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魔族王子と奴隷商人

失踪未遂すみませんでした。

またボチボチ書いてきますので、よろしくお願いします。

すみません、タイトルミスってました!

 張り切ってやってきたのは、先ほど確認したばかりの奴隷商の店だ。

 通りの奥の方で大きなテントを張った店なのだが、中に入ると見た目以上に大きいのである。

 商人ギルドの顔であるロイズを流石にこの中に入れるわけにもいかないので、俺とカリーナとフウリンだけで入っていく。ロイズを見て怪しまれたりすれば、得られる情報を秘匿する場合があるしな。

 ちなみにだが、下見の時もそうだったのだが、勇者パーティの手の者だと思われるのを防ぐため、ローブについているフードを各自深くかぶっている。似顔絵は大陸中に広まっていたが声だけで判断できる奴は流石に居ないだろ。


 店に入ると、すぐに気付いたこの店の店主が作り笑いを浮かべながら近付いてくる。

 沢山の宝石がついた豪勢な服を着た、中年で低身長の男がこの店のオーナーである。


「おお、これはこれはお客様、向こうの奴隷商よりもこちらの方が質がよろしかったのですか?」


「そうなるな。早速で悪いが、この店でオススメの奴隷とか紹介してくれないか?」


「かしこまりました。まずはその檻の中にいる彼女からお話致しましょう。彼女はミーラと言い、猫人族の戦士です。戦いの才はあったものの、ギャンブルで破産し奴隷落ちとなった経歴でございます」


 彼が手を向けた先には筋肉質で長身の奴隷。商人の言うとおり、猫人族の特徴である頭の上にある二つの大きな耳と、ボロキレ同然の質素な服からちょこんとはみ出たヒョウ柄の尻尾、それらを兼ね備えた彼女の見た目は奴隷というより傭兵に近かった。

 俺はすぐに視線を戻し、商人に告げる。


「そうか。値段は?」


「はい。金貨100枚でございます」


「5年は遊べるぐらいの値段か。もちろん、その値段は見合っているんだろうな? 下手な引っ掛けや駆け引きはやめておけよ」


「滅相もございません。先程話した通り戦闘のスキルや魔法を多く覚えており戦闘面ではもちろん、その美しい美貌で夜のお供にももってこいでございます」


「だ、そうだ。フウリン、どうだ?」


 後方で控えさせておいたフウリンを呼ぶ。

 天然のウソ発見器だということを知らない商人は首をかしげる。


「そうですね、見た目はともかく戦闘面ではかなりの手練れなのは確かですね」


「ええ、それはもちろんでございます」


 だが、そこでフウリンは不敵な笑みを浮かべるのだった。


「でも、話していないことはありますよね?」


「……い、いえ、それは……」


 言い淀む商人。

 ここぞとばかりにフウリンが責め立てる。


「そうですね……たとえば、このお姉さんの前科とか?」


「っな……!?」


 おっと、この反応、ビンゴっぽいな。

 ちなみに奴隷の猫人族の女性はなにも反応していない。冷静なのか、奴隷の契約のせいなのかは定かではないが、こちらを向く事無く鎮座している。


「ミーラ、でしたっけ? そうですね……遠くの街にて、こちらの女性と同じ名前の方が所属していたギルド内で暴行事件を起こして捕まったという噂がありました。確かその方も猫人族だったかと思いますが、まさか同じ方ではないですよね……?」


