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18 勇者様との旅? 関係ない。

 ところでこのアイテム管理の職、魔王討伐に必須なスキルでは無いので幅広い知識と才能を持つ方がこの先メンバーに加わった場合、必要なくなります。

 レベル上限15ぐらいで成長が打ち止めになるような職種。

 でもこの世界、女の身でもそれなりにやっていくにはスキルを持たなければいけません。持って生まれた能力、この職種を選ばざるを得ませんでした。

 

 以前はかつて元の世界でやったゲームのように戦士や魔法使いに憧れていました。

 杖から炎をばあーっと出したりしたかったです。

 けれどもこっちの世界に転生してもわたしは、華々しさとは無縁。

 能力面ではやっぱり特別なスキルは神様から持たせてもらえなかったようです。

 とにもかくにも一応能力は持っていたので、孤児院を出て以降は、道具士として商業関係のギルドに登録して働こうということになりました。



 さて、次にお話するのは、勇者様一行のメンバーとして故郷グラスタニアを旅立つことになった経緯です。

 一年前のことです。

 わたしは、道具士としてのスキルを一通り身に着けた後、グラスタニアで最大の貿易商、グリンパース商店で住み込み奉公をしていました。

 商人の目標はいつか一人で店を持つことです。

 商人と一口にいっても、さらにその内部には古物商、穀物の取り扱い、宝石を専門に取り扱う商店商会がありしましたが、道具士は行商人が一番近い職業、商売ということになるので、ゆくゆくは各地を行商して渡り歩きます。

 世界各地から様々なものを総合的に取り扱う貿易商の元で修業に励むことにしました。

 悪魔憑き、前世云々はとりあえず、脇に置いて。

 そしていつか独り立ちをすべく仕事に励んでいました。

 商店の経営者十五代目グリーンパースさんは、篤志家でもあり、組合長を務めていたので、結果的には良い選択だったと思います。


 そこでは仕事を手伝いつつも衣食住と商売のための経験を積ませてもらえます。そのかわりに、給与は雀の涙ほどですが、居場所はなんとか確保。

 一応満足はしていました。

 もっと前世で簿記や会計の勉強をもっとしておけば良かったと思いました。前世の知識を生かせるチャンスも無し。


 とはいえオーソドックスなルートに乗ることはでき、やがていつか商売人として独り立ちできるように、修行を積むことになりました。

 前世も社畜サラリーマンでしたが、特にこの世界では使われる身では、いつまでたってもその地位は考えられないほど低いままです。社畜どころの話ではありません。

 なのでいつかは独立してお店を持たないといけないのです。

 基本的に一年にお休みは一日二日しかありませんしね。

 労働法なんてありません。




 そして数年経ったある日。

 グラスタニアの商人組合はある噂でもちきりでした。

 数百年の時を経て再び魔物が跋扈し始めた昨今、我がグラスタニア王国も勇者一行を編成し、魔王討伐への名乗りをあげる。

 グラスタニアは辺境の小国ですが、大昔にやはり地上に攻め込んできた魔王に対し、古の勇者一行が倒した際のメンバーは元々グラスタニア出身だったとか。

 なので、その界隈では一目おかれるのだそうです。

 この1000年ぶりという大役が正式に、王国から直々に依頼がきたそうです。

 商人組合から道具士を推挙するとなって、私の奉公している商店でも組合でも噂で持ちきりでした。

 一体誰がこの名誉ある旅のメンバーに加わるのか。

 最終的には組合長が選びますが、特に若い男の子たちはもちきりでした。

 勇者様と共に旅をする。その文言に惹かれたようです。 


「たき火を囲んで、その日魔物を倒した時の、歓喜を語って、明日に何が待ち受けるか胸を躍らせるんだ」


 男の子はやっぱりいくつになっても冒険というものに心躍るようです。


「そんなもんですか」


 わたしはやる気がありませんでしたので、ただふんふん聞いているだけでした。


「そっか、女のエレーナは男のロマンがわからねえからな。未知の世界へ期待に胸を膨らまないのか?」

「胸なんて膨らまないですね」


 わかり過ぎるから、お断りしたいのです。

 かつてわたしは、小学校の教室で、勇者ごっこをして女子を困らせ苦笑いされ、白い眼で見られました。

 痛い過去は封印したいのです。


「そうだな、エレーナだもんな」


 どっと笑いが起きました。

 はいはい。エロジョーク。いちいち気にしません。


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