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98 騎士さんパーティー加入

 さらに二日ほどわたしたちは村に留まることに。

 一応例の正体不明の老騎士さん。助けた以上は、それ相応に責任をもたなければいけません。


「調子はどうですか?」


 ようやく回復してベッドからの起き上がれるようになった時分に勇者様とお供のわたしたち四人、老騎士さんを正式に見舞いました。

 これまではマリーさんが看護していましたのでわたしも、これが初対面です。

 騎士らしい言葉遣いと礼儀への気を配ります。


「これは……勇者殿」


 ベッドに横たわっていた老騎士さんは、居住まいを改めます。

 マリーさんの指示を守り、療養に努めているそう。

 もう普通に歩いて過ごせてはいるそうです。


「俺たちは明日出発するから、何か欲しいものがあれば言ってください。これは少しだけど役に立てば」


 勇者様が傍らにいるわたしに目配せ。

 さっと懐から袋を取り出します。

 わずかばかりですが、お金と薬草などを置いておきました。


「これは……かたじけない。お助けいただいた上にここまで世話になってはかえって……」

「いやいや、遠慮しなくていいですよ。困ったら、助けてあうのが旅人の心得だと、故郷のグラスタニアでは教わりましたから」


 老騎士さんは痛みいるように頷きます。

 勇者様の辺境田舎の根は優しい部分が今日は良い方向に出ています。


「勇者殿は、遙か東のグラスタニアから着たとか」

「ええ」


 徐々にお互いの身分を明かしていきます。


「その若さでこんな西まで旅するとは、素晴らしい…」

「ところで、いったいどうされたのですか? 見たところ単なる怪我ではなさそうですが……」


 勇者様が核心をおたずねしました。

 さらに。


「それから帝国の騎士とお見受けしますが?」


 その瞬間、騎士さんの目が陰ったのをこの場にいる全員、見逃しませんでした。


「恥ずかしながら、はぐれ騎士で」


 はぐれ騎士とは、騎士団を脱退、追放された者の通称です。

 色恋沙汰、お金の横領で追放されたとか、厳しい訓練についていけなくなったとか、たいていは不名誉な理由です。

 そして当てもなくさまよっていたところを恐ろしい魔物に襲われた、と。


「そう……ですか……」


 勇者様はそれ以上追求はしませんでした。

 わたしでも感づいています。

 事情を隠している。

 帝国でも相当な地位の高い騎士さんですし、これまでの言動や振る舞いから、自らにも厳しい高潔な騎士の鑑。

 そんなことをするようにはみえないのです。


「森の中で倒れていたところを勇者殿にお助けいただいたとか」

「いやいや、礼ならエレーナに言ってください」


「エレーナが見つけてくれなかったら、あのまま森の中で、ゆっくり大地に帰って行ったところだったんだぜ」


 おしっこ中だったことは絶対秘密ですよ。


「これは、なんとお礼を言ったらいいか、エレーナ殿」


 背の小さなわたしよりも、低く深々と頭をさげました。


「そういや、名前を聞いていなかったな」


 少し躊躇しました。


「今はカイルと呼んでください」


 とても長い長い騎士名があると思います。

 どんなよばれ方をしていたかはわかりません。








 翌朝。

 わたしたちは身支度してそそくさ出発の準備にとりかかっていました。

 荷物をまとめ、馬車の準備。

 いそしんでいたわたしたちに声がかかりました。


「勇者殿」


 なんと老騎士カイルさんが、甲冑をまとって正装しています。


「このカイル、微力ながら旅のお手伝いをしたいと思っております」


 そして片膝をついて胸に手をあてる騎士の忠誠。


「こ、これは……」


 勇者パーティーに仲間が新たに加わるイベント!

 出発時からメンバー構成にほとんど変化が見られなかったわたしたちに初めてのイベントです。

 

「どうか一行に加えていただけませぬか」


 ルビーさん、シルヴァさん、マリーさんの視線が一斉に勇者様に注がれます。

 この手の案件の決定権はすべて勇者様。

 勇者様の決断に委ねられます。

 何か深い事情を隠している騎士さん。

 怪しいと断ることもできます。


「なんか、深い事情を抱えてるみたいだけど、こっちは構わないですよ」


 おおう。勇者様、いかにも勇者らしい即決をしましたね。

 疑心暗鬼にならず、懐の深いところを見せました。 

 お共のわたしたちは頷き合います。


「でもさ……見ての通り、俺たち、若造にあれこれ言われるのは気に障らないかな」


 確かにわたしたちは一番上のルビーさんでも弱冠二十を超えたぐらいです。

 それでも白髪交じりの老騎士さんは改めて忠誠の証として勇者様の足下に片膝を着きます。


「勇者殿、わたしは一向に構いません。どうか一兵卒と思って使ってください」

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