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魔族王子と迷宮探索

 手違いで書き貯めのものが投稿されてました。

すみません……。

 そして、遅れてすみません。

 これからは仕事が休みの日に書いて投稿しようと思います。

 更新頻度は下がりますが、それでも見ていてくれたら幸いです。

 これからもよろしくお願いいたします。

 迷宮探索まであと1日。

 ……なのだが、実はもうあと数時間程度しか今日は残っていなかった。

 理由は単純明快だ。

 魔族である俺が、久しぶりに寝坊をしてしまったのだ。起きてみたら、夜だった。帳が落ち、空が暗黒に染まった頃に俺は目を覚ました。


 この寝坊の心当たりはある。

 昨日、夜中だというのにガミガミとシオンに絞られたからだと思う。

 正座で3時間程の間、俺の部屋で説教を食らったんだ。足も痺れて大変だった。

 内容は、まぁ言わずもがな、そういう店に入るなというものだった。イメージダウンや黒い噂などが漂う勇者パーティーに人間の希望を任せていいのか、なんて事を散々と言われた。


 そりゃあ、俺だって悪いとは思った。無理矢理つれて来られたが、すぐに帰ろうとしなかった事も悪いと思う。最後の方には、ユーラとの誤解を招きかねない出来事もあったし、反省はちゃんとしております。


 でも、流石に懲役約3時間の正座は魔族の体でも応えるんだ。寝坊したことをどうか誰も咎めませんように……。


 さて、眠りから覚めた俺は、とにかく1階に降りて食事を取った。カウンターで受付をしているリラちゃんは、一見して普通に見えたが、『あんまりシオンお姉さんを心配させないでよね』なんて釘を刺された。


 ……そうだよな。シオンが一番――それこそ、どこかの国の王様よりも人間の将来について考えている筈だ。勇者という肩書きを一番重く思っているのは本人だ。

 俺は人間ではないが、それでもシオンはそんな俺ですらも仲間として見てくれている。確かに、不用意な行動は彼女の名前に泥を塗る行為だ。軽率だった。

 もう少し、考えて行動しよう……。



 そんなことを考えながら、俺は一人で夕食を食べた。

 勇者は外出しているらしい。リラちゃんからそう聞いている。もう夜だが、何かの買い出しだろうか。

 

 夕御飯を食べ終えた俺は、少し夜風に当たりたくなって外に出た。


 あまり知られていない、お気に入りの絶景スポット。宿屋の裏手側にある、使われなくなった公園跡地だ。元々、少し高い場所にあったこの公園跡地は、位置的に通りの風景などが綺麗に見えた。オレンジに光る街灯や、家や店などから発せられる光が、視界に映る風景を彩っている。

 俺はよく、何かを失敗したりして気持ちが落ち込んだ時、ここに来る。誰も居ない、俺だけが知っている場所。自然と心が安らぐ場所。


 俺は通りの方を見ながら、ふと呟く。


「……これから、どうなるんだろ……」


 無意識に呟いてしまった言葉。

 その意味を少し考えてみた。

 魔族の王子なのに、勇者パーティーに入って魔王を倒しに旅をする事になって、そして今の目的はかつての師匠が管理する迷宮を踏破しに行く事。


 旅は何が起きるか分からないとはよく言うけれども、正しく本当に何が起きているんだろう。今でも実感なんて湧かないさ。

 俺が選んだ、この道が正しい運命の道なのかも分からない。

 魔王を1発殴りたいからって、だけで魔族を止めたと言っても過言じゃない。それが、俺のやりたかった事だとしても、間違った道なのかもしれない。

 夜風に当たり、一人でそんな事を考えた。


 コツコツコツ、と足音が聞こえた。

 後ろからだ。

 俺は反射的に振り向いた。


「……ユーラ?」


「こんばんは、ゆーくん」


 そこに居たのは、ユーラだった。

 昨日と同じ、胸元が際どく透けるタイプのドレスを着ている。


「どうしたんだ? こんな場所なんか来て。てか、店はどうしたんだ? その服、店用のだよな?」


「大丈夫だよ、少し休憩してるだけだもん」


「休憩って……結構店から離れてるけどな、ここ」


 俺がそう言うが、ユーラは気にせず足を進める。俺の隣までやってくると、手摺に腕を乗せて通りの方に視線を向けた。


「その手摺(てすり)、錆びてるから汚れないように気を付けなよ」


「うん、知ってるよ。大丈夫」


「知ってる、のな。俺以外にこの場所知ってる人っているんだな」


「うん、そうだね。私もさっきゆーくんが居たことに驚いたよ。この辺は民家も無いから、この場所を知っているのは私達だけかな」


「だろうな。……ここにはよく来るのか?」


「うーん、そこそこ。気持ちを落ち着かせたい時とかによく来るよ」


「俺と一緒だな」


 言葉が無くなった。

 会話がそこで途切れ、沈黙が続く。

 沈黙という雰囲気が好きではない俺は、どうにか言葉を捻りだした。


「――なんだ、その、悩みがあるなら、俺でよければ聞くぞ」


「……優しいんだね、ゆーくん。でもね、私の悩みはゆーくんじゃ答えられないかな」


「わかんねえぞ。意外にぽっと出の意見が正しい時だってあるからな。遠慮すんなよ」


「……あれ、ゆーくんって、そういうの相談に乗ってあげるタイプの人なんだね。あんまり人付き合いとかと距離を置いている感じがしたけど」


 ……確かに、シオンに毒されているのだろうか。前の俺なら、何も言わずに立ち去っていたのかもしれない。

 あまり、喋りすぎると秘密がバレてしまう可能性もあるからなぁ。

 というか、なんでユーラは俺の性格を答えられるんだ? 昨日だけで俺の性格を分かりきれるものなのだろうか? そりゃあ、洞察力が無いと、あの仕事はダメかもしれないが……。

