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魔族王子とお楽しみの時間

投稿遅れました。

予約投稿ミスりました。

すみませんでした(テンプレ


なるべく早く投稿できるよう頑張ります。

 さて、時とはすぐに経つもので、夕食は既に終わっており、今はまた風呂に浸かって疲れを癒している最中だ。

 昨日に引き続き、今日も今日とて露天風呂を嗜んでいる。


 夕食は食堂で、昼御飯に比べれば見た目は豪華では無いものの、キノコや山菜などが天ぷらのように揚げられたものがメイン料理の定食であり、味そのものは昼御飯と大差ないぐらいに美味だった。

 そう言えば、山に囲まれている事や、人間族がこの辺りをあまり開拓していない事が幸いしたらしく、食料については全くと言っていい程困っていないとノエリアが昨晩言っていたような。

 その理論でいけば、人間族が開拓していない未開の地、例えば未踏破ダンジョンやら、森林の最深部などには、美食家を唸らせるような高級食材にも負けない珍味やら幻の食物があるのかもしれない。

 それを見つけて食す事も、旅を続ける醍醐味になるのやもしれない。どうせ勇者パーティーなら、そういったダンジョンやらにも踏み込む機会もあるだろうさ。


 そんな時も過ぎ去り、シオン達と別れて今は1人、露天風呂を堪能している。

 昨日に引き続いて星見酒を嗜んでいる最中だ。

 昨日はガルデンと名乗る獣人1人が居たのだが、今日この露天風呂には俺1人だけの空間となっている。

 中の風呂とは部屋自体が別部屋となっているらしく