるほどの大きな戦争。お祖父様は死者をも蘇らせ戦わせた、恐ろしく残酷な戦争、それが『死者の花道』。それからと言うもの、父は人間との共存、魔族の未来のために尽くしてきた。なのに、人間はそれを受け入れなかった。
「後残っているゴブリンの村はどこ」
「西側の山に位置する村だけです」
あそこはゴブリンが1番多い場所ね。このままだとゴブリンのが全滅してしまう。
「すぐに向かう。転移魔法を用意して」
「かしこまりました」