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59 暗闇の逃走劇

「逃げる……」

「ああ、逃げるぞ」


 勇者様も同調します。

 皆その体勢を取り始めます。


「足止めをする魔法を使うので、その間にできる限り遠くへ逃げるんですよ」


 シルヴァさんが、次の魔法を繰り出します。

 魔力で力を縛るのだそうです。

 流石、魔法学校の天才。

 だてにいつも魔術書を読みあさって、さらに旅で鍛えられていません。いくつもの魔術を心得ています。素質もあるのです。

 逃げる。

 簡単に一言でいいますが、逃げるとなったら、全力でやらないといけません。

 コマンド一つで終わる技ではないのです。

 命がけで、全てをなげうってーー。


「ひええええ」


 慌てて馬車に戻ります。


「エレーナ、逃げるぞ」


 馬車の放棄がすぐに決まりました

 いざとなったら、捨ててもいいように。

 できるだけ荷物はアイテム袋の中に入れて。食べ物も水も、持てるだけ。もちろん、お金も入れます。

 老夫婦からもらった数々のお土産も残念ながら、持って行くことはできません。

 毛布とか、鍋とかはこの際、置いていきましょう。ルビーさんのためにたっぷり買い込んだお酒は置いていきます。ごめんなさい。後々これが後に響くことになるとは思いませんでしたが。

 ともかく最低限、必要なものは入れ終わりました。

 せっかくシエレンの町で仕入れた品々があるのですが、最低限のものを取捨選択します。


「エレーナ、なにやってるんだ、行くぞっ」


 勇者様はその間に、馬と馬車をつないでいた綱をほどき、その馬に飛び乗ります。

 シルヴァさんが戻ってきました。


「お、終わりましたです。でも抑えていられる時間はそんなにないですよ」


 すぐに束縛の魔法は溶けてしまうそうです。

 強い敵であればあるほどーー。

 奥から、死竜がばたばたもがいている音がします。ずしん、ずしんという音もします。

 確かに、もたなさそうです。

 その間に少しでも遠くに行くしかないです。

 さらば、馬車。

 シルヴァさんも術を終えて戻ってきました。

 勇者様の馬の後ろに乗ります。


「捕まってろよっ」

「わかってますです」


 勇者様の馬には、マリーさんも乗ります。三人一緒。体の軽い女性陣中心であることが、この時ばかりは幸いします。

 マリーさんが、錫杖を掲げて法力を込めています。

 先端が、白く輝き、見る見る輝いて辺りを照らしました。


「これが、最後ですっ」


 振り絞って聖なる光が洞窟を照らしました。

 死竜が、見えない鎖にしばられて、もがいている音が聞こえます。


「ほら、もたもたしちゃだめだよ、エレちゃん」


 ルビーさんにひょいっと持ち上げられます。

 お子さま扱いです。

 あらら、お姫様だっこを通り越して、赤ちゃんおんぶです。

 背中に後ろ向きにくくりつけられます。


「ルビーも急げっ」


 腹を蹴り、手綱を握ります。

 いななき声と共に馬が駆け出します。

 勇者様たちは先に走り出します。


「わかってるって、行くぞっ」

 

 ルビーさんも馬に命令します。

 出口は死竜がもがいているすぐ脇。

 さっき倒した死霊どもは一度倒しても復活していることが往々にしてあります。

 戻るのは悪手。

 こういうときはあえて敵の横をくぐり抜けていくのが正解です。

 それに出口はこちらの方が近い。

 こういう時には、場数を踏んでいないと正確な判断ができないのです。


「行くぞっ」

「行くよっ」


 ほぼ同時に勇者様もマリーさんも躊躇することなく、もがいている死竜のすぐ横をすり抜けました。


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