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防衛拠点ボロック  作者: 木島別弥
第九章 神の居る城ボロック・ヒヒイロ城
19/19

9-2

 魔族が攻めてきた。

「敵は魔王直属軍だ。おそらく、今度の敵の中に魔王がいる」

 偵察係がいう。

 敵は、魔王直属軍十万人。

 味方は、人間の兵士十万人。

「イージニー」

「はい。いよいよ、魔王戦ですね」

「魔王を倒せば、戦争は終わるかもしれない。だが、特別に魔王を狙った作戦は立てない。いつもどおり、最善を尽くして籠る」

「はい」

 そして、魔王との戦いが始まった。

 片手の凄腕が魔王と戦っていた。魔王は、大柄の人型の魔族で、重装備の衣装を身にまとっていた。魔王は大きな鎖鎌を持って戦っている。鎖鎌がしなって宙を行ったり来たりして、予測できない動きで突き殺される。

 光速の剣士が加勢に入った。魔王は踏みとどまることなく前進してくる。

 クラップは、魔王を目視できるところまで出て行った。

 魔王に気づかれると怖いな。だが、魔王を見ておかないというのは後悔が残りそうだ。とクラップは考えた。

「人間ども。覚えているぞ。我が最初に攻撃命令を出した人間の城はボロックといった。ここがかつての最弱の城ボロックなのだろう。よく最弱の城を守り通した。見事だ。褒めてやる。最弱の城を守り通すなどという兵法は、我は知らなかったのでな。敵として不足のない相手だ、ボロックは。」

 魔王が人間のことばを使い話しかけてきた。

 メイビーとシドニーが魔王を囲もうとするが、魔族の近衛兵がそうはさせない。

 片手の凄腕は魔王に負け、光速の剣士も傷ついて撤退した。クラップを自主的に護衛している大男も、魔王に挑んだが適わなかった。

 何度死んでも生き返るロスが魔王と戦ったが、銃で蜂の巣にしても魔王は倒れなかった。

「魔王が目指しているのが、『約束の置時計』というわけではないようだな。」

 クラップが口走った。

 かつて、午前零時に上級魔族を殺した魔術師が居るかもしれない。他に誰が魔王を倒せるだろうか。新しくやってきた王国の精鋭たちが魔王を倒すかもしれない。クラップはじっと仲間の戦いを見守った。

 そして、ついに、名前の知らない凄腕が剣で魔王を倒した。魔王が倒れると、魔族は一斉に奮起して突撃してきた。

「城の地形を利用して戦え。この突撃をしのぎ切れば、魔族の攻撃に次はない。」

 クラップが励ます。

 魔族の死に物狂いの突撃は、ボロックの兵みんなが震えあがるくらい恐ろしかったけども、長くはつづかなかった。

 魔王が死んだことにより、魔族の軍は兵を引き上げ始めた。もともと、魔王が地上を征服しようとして始めた戦争だ。魔王が死んで終わってくれればいい。

 一日もしないうちに、魔族のほとんどは撤退していった。勝った。勝ったのだ。防衛拠点ボロックは勝利を収めた。

 魔族との戦争に勝利したのだ。これで長い戦争が終わる。

「カチドキをあげろ。全軍に、ボロックが魔族に勝利したと伝えろ」

 あちこちで歓声があがった。

 戦争を生きのびた人たちは、本当に疲れから解放される喜びが表情にあふれていた。

 終わった。終わったんだ。クラップたちは人類最終防衛拠点を守りきった。

 あとは、女神シアジアとの約束の百年後を待つだけでいい。

 みんなが抱きしめ合って、喜びを体で表していた。

「ねえ、お兄ちゃん、誰が魔王を倒したの?」

 最近入隊したばかりの女新人兵が聞く。

「名前の知らない凄腕さ」

「だから、その名前の知らない凄腕さんの名前はなんていうの?」

「名前を知らないから名前の知らない凄腕さ」

 どうでもいいような会話をして、戦争の終わりをかみしめた。

 『防衛拠点ボロック』の戦いの記録をここに記す。女神シアジアとの『約束の置時計』はこのようにして守られた。


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