28 戦い終わってわたしの出番
楽な戦いではないものの、どうやらなんとかなりそう……と思った直後に、ふいにばさっと馬車の幌が激しく揺れました。
横を見ると、すぐ横に尖った頭を馬車につっこんでいる何かが。
「ひっ」
なんと小型竜が馬車に首をつっこんできています。
キシュアアアアと妙な雄叫びをあげています。
「ひええええっ」
自分用の剣を慌てて抜いてーー。
何度か失敗してようやく抜けました。
「来るな! 来るな!」
心得のない剣を精一杯振り回します。これでも前世で高校の体育の時間に剣道を少しやった覚えが……いや、端っこでさぼってました。
細い上にお尻が重たい……。さらに細身なため重心がぶれやすいです。
胸は小さくてもこの体は女性なのです。トイレの違いだけではありません。
鍛えていない体はどちらかというと剣に振り回されています。
「うりゃああ……ああ」
もうだめ。体力の限界がきました。
と、尻餅をぺたん。
「あ、あう……」
目を閉じました。
前衛の皆さんは、とても戦闘スキルが高いです。ギルド選りすぐりの天才たちです。その上、旅の日々の戦闘で鍛えられているのですから。
一方のわたしはこんな有様。
「……」
気がつくとどっと笑いが起きました。
あれ?
「エレーナ、もう死んでるよ」
よくよくみると、もう魔獣たちはパーティーの皆さんがやっつけたようで、静かになっています。
首を突っ込んでいた小型竜も最後の断末魔をあげていたようです。
すごい。
周囲には息耐えた小型竜の死骸やら、オークやら。
生きている魔物の姿はありません。
皆さん、いろいろと個性が強い面はありますが腕は確かです。
「いやーシルヴァもお疲れさん。結構魔力使ったろう?」
戦闘を終え勇者様がやれやれと手袋を外して汗を拭います。
「なんの、これぐらい全然ですよ」
「もっと手ごたえがほしいところだけどねえ」
戦いを終えて安堵の息混じり。
経験を積むに従って皆さん、強さを増しているようです。
「皆さん、お見事です!」
私も精一杯の賛辞を送ります。
またまた皆さん苦笑い。
わたしは全くいいところ無しというかびっくりするほどの役立たずでした。自覚しています。
そして。
魔獣との戦いが終わると、私の仕事がようやく始まります。
「あ、竜の牙やオークの角はーーきっと高く売れます。これ、竜の爪は薬の原料に……」
ナイフを取り出して、素材になりそうなものを切り出します。
魔物の死骸を一体一体厳しく品定めをしてゆきます。
こっちの世界は商業スキルを学んだので多少は目利きはできます。
「そつがないねえ、エレーナ」
「さすが商人魂ですなあ」
いただくお言葉は、誉め言葉と受け取っておくことにします。
「まったく……」
マリーさんなんか、あの厳しい目。まるで金の亡者をみるようなーー。
まあ実際そうですから気にはしませんけど。
戦闘で貢献できない私はこういうところでしかお役にたてません。
テキパキとアイテム袋の中に入れていきます。
一通り、倒れてる魔物の遺骸からお金にできそうな部分を抜きとり終えます。
「しっかし、こんな街の近くでも魔物がでるようになってきたんだな」
「いよいよ、魔王の復活も近いようですね」
「もっと、とんでもなく強いんだろうね」
皆さんいつか乗り込むであろう魔界に思いを馳せています。
まあ、下級スキルのわたしはそこにはきっといないことでしょう。
それまでわたしはわたしの役割を果たすだけ。
魔界なんてわたしには縁がありません。