 ―――って、考えすぎ……か。


「俺もさ、少なからず、周りに影響はされてるんだよ。俺じゃなくても、誰かに話せればスッキリする事もあるから、周りを頼ってみてはどうだ?」


「……うーん、そうだね。確かに一人では抱え込めない悩みだからねぇ」


 すると、ユーラは俺の方を向き直して、真剣な……だが、どこか切なそうな顔をしてこう言った。


「もし、これから私がわがままを言ったら、着いてきてくれますか?」


「……内容による。けど、知り合えたのも何かの縁だし、できる限りはしてやるよ」


 質問の深い意味なんて考えず、俺は頭に浮かんだ言葉だけを話した。

 すると、ユーラは笑いながら、話を返した。


「…………ふふっ。そっか、分かったよ。じゃあ、どうか『その時』になったらゆーくんは、私を助けてね?」


 ごめんね、休憩が終わっちゃう。なんて言って彼女は去っていった。

 ……風のような人だ。未だに、彼女が本当に何を伝えたかったのかも分からないままだし。

 『その時』とは、いつの事を差しているのだろう。次に客として店に入った時だろうか。そして、どんなわがままなのだろうか。

 何もかも分からなかった。が、彼女が何か大きなものを抱え込んでいるのは分かった。


「……はぁ。なんか、最近はえらいハードな生活を送ってる気がするなぁ。ま、これも経験か。明日は迷宮探索か。シオンの力なら最下層まで簡単に辿り着けると思うんだがなぁ。問題はそこじゃなくて、迷宮主の師匠なんだよな……」


 ここ最近で一番の悩みの種である、俺の師匠――フィルナ。

 戦い合うのは得策ではない気がする。何とか話し合いで解決できないだろうか……。無理か。魔族と勇者という、水と油の関係のように互いに反発するのが族の定めか。

 悩んでいても仕方がない。のは、分かっている。


 はぁ……と、もう一度溜め息を着くと、俺はその場から離れた。

 もう、なるようになれ、だ。

 勇者の力を侮ってなどいない。それ以上に師匠を意識しすぎているのかもしれない。力量なんて、そんな曖昧なものは実際に戦ってみないと分からないものだ。人数差はこちらの方が上。十分に勝てる未来は見えている。


 だけど、何かが胸をざわつかせているのは、果たして杞憂なのだろうか。






      ◇







 迷宮探索当日。

 街の南門に、俺とシオンは立っていた。

 隣に立つシオンは、先程配送されたばかりの防具を装備している。3日前に見たきりだが、久しぶりという感じがしてやまない。ここ最近はずっと私服だった反動か。


「……なぁ、シオン。その、軽率な行動をして悪かった。本当は昨日言うべきだったんだろうけど、シオンと会えなくて今言うよ。本当にすまなかった」


「……その事なら別にもう気にしていない。次からは気を付けてくれたら、それでいい。まぁ、その話はもう忘れてくれ。今日は迷宮探索だ。頭に余裕が無ければ冷静な判断ができなくなる。だから、しっかりと気合いを入れておいてくれ」


「……ああ、分かった。今日は――いや、これからよろしく頼む」


 そんな言葉を言う。

 そして、内心で気合いを入れる。

 今日戦うのは魔族だ。それも、とても強力な力を持つ者。そして、自分自身の師匠だ。

 一切の迷いを捨てよう。

 フードを被るにしても、バレてしまう可能性は大いにある。それでも、俺は師匠と戦えるのか。それを今ふと考える。


 ――大丈夫。昔の幼い俺じゃない。

 ――もう力が無かったあの頃じゃない。

 出来る限りの事をしよう。

 今回は上手くいく。勇者もいるし、パーティーの戦闘力は充分過ぎるはず。

 ――心配は、していない。


 そして、俺達は馬車に乗る。

 馬車はゆっくりと進んでいく。

 迷宮がある、森の奥まで……。








     ◇






 その迷宮は、洞窟のような場所だった。トンネルのような大きな入り口は、口を大きく開けた化け物のように感じてしまう。

 俺は一瞬、たじろいでしまったが、勇者の表情は真剣そのものだった。

 装備の音を鳴らして、俺達は歩き出す。


 迷宮内は、やはり魔物がいる。

 そいつらは、骨や死体のような姿をしており、外ではあまり見かけないような容姿だった。

 だが、勇者の前にはあまりにも非力すぎた。

 技や魔法を使うまでもなく、剣の一凪ぎによってバラバラになる。不死作用はその魔物達には無く、バラバラになってやがて灰になって消えていった。もしかしたら、勇者の剣には浄化か何かの能力が付与されているのかもしれないな。