 鋭く光る彼女の眼は、獲物を前にした肉食獣のそれと大して変わらない。

 後方待機のカリーナがこの光景にドン引きしている。

 無理もない。三十代後半の男をゆする十代の少女、なのだから。

 それにしても、フウリンの情報収集能力はすさまじいな。国家が持つ諜報員といい勝負、いやそれよりも優れていそうだ。


「…………すみません、その話は手続きの最中に言わせて頂くつもりでしたので、話しておりませんでした」


 商人の額から垂れ落ちる冷や汗からでも嘘だと見抜ける。

 最初から言うつもりなんてなかったのだろう。

 カリーナの眼光を見て嘘はつけないと判断したのか、商人は言い訳とともに自白する。

 だが、前科を隠していたとなると、この商談は俺達側に大きく傾いただろう。


「それは……立派な詐欺罪じゃないのか?」


「さ、詐欺なんてとんでもない! こちらはそんな気など……」


「そんな気なんてなかったと? さっきの会話を聞いてそれは無いんじゃないのか?」


 みるみる顔が青くなる。


「前科持ちの奴隷が金貨100枚か。随分と言うじゃないか。前科持ちの奴隷の相場はもっと低いはずだよな?」


「私が確認できている中での最高額は……どれほど美人でも金貨10枚ぐらいですかね。ああ、その方は前科持ちのエルフ族の方でしたけど」


 美しい美貌を兼ね備えたエルフ族ですら、犯罪を犯したことのある犯罪奴隷は安くなる。

 その理由に、あらゆる街において、行動の制限が課せられるからだ。

 たとえば、各ギルドからの仕事の斡旋が出来ないだとか、犯罪奴隷を同行させた場合の報酬の半分以上がその街への寄付に変わったり、あとは維持費が大きい事も挙げられるか。犯罪奴隷は1年に3回、罰金額と同量のお金を人間国最大の都市【帝都ゲリュシオン】へと納めなければならない。主がいない場合は奴隷商人がその役を担わされているからか、このような犯罪奴隷は相場が安いし、そもそもデメリットの大きい犯罪奴隷を売ろうとも思わないだろう。実は犯罪奴隷が市場に出るのは大変稀である。


「……金に目が眩んだな」


 ぽつりと呟くと、商人は俯いて喋らなくなってしまった。

 潮時だな。


「勘違いしてほしくはないんだが、俺は別にあんたを罰しようとは思わない」


 そう言うと、商人は俯いていた顔をあげた。

 ぴくっとフウリンが少しだけ反応したが、実は嘘はついてない。嘘はついて無いからこそフウリンは俺の言葉を怪しんだのだ。もしかして、この方を見逃すのですか? と彼女は内心思っているのだろう。

 前提なんだが、俺は俺達を舐めてかかったこの商人を許すつもりはさらさらない。

 だからこそ、こいつが詐欺罪ごときで許すわけにいかない。そう、こいつがもし裏で闇奴隷商と関りを持ってるならば、そんな小さい罪で許してやるものか。

 まだ見極めが出来ないのだから、今は泳がすしかないのである。


「いや、違うか。それを決めるのはあんたのこれからの行動次第だな」


「そ、それはもちろんです。ミーナの値段は適正価格以下で提供させていただきます。また、他にもお望みの奴隷がおりましたらお値引きさせていただきます」


「ああ十分だ。では早速取引に取り掛かろうか」


「…………はい」


 そしてこの商談は常に俺達のペースで話が進み、目的の物以上の収穫があった。

 結果を見ると、格安で亜人族の手練れの奴隷を確保。前科持ちだろうが、非公式のこのパーティーに関係ない。さらに、奥の部屋にいる訳あり奴隷を何人か見繕ってくれることになった。

 まあ訳ありと言うだけあって、病気持ちやら身体を欠損していたりと表の品に出せない奴隷を指すのだが、まあそこまで高くない。つかぶっちゃけ安い。夕飯一食分ぐらいにしかならない。ま、さっさと売らないと早々に維持コストの方が上回ってしまう。

 おまけを押し付けられたようで癪だが、まあ貰っておいても悪くないだろう。試してみたい事も少しあるしな。


「で、ではこちらからお選びください。お決まりになりましたらもう一度お声掛けください」


 そう言ってそそくさに逃げる店主。

 案内されたそこには、大きな折が幾つかある。

 収監されているのはボロボロの奴隷たち。重度の火傷を顔に覆った人狼族、片腕を失った細身の少女、不気味にただれた身体を包帯で隠す性別不明の子供。

 そういう奴隷がここにいる。


 一通り目を通し、俺は二人の子供に目を付けた。

 どちらも10代の子供。男女二人の兄妹だろう。

 檻の前まで来た俺を睨みつけるのは少年の方。妹を背にかばう形で一歩前に出て唸っている。

 

