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42 幕間 冒険者を追放されたけど何故か天才美少女剣士が仲間になってくれて最強過ぎる④

「ば、ばか。聞こえたらどうするんだ!?」

「聞こえるように言っているのよ」


 ルシオは帝都滞在中、冒険者でもあまり質の良くない連中と付き合っていた。

 むしろそういう者にしか相手にされなかったといっていい。かもにされていた。


「おいおい度胸あるじゃねえか、それともただの馬鹿か? ルシオの仲間なんてぐらいだからよ」


 ガンガの煽りにも少女は気にもとめない。


「あんまり馬鹿いうと、その綺麗なお顔が台無しに……」


 少女の胸ぐらをつかもうとしたが、交わされた。逆にその首もとを捕まれた。

 

 細い剣が握られていて、その切っ先が喉元に向けられていた。ほんの首の皮一枚で鈍い光を放つ。

 動きも鮮やかだった。相手の胸に躊躇なく飛込んで素早く動きを押さえ込んだ。剣を抜いたところも見えなかった。


「お、親分っ!」


 周囲の者たちが、慌てふためく。

 恐る恐るやりとりを見ていた野次馬たちも、にわかに慌てだす。


「わ、わかった、その剣、しまえ。冗談じゃすまねえぞ」

「いいえ。冗談ではないわ。そのまま背を向けて、ひざまずきなさい。変な動きをしたらその喉を切り裂く」


 やむなく背中を向けてひざまづいた。


「どう? あなたたち。親分の命がいらないなら、かかってきなさい」


 お、おかしら。ガンガさん。

 動揺するばかりだった。


「おまえら、変な動きするんじゃねえぞ」


 ガンガの喉元に突きつけた剣が鈍く光る。


「こ、こいつ……」


 冒険者の間では、女でも男以上の手練れは珍しくない。

 女だから、という思いこみは無い。

 だが、そういう場合はみるからに体格が立派で、男勝りであることが多かった。

 この少女は小柄で一切そういうような風格はなかった。

 だが、その筋の良さはそこいらの剣士を軽く凌いでいた。


「なかなかの手練れじゃねえか」


 腕力勝負すれば、こっちが勝つはず。

 だが、少女はガンガの関節を強くねじり上げる。

 腕力も見かけ以上だった。


「ぐあ、いてえ」


 巨体が悲鳴をあげた。


「わかったわかった、俺の負けだよ。お嬢ちゃん」


 だが、なおも


「うおお、この小娘がーー」


 背が高いが痩せぎすの男が突進してきた。

 少女はわき腹を鞘で正確に突いた。

 いきおいをつけて襲いかかったので、その勢いが自分に跳ね返ってきた。

「ぐ、ぐぼ……」


 見かけ以上のダメージを受けていた。

 さらに体重を崩したところを足払いした。

 男の大きな体が宙に舞うように倒れる、勢いよくテーブルに頭からつっこんだ。


 ガンガの喉に剣を突きつけながらーー。


 すげえな、あの悪名高いガンガを押さえ込んでやがる。

 成り行きを見守っていた野次馬から、賞賛の声があがる。


 槍や刀、甲冑がガチャガチャなる音が近づいてきた。


「お前ら、何をしている」


 幾人もの兵士たちが騒ぎを聞いてやってきた。

 おそらく店の者が喧嘩が収まらないのをみて、兵士たちの詰め所へいったと思われた。

 少女はガンガの首筋を痛打して意識を飛ばした後、放り出した。


「お、おかしら」


 卒倒し、崩れ落ちる巨体を幾人かで受け止めた。


 そしてルシオの手を取った。


「いきましょう。面倒になるから」


 少女がルシオの腕を引っ張った。

 酒場を出て騒ぎから走って逃げた。


「ただで済むと思うなよ」


 ガンガとその仲間の男たちの捨てぜりふを背にして酒場を飛び出て行った。




 夜更けの誰もいない静かな街を、ルシオは走った。

 先をゆく少女を追いかけた。


「はあはあ……もう……いいんじゃないかな」」


 ようやく人気のない場所に出た。

 少女も走りをやめた。しばし後に遅れてきたルシオが追いつく。

 周りは誰もいない。月夜だけが二人を照らしていた。


「すごいね、君……剣の腕、本物だったんだ」


 興奮して少女をみつめた。

 銀髪。美しい容姿、そしてその細い体に似合わず、剣の達人。

 物語にも出てきそうな才色兼備、希代の女剣士にルシオは胸を躍らせた。


「でも、ますます借金は返さないといけなくなったわね」


 あの場は切り抜けたが、根本は解決していない。

 それに、ああいう輩は面子メンツを重んじる。あそこまで面目を潰して、街から逃げ出しても追いかけてくるだろう。


「あ、ああ……どうやら、この街にいる限りあの連中からは逃れられないからな」

「じゃあ、やっぱり倒さないといけないわね、火竜をーー」


 話は再び戻る。

 だが、何故かルシオは思った。

 この少女と一緒なら、竜だって倒せそうな気がした。


「しょうがない、やってみよう。君も、手伝ってくれるんだろう?」

「もちろんよ」

「そうだ、君の名前、聞いてなかったけれど」

「エンドラよーー今日からあなたとわたしはパートナーよ」

「ああ」


 自分にこんな素晴らしい仲間ができるなんて。

 夢のような出来事にルシオは胸を踊らせた。


「ああよろしく」


 少女のひんやりした手を取った。

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