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63 リディナ王国へ入国

「みなさん、ご心配おかけしました」


 日が傾きかけたころ、ようやくマリーさんが立ち上がれるようになったので、出発しました。

 勇者様とルビーさんが、マリーさんの荷物や錫杖を持って、支援します。

 やはりマリーさんは、聖職者。冒険系の職種ではないので、スタミナはどうしても少ないのです。それでいて、聖なる力、回復と様々な役務がありパーティーで重要な地位を占めています。

 回復担当がいない場合は心細いものです。薬草、ポーションなどで凌がないといけません。

 アイテム管理係の窓際族なわたしとは違うのですよね。


 山を少しずつくだってゆきます。

 どこかこの近くに住んでいる人はいないか。泊まらせてもらえないか。

 あるいは野営できるような場所を探さないといけません。

 もうそろそろ日が落ちて暗闇に落ちる、という時に、森の中の道の脇に、煉瓦作りの小さな建物。


「あ、あったぞ!」

 

 マリーさんを担ぐ勇者様の歓喜の声。

 もくもくと煙突からのんびりとした白い煙がでています。


「ここはわたしに」

「ああ、頼んだぞ、エレーナ」


 早速わたしが出て行きます。


 たてられている木の看板には検問所と書いてあります。

 どうやらリディナ王国の検問所のようです。

 入り口には兵士さんが見張りで立っています。リディナ王国特有の緑を基調とした鎧や装備。間違いありません。入り口には竜をあしらった国旗がはためいています。

 こんばんは、と挨拶を交わすと驚かれました。


「あっち側から来たって!?」


 兵士さんびっくり。

 どうも、こちら側では、坑道が最近危険なので、ここで引き返すように旅人に兵士さんが注意していたところだったようです。

 もし行くのならば徒歩で峠を越えるように、と。

 前述のとおり、峠越えは峠越えで厳しい道のり。事実上の閉鎖です。

 こっち側には警告が無かったのが怨めしいです。

 と愚痴りながらも、リディナ王国への入国の手続きを始めました。


「あー」


 そこで初めて気づきました。


「入国手続きの書類、馬車の中に置いてきました……」


 うっかり慌てて、アイテム袋に入れるのを忘れていました。

 これでは入国できません。

 とにもかくにも、ここはもうリディナ王国です。



「ありがとうございます、ありがとうございます」


 何度も頭を下げました。

 兵士の人に事情を説明したら、上の人とかけあってくれて、色々と免除してくれました。

 まさか、また元の道を引き返すわけにもいかない。

 さすがリディナ王国は風紀正しいと共に、かつていにしえの勇者もここに留まって、力を蓄えたとされる伝統のある国。


 その日は検問所の近くで野営することになりました。

 兵士さんたちは、流石に寝床は自分たちの分しかない、と申し訳なさそうにしていましたが、それでも大助かりです。

 この辺りは聖なる森が近いので、魔物も寄りつかない、安全な場所なんだとか。

 故に、夜の見張りも必要ありませんでした。

 恒例の野営ですが、馬車も毛布もありません。

 今日は外套をかぶって寝るだけ。

 でも、翌朝までぐっすり眠ることができ疲れを癒すことができました。

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