 そして臆する事なく、俺達は歩く。

 周囲に気を使いながら、一歩一歩歩いていく。


 途中、槍が降ってきたり、オブジェだと思っていた甲冑が襲いかかってきたりと、トラップは多々あったが、それを難なく乗り越えている。勇者は危険察知の能力でもあるんじゃないかと疑う程だ。


 ――が、その時に事件は起こる。

 余裕だな、と安心していると、ふと俺が踏んだ地面からガコッと音が聞こえた。

 なんだ? と思う間もなく、俺は落下していく。刹那のごとく、浮遊感が俺の体を支配した。

 どうやら落とし穴があったらしい。勇者が驚愕の表情で振り返るが、もう遅かった。

 ヤバい、と思った時には勇者の顔は見えなくなった。というのも、落とし穴が完全に元の地面に戻ったのだ。勇者もこの落とし穴に飛び込む勢いだったため、犠牲は少なくて済みそうだ。


 落とし穴は横幅が狭く、方向転換をすることさえできない。そのくせ、穴の壁には摩擦力を高めるような魔法が施してあり、落下の速度と合間って、触れると摩擦で手が燃えるような痛みを感じる。これは迂闊に触れない。


 下には何があるんだろうか。

 剣山だろうか、それとも毒の沼だろうか。はたまた、巨大な魔物が口を開けて待っているのだろうか。

 考えても仕方がないが、恐らく俺はもう助からないだろう。

 クソッ! ここからだってのに、もうリタイアしてしまうのかよ!


 俺は自分自身の運の無さを呪った。

 あの部分の地面さえ踏まなければ……という結果論が脳裏をよぎる。


 そして、ようやく落下地点が見えてきた。

 巨大な魔物の背中が見える。

 ああ、やはり魔物か。最後の最後まで運がない。

 今からでも、舌を噛んで死んでやろうか。

 魔物の餌になるくらいなら、自殺した方がましだろう。

 俺は落下しながらそう思った。が、落ちるスピードは思ったより早かったらしく、真っ直ぐにその魔物に俺は落下した。

 何かと弾力はあるらしく、その背中で俺はバウンドして地面に頭から落ちた。


「ぐえっ!」


 なんて間抜けな声をあげる。

 痛みが遅れてやってくる。バウンドしたとはいえ、落下の衝撃はあった。


「ああ、クソッ! 最悪な1日だ! だが、ただじゃ死なねえぞ! お前1匹ぐらい道連れにしてやる!!」


 俺はすぐさま立ち上がり、巨大な魔物に向かって叫んだ。

 が、奴は俺の事を見向きもせず、また反応もない。

 その熊が四足歩行の状態の時に似た大きな魔物は俺を視界に入れず、ただそこにいるだけだった。

 とても、不気味だ。俺程度なら相手にすらならないのだろうか。それとも、この部屋には何か仕掛けがあるのだろうか。


 辺りを見回す。

 わりと大きな部屋だ。光源は壁にある松明だけ。本数は少なくないが、明るいとはあまりにも言えない。

 鉄格子が4つ程ある。

 その中には宝箱があり、中には金の山がある。

 他には、先が暗くて見えないが、道が1つだけ続いている。


 ここは……宝物庫ほうもつこだろうか。すると、さながらあの魔物は宝物庫を守る番人だろうか。だから、宝箱に手をつけなければ襲ってこない……のか?


 今の俺の思考回路はクリアだ。

 だが、単純に分からない事が多すぎる。理解に苦しむ、とはこの事を指すのだろう。


「……道連れ、ね。私としてはあなたには死んでほしくないの。考え直してくれるかしら?」


 その声は、暗くてよく見えない道からきこえてきた。

 近づく足音と共にその人はやってきた。


「……昨日ぶりだね、ゆーくん」


「…………ユーラ? なんでお前がここに……」


 ユーラだった。

 服装はドレスではなくラフな格好だったが。

 だが何故、彼女がここに? 似ても似つかないような人なのに。


「……そっか、まだ気付かないんだ。このニブチンさんめ。私はそんな子に育てた覚えはないんだけどな。じゃ、特別サービスね。この姿、わりと気に入ってたんだけどな……」


「……お、お前何言って……」


 ぐるぐると巡る思考回路をよそに、ユーラが光出す。眩しくて目を覆ってしまう。覆った手をどかす。

 そこに居たのは――銀色の短い髪、深紅に染まった大きな赤い瞳、世界中のどんな男性も魅惑するような華奢な体に露出の多い服装。そして、悪魔のような羽と尻尾。


「……こんにちは、ゆーくん。私を覚えてる? 君の回復魔法の師匠、フィルナだよ」


「……そんな、嘘だろ……?」


 そこに居たのは忘れもしない、幼少の頃からの俺の師匠。

 地獄に咲く花と言われた――フィルナ、その人だった。






 

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