「マスター、その子供に何か気になる事でも?」


「ああ、ちょっとな」


 俺は震えながらも威嚇して唸っている少年に檻越しに小さく告げる。


「なあ少年、俺と契約を結ばないか?」


「……契約……?」


 小さく呟いたのは少年だ。

 

「そう、契約。まあそんなに難しくない話でさ、簡単な二択問題なんだけど」


 俺はかがんで少年とその後ろに隠れる少女と視線を合わせる。

 なるべく怖がらせないように笑顔は忘れずに。


「その子の病気を俺なら治せる。その代わりに悪魔に魂を売れるか?」


 この声は俺と眼前の少年少女、それと後ろにいたフウリンにしか聞こえてないだろう。本当は眼前の二人にしか聞かせたくなかったけど、耳のいいフウリンには聞こえてるはずだ。

 ちなみにカリーナには奴隷商人の監視をお願いしている。何かを隠している節はあるし、背後に潜む集団がいた場合、それらを呼ばれたらだいぶ面倒だしな。


「なんの話だよ」


「これからの話だよ。俺はちょっと医学をかじっててな、その子が患ってる病気も何となく心当たりがある。隠れて見えないけど、その子片目と片耳聞こえてないだろ」


「え……。なんで分かったんだ」


 やっぱりそうか。

 この病気は片目の瞳が雪のように真っ白になり、一切の光が失われる。

 やがて耳の方にも影響は出てくる。


「その反応、ビンゴか。その病気は恐らく帝都ゲリュシオンのスラム街で流行った伝染病だな。シロホウシって呼ばれたキノコの胞子を体毛につけたドブネズミを媒介にした伝染病で、胞子が白に輝いて見えることから白の灰って呼ばれ……」


「どうでもいいよそんなの! ミミは助かんのかよ!」


 ……確かに、変にうんちくを垂れるよりは話を進める方が先か。

 死には至らない病ではあるが、処置をしない限り片目片耳は機能しないままだ。

 ま、治すのは簡単で、その為感染はそこまで広がらなかったんだよな。

 今でもこうして病気になってしまう人も少なくないが、先程言ったとおり、処置は簡単なので俺でもできる。


「助かるが、契約が先だ。お前は魂を俺に預けられるか?」


「そんなの決まってる。ミミが助かるなら魂だってくれてやる。だけどお前も今までの大人と同じだったら絶対に殺してやる!」


 噛みつく勢いで少年は言う。

 その怒声は室内に大きく響き、周りにいた奴隷を驚かせる。

 少女はまだ少年の服を掴んだままだ。


「あの、何かありましたか……?」


 大声を聞いた店主がやってきた。その後ろのカリーナと目が合ったが、彼女は首を振る。怪しい素振りはなかったらしいが、果たして無かっただけなのか出来なかったのか。

 まあともかく、今ここで出来るのはこれくらいか。


「さっき言ってた奴隷もつけるって話、この子らでもいいか?」


「え、ええ。かまいませんが、そちらの少女は白の灰に感染しており、少年の方は自傷も気にせず主人に暴行を加えた過去がありますが……」


 今度は奴隷の過去を話した店主。

 奴隷の首輪は主人に反抗した際に、身体に電流が走ったような痛みが走るのだが、この少年はそれを気にも留めずにしなければならない事があったんだろう。

 言動からするに、少女関連だと推測できるな。


「構わないさ、大して他と差はない。ただの壁なんだから」


 そういうと、一層眼光が鋭くなった少年を片手を伸ばして静止させる。

 商人の手前、言い訳は必要だからな。本当にただの壁にするつもりはない。

 相手側は今の段階で流石に俺達を闇奴隷商人を疑ってる奴とは思わないだろう。

 少年には悪いがここはこのスタンスを貫いて、不審に思われないように立ち回ろうか。


「じゃあそういう事で、商談は成立でいいか?」


「は、はい。ではその……今回は……」

 

「分かってる。今回は良い取引が出来た。不正も何もないクリーンな取引だったよ」


 ホッとした表情の商人。

 ようやくここでやるべき事は終わったか。

 じゃあ早くここを出て、先程の契約を始めよう。


「ありがとうございました」


 またのお越しをとは言わない店主を背に、俺達は店を出た。 

 


 





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