52 死地から救出。しかし
なんとか、なんとかみんなの下へいかないといけない。
けれど、大事な部分をやられてしまって立ち上がることができません。
痛くて、地面でもがいているだけ。
矢が収まったのでおそるおそるあたりを伺ってみました。
「……」
目の前にコボルトたち。
囲まれてます。ざっと七匹はいたでしょうか。
弓を構えていたり、ナイフのような短剣をもっていたり。棍棒を持っていたり。
やっぱり仲間をやられていきり立っています。ぎゃーぎゃーというわめき声。
「あ、あ……」
剣を取ろうとしましたが、こんな状態ではまともに掴むこともできません。どうせ抜けても威力もないへぼ剣です。
後ろからけ飛ばされて、ノックアウト。
「ぎええええ」
矢が刺さったままのおけつなので当然ながら、激痛のだめ押し。
もう、限界です、わたしのお尻……。
それとともに、命運が尽きて……。
「!?」
ぎゃーぎゃー。くえっくえ。
わからない言葉を交わしあっています。
「うががっ」
さるぐつわをされてしまいました。
そしてーー。
「うぐっ」
コボルトたちは、わたしを引きずってどこかへ連れて行こうとしています。
これは……。
嫌な予感。
お子さま。ちび、ヨウジョ。さんざんに言われていますが、それでも、こっちの世界では女ーー。
捕まった女が連れ去られてやられることといえば一つ。
巣へ連れて行かれてあんなことや、こんなことをーー。
暴れようにも、痛くて。
ただ恐怖で体をびくつかせるだけ……。
「エレーナあ」
「エレーナちゃん! 今助けるよっ」
叫び声に勇者さまたちが駆けつけてきました。
「おうりゃっ」
草むらをかけおりて、ルビーさんの声。
強力な敵に、慌てふためきます。
そして、あっさりわたしを離します。
「うぎゃあああ」
地面に放り出されて、また酷い痛みーー。
一斉に逃げ出しました。
「逃がさないぜっ」
あっさり形勢は逆転。
ドン、グシャ、ガシ。
一匹残らずやっつけてくれました。
わたしのために戦ってくれてます。もう少しです。
「大丈夫か……エレーナっ」
この時ほど皆さんが頼もしいと思ったことはありませんでした。
でもわたし、大丈夫ではありません。
「ぬおおおお」
今のわたし、とても激痛にのたうち回りまってます。
「あああ、死ぬう、わたし、死ぬんですねっ」
コボルトは退治されましたが、お尻に矢が刺さったまま。
「大丈夫だよ、死なないさ」
冷静すぎる勇者様。
「もうエレーナちゃん、動揺しすぎだって。マリーが治してくれるから」
ルビーさん。手馴れすぎです。
「は、早く……」
「おーい、マリー、来てくれ」
勇者様が手を振ってマリーさんを呼んでくれています。
ああ、希望の光がーーありがたい。
「その前にとりあえず、矢を抜かないとな。一気に抜かないと鏃が残ったりするからな、気をつけないと」
よっしゃ、任せときな、あたし、何度もやったことがあるから、とルビーさんがうつ伏せになって、もがいているわたしの横に座りました。
「いい? 抜くよっエレーナ。痛いけど「ちょっと」我慢してね」
ルビーさんが私に刺さっている矢をつかみました。
「あ、ちょ、ちょっと」
「せえのっ」
ルビーさんはわたしの制止にもかかわらず、力任せに引き抜きました。
豆知識。
コボルトの矢は逆さにささくれ状態になっていて、刺さると抜きにくく、無理に抜こうとすると、お肉が持ってかれます。激痛が走る仕様になっています。
それをぐい、と一気に。
「あぎゃあああああああ」
森にわたしの悲鳴が響きます。




