74 幕間 冒険者を追放されたけど何故か仲間になってくれてた天才美少女剣士が最強過ぎる⑥
そして半日かけて、ようやく頂上付近にたどり着いた。
山頂では大きな火口がまがまがしく開いていた。
火口の奥の方に赤い溶岩が鈍く輝いているのが見えた。
「ここね」
「い、行くのかい?」
「もちろんよ。竜はまだ倒していないでしょう?」
火口の最深部に近づく。
熱い空気が漂い始めた。
そして腐った卵のような臭いもあわさる。
動物も植物もなく、まさに死の世界を思わせた。
ゆっくり下ってゆく。足を踏み外したら、溶岩へまっさかさま。
明らかに造られた形跡の堆くつまれた岩山があった。
おそらく竜がここに岩を運んで巣を作ったのだろう。
岩と岩の隙間をぬってゆく。
「うう……」
ルシオは足をすくめた。
竜の討伐に失敗したと思われる冒険者の骨が転がっていた。
竜に食べられたのだろうか、食い荒らされたように無惨に散らばっていた。
金属の部分だけが残った剣や防具も落ちていた。
それも、このまがまがしい汚れた大気のせいで、腐食している。
思わず目を逸らした。
「どうしたの?」
それに気付いたのか、エンドラは振り返った。
汗が吹き出る熱気漂う空間にいるのに、涼しい顔をしている。
「あら、ひょっとして怖いの? こういうところ、ルシオは初めて?」
「い、いや、違うよ」
見栄を張ったが実際は初めてであった。
エンドラは顔が青ざめたルシオを振り返っていた。
「こ、こんなの全然平気さ」
奮い立たせた。
まったく怖じ気づいた様子をみせない少女に男の自分が情けないところをみせてたまるか。
巣らしき場所を調べていると、ふいにエンドラが小走りに岩の影に駆け寄った。
そして手招きした。
「みて、ルシオ」
駆け寄ると、奥の方を指さした。
「これ……もしかして」
「そうね竜の卵よ」
白い大きな卵が六個ほどあった。明らかにこの地上の動物ではないものであった。大きさは人の頭よりも大きく、やや赤みを帯びている。
その一つを取り上げた。
ルシオは驚愕した。
「ま、待て。それをやったら……」
ぱりっと裂け目ができたかと思うと、ぐいっと顔を上げて出てきた。
きい……と小さく鳴いた。
「ふふ、竜も誕生したばかりはこんな可愛げがあるのね」
鶏の雛と変わらない。
だが小さいがまぎれもなく竜だ。
エンドラを親と思ったのか、きい……と小さく鳴いた。
再び空気が振動するほどの叫び声をあげた。
大きな声が辺りにとどろいた。
その声はびりびりと空気を振動させる。
「あ、あれは……」
いた。
大きな火口のすぐ上に大きな影が見えた。
影は一際大きくうねった。
火口を旋回するように飛んでいる。
「ふふ、やっぱり、ここが巣のようね」
エンドラはあっさり言った。
魔界の竜でも天界が使わした神の竜でも、いずれもその巣に近づくことは怒りにふれるとして禁忌。
命は無いとされている。
「どうするんだよ、見つかったぞ、怒ってるぞ」
「倒しに来たんだから当たり前でしょう?」
再び大きな鳴き声が響いた。
空気がびりびり震える。その声は足を竦ませるのに十分だった。
あきらかに、いきりたった声を発している。
巣を侵し、卵や子をさらおうとしている侵入者に対する怒りの声だ。
大きな翼を羽ばたかせると、風が巻き起こった。
「あちちちっ」
狭い火口で熱い空気がかき混ぜられ、舞い上がって旋風となる。
それだけでも命を縮めるのに十分だ。
さらに、火炎をはいた。
地獄の業火は、既に焼き尽くされた大地をさらに焦がし、周囲の岩をなぎ倒すように吹き飛ばす。
「ど、どうするんだよ」
早くも後悔した。
竜の獰猛さは聞いていたものよりも遙かに上回っていた。
だが、彼女エンドラは、涼しい顔のままだ。
「ふふ、恐いの? ルシオ」




