表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/98

17 わたしの転生人生をみよ

 中学校の修学旅行夜のようなイベントは終わり、野営の夜も更けました。

 あれから、寝る間際、時折わたしをチラチラ勇者様が見ていました。わたしがぶちまけないかどうか気になっていたようです。

 けれど、わたしが約束通り話さない様子をみて、安心をしたようです。

 寝床に入って寝られました。



 夜。

 交代で見張りを立てながら過ごします。


「エレーナ、順番だよ」


 頬をぺちぺち叩かれて起こされます。


「ん……」


 真っ暗な中、手燭に映し出されたルビーさんがいます。

 炎の明かりに赤い髪がさらに赤くゆらゆら。

 一時間ぐらいずつ交代で見張りを立てます。

 その番はわたしにもまわってきます。


「ふわ……もう……ですか」

 

 大きなあくびを一つ。

 さっき寝たばかりのような気がします。

 誰かちょろまかしてる気がしないでもないです。

 本来なら一晩に一回か二回ぐらいのはずなのに、五回も六回も番が回ってくるのは何故でしょう。


 またあくびを二、三度しながら、見張りの場所へ移動。

 夜は本当に心細いです。

 雲がかかると月も星の光もなくて、真っ暗闇。

 灯りは焚火だけ。

 焚火に薪を投入するとパキンといい音を立てます。

 空を眺めると雲の合間からも、それはそれは綺麗な天の川が見えます。

 もったいないぐらいです。

 こちらでも同じ銀河系なにかはわかりませんが。



 さて、そろそろ私の紹介も詳しくしておかないといけないでしょう。



 改めてですが、わたしのこの世界での名前はエレーナ・カタリスという名前ですが、もう一つ、誰にも知られていない、わたしだけの記憶があります。

 生年月日も覚えています。

 昌和六十年10月10日。体育の日と同じでした。

 34歳まではごく普通のサラリーマンで過ごしてきました。

 独身でしたが、それほど辛く苦しいというわけではありません。

 会社では事務職で色々渡り歩いてきました。

 あの日は少しだけ残業をして、一人暮らしのアパートへ帰る途中、立ち寄ったコンビニで弁当を買ったまでの記憶はありますが、その後のことは覚えていません。

 最後に見えたのは、道路を歩いていたら、突然まぶしい光が目の前にぐわっときて。

 あまり死んだって感じがしていませんが、多分死んでこの世界へエレーナとして転生したのだろうと思っています。

 唯一の救いは親より先に逝ったわけではないことですが。


 ともかく気が付くと私はこの世界の人間として生を受け暮らす存在になっていました。

 グラスタニア王国の孤児院に暮らす少女エレーナとして、前世の記憶とが目覚めました。

 孤児院での話は以前したかもしれませんがーー。


 孤児院自体は結構しっかりしているところでしたので、最低限の衣食住と教育を受けさせて頂きました。

 決して悲惨だったわけではなかったです。

 ただ。前世のせいで悪霊憑き呼ばわりされた後は、変わり者としてあまり異性とも同性の友達も多くはありませんでした。

 また当初、元の世界とこちらの世界での自分の性が違うことに戸惑うことが多々ありよく苦労しました。

 そちらの話を一々し始めると、これまた大変な時間を割くことになるので、ここではしません。

 とりあえず話しておくとすれば、悪魔憑きと呼ばれてしまう前世のことはとりあえず隠すため、感情を極力表に出さないようにしたこと、そのせいでどうしても完全な女性になりきれなかったこととで、中途半端な状態になってしまいました。


 成長するにしたがって徐々にこの世界の情報もわかってきました。

 アリナシス大陸という地で、その中に存在するグラスタニアという国であること。

 そしてーーここが剣と魔法の掟で成り立つファンタジっくな世界であること。

 これらのことがわかってきました。


 孤児院での日々は貧しくもそう悪いものではありませんでしたが、残念ながらそこも10か11歳ぐらいで、独り立ちです。

 何か手に職をつけて一人で生きていけるように、ならなければいけません。

 でなければ、男の人と結婚して温かい家庭を設ける、ということしかありませんが、前世が男だったことから、それはやりたくありませんでした。

 またその頃は悪魔憑きの評判も結構つきまとっていて、縁談が持ち込まれる、なんてこともありませんでした。それはわたしにとってはかえって好都合でしたけどね。


 なので自分に適した職を探すことにしました。

 ただし、この世界は王侯貴族を頂点に民衆の職業はガチガチに決まっています。

 魔法や法術、冒険者といったこの世界特有の専門職業もありますが、そういう夢溢れる職につけるには一部で、ほとんどの人はなにがしかのごく普通の職業ギルドに所属します。

 かなりのギルド社会です。

 そして自分が一度所属したギルドからは抜け出られませんし、職業選択の自由もありません。

 さらにギルドの様々な掟がありそれに縛られるのです。

 そうでなければアウトローになるしかない世の中です。




 この世界の人間は魔法や法術など、特殊なスキルは基本持って生まれるものという考え方が前提にあり、その才能によって育てられていきます。

 孤児院でも一定の年数が立ったら自分に見合った仕事を見つけて巣立ちますが、特に才能を見いだされた子は、各特殊ギルドに引き取られます。

 戦士、魔法使い、聖職者。諸々ありますが、そういう子は真っ先に、そういった団体に引き取られて所属することになります。



 特殊な技能、魔法や法術などの技能を持っていなければ、農夫、パン屋、鍛冶屋など見合った仕事にそれぞれ引き取られていきます。

 残念ながら、わたしには魔法などの特別な能力はありませんでした。

 いろいろな職業を探っていた末に、アイテム管理のスキルがあることが判明しました。

 商業関係で必用とされるスキルだそうです。


 手っ取り早く言うと、アイテムの管理と金銭の管理。

 特殊能力として、道具袋という4次元ポケットのような袋を持っています。

 武器でも防具でも、大事な××も、この袋に入れると、あら不思議。

 なんでもいくらでも入ります。(上限500個まで)

 鍛錬を積むと数が増えます。

 また入れた本人でしか操作できません。


 旅に必要な武具、防具、それに貴重なレアアイテムを入れることが出来るので、一応勇者様の旅に必要な能力とされています。

 それがために大した能力ではないのですが、この職種をもって一行に加わっています。


 ただし、それ以外何の能力もありません。


 道具士は、元々は行商の旅に必要な職として採用されており、世界をまたにかける行商人はこの能力を持つか、雇うことが必須になります。

 概ね商業に近いスキルとされていまして、このスキルを持っている人はこの界隈に身を置くことになります。

 私自身も王国商工組合の行商支部に所属していました。

 仲間の大切なものを預かるのですから、預かった本人が不正を働くことは厳罰に処せられます。死刑にはなりませんが、ギルドから追放。

 ただし、ギルドから追放されるということはガチガチのギルド社会、職業選択の自由や労働法のないこの世界では、社会的な死を意味します。やり直すことは非常に困難、やばい裏か業に手を染めるしか道はなくなります。

 需要はある職種です。

 ついでに商取引の習慣や修行をするので、そちら方面でのサポートをします。 

 そのため帳簿の管理も必須です。


 以上がわたしの半生。まあ何の夢も何もない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