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13 今夜は楽しい野営

 なお、この日は結局目的となるシエレンの街に着くことができず、野宿になりました。


 そうと決まれば早速準備です。

 凶暴な魔物がウヨウヨしている一帯ではありませんが、それでも野営には一定の危険が伴います。

 寝込みを襲われるのが人間の一番の弱点なのは言うまでもありません。

 

 特に夜に集団で襲撃されるのが一番危険。

 なので、見通しが良くてかつ、守りやすい地形。

 逃走する場合の経路も考えておく重要なポイントです。

 魔物だけではありません。盗賊の襲撃もあります。

 この辺りのことについて、わたしたち一行は経験を積んでいて、ノウハウを拾得しています。

 さんざんこき下ろすようなことを言っていますが、決して無能なメンバーではありません。

 改めてメンバー紹介です。

 王国から召し出された勇者様

 冒険者ギルドから派遣されたルビーさん。

 魔法使いのシルヴァさん

 聖職者マリーさん。

 皆素晴らしい能力の持ち主です。

 なお脱落者一人。

 

 商人ギルド(正確にはグラスタニア商業人組合行商人第二支部)から参加してる金銭及びアイテム管理役のわたしとは偉い違いです。

 まあ、勇者様の魔王討伐の旅とはいえ、当面、お金や各種アイテムの管理。お役目を任されていることは名誉ではありますけど。


 いずれにせよ、大したスキルを持ち合わせていないので、炊事洗濯などの雑用も私の役割です。勇者パーティーの下位職はこういう時に頑張らないといけません。

 力仕事はもちろん手伝ってくれますが、お膳立ては私です。

 携えていた食料と水を汲んできて、薪を拾ってきたら準備開始です。


「すいませーん、その釜、こちらに持ってきていただけますか?」


 火種を薪に投入して火を起こします。

 スープと穀物の粥を造るためです。

 包丁も握れなかった私が、なんとアウトドア派に変わったことでしょう。自分でもびっくり。

 まあ基本全部温めるだけの携帯食なんですが。


「じゃあエレーナ、行ってくるからな」


 勇者様は近くの湖畔で釣りをしてくるといって一人で出かけてきました。

 魚や狩りで獲物が捕まえるときは、一緒に調理することもありますが、そう簡単に捕まえられるものではありません。


「お気をつけてください」


 期待しないでお待ちしています。

 こちらは自分のやるべきことに専念。


「ふうーふうー」


 必死に筒を使って空気を送り込みます。

 火を起こして炊事に勤しんでいると、野営用のテントを作り終えたルビーさんとシルヴァさんが声をかけてくれました。

「手伝おうか?」

「一人だと大変ですよね?」

「どうぞお構いなく」


 お二人とも優しいので、私を気遣ってくれます。

 もう一方。


「偉大なる神、アシュリス様……わたしたちを守護したもうた感謝をここに……」


 マリーさんも一日無事に過ごすことができた感謝のお祈りを私たちのぶんまでしてくれていました。


「……」


 決してさぼっているなんて思わないですよ。こっちの世界では信仰、宗教は大事ですからね。


 やがて夕食が完成しました。簡単な食事でも何かをお腹に入れると幸福になるのは、向こうの世界でもこちらの世界でも同じです。

 勇者様もつり道具を持って帰ってきました。


「お、いい匂いだな」


 出て行った時と同じ手ぶら。

 残念ながら釣りの獲物は無かったようです。

 たき火を囲んでの夕食をしながら、この後の予定を話し合います。

 襲撃があった場合の対処方法と不寝番の順番。トップは決まってわたしです。

 さらにシルヴァさんが魔法による結界を造ってくれました。

 これで魔獣諸々の夜襲は防げます。


 そしてくつろぎの時間は過ぎてゆきます。


 勇者様は星をみるとかいって席を途中で立ちました。

 うーん、まだ残っているのに、おかわりはなしですか。

 わたしたちパーティでは、残った分は勇者様、という暗黙の了解があり、「どうぞどうぞ」と譲り、嬉しそうなお顔を拝見するのが、日課だったのです。

 去っていく背中を見つめます。

 その姿は暗闇に消えていきました。

 残ったものはルビーさんが引き受けてもらいました。


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