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56 死霊は怖い

「エレーナは、暗闇が駄目なのか? 夜が苦手……というわけではないのに?」


 勇者様にも臆病っぷりを笑われました。


「わたし、ああいういかにもな、死霊系、わたし駄目なんです」


 前世の自分で、某ネズミの王国のお化け屋敷アトラクションも、わたしは眼をつぶっていましたので。


 今も馬車の中で眼をつぶっています。


 入って一時間もしたでしょうか。

 真っ暗闇。

 もう出口の明かりもとっくに見えなくなりました。

 たいまつの炎だけが煌々と燃えて辺りを照らしています。

 ゆらゆらと壁が赤い炎でゆらめいて不気味ですね。


「うわっ」


 なにかがうごめきました。

 ちゅっちゅっと鳴き声をあげて地面を這うネズミでした。


「エレーナ、ネズミだって」


 今度はルビーさんにも笑われました。ヘタレキャラ全開です。

 坑道はまだまだ続きます。

 さらに一時間後。


「ひえっ」


 急にカタカタという音が奥の方から聞こえてきました。

 ネズミの声などではありません。

 この軋むような乾いた音。

 カタカタ、カタカタ。

 徐々に近づいてきました。


「まさか……」


 今度は間違いありません。

 なんとなくなま暖かい、気味の悪い空気が漂ってきました。


「来たぞっ」


 勇者様たちも反応します。

 死霊系モンスターのお出ましです。

 典型的、剣と盾を持った骸骨兵のお出ましです。

 何体も、何体も後から後からやってきます。

 カタカタ、カランカラン。

 もしあれに捕まったらミイラ取りがミイラになるーーなんてことわざの如く、こちらも死霊の仲間に引き入れられてしまいます

 もう、こういうの苦手なんです。


「うりゃっ」


 ルビーさんの気合いを入れて斧を振るう音がしました。

 ガシャッ。


「ひっ」


 早速剣戟が聞こえてきます。

 さらに立て続けにグシャ、ガチャ。っという骨が砕ける音。

 実際はあの骸骨兵、一体一体はそんなに強くありません。

 しかし、死んでいる相手に戦っても切りがありません。

 骨が本体ではなく、怨念のようなものが渦となってあの骸骨どもを動かしているのです。

 なので、倒しても倒しても復活してきます。

 よっぽど粉々に砕かないとーーまた起きあがってきます。

 それをやれるのは聖なる光、法術しかありません。

 回復の力がほとんどの法術の力ですが、相手を撃滅させる攻撃手段となりうるのが、この死霊系モンスターとの戦いです。

 もちろん、わたしは馬車の毛布をかぶってガタガタ震えています。

 もうああいうの、本当に駄目なんです。


「マリー、頼むぞ!」


 勇者様たち普段の攻撃陣はサポートに回ります。


「光の精霊よ闇に漂う悪しき魂を救いたまえ」


 このときばかりは、主役。

 マリーさんも、はりきっているようです。

 おお、光がトンネルを照らします。

 浄化の光ーー。


 一気に骸骨たちが崩れ落ち、さらさらと灰燼となって消滅します。


 そして、その次は動く死体、いわゆるゾンビ的なものもやってきました。

 勇者様たちが、切っても切っても倒れません。

 シルヴァさんが焼き払います。


「地獄の業火、不浄なる肉体を焼き払わん」


 魔法陣が浮かび上がり、炎がぶわっと杖から噴射されます。

 めらめらと燃え、あっという間に焦げてなくなります。

 集団火葬。

 その間もあとからあとからやってくる骸骨や、死体を魔術と法術で退治してゆきます。

 ルビーさんと勇者様は、二人をサポートします。

 剣や斧で薙ぎ払い足止めします。

 死霊との戦いでは、四人の立場は逆転します。

 普段は勇者様とルビーさんがメインで戦い、二人がサポート。

 もちろんわたしは、役目がありません。


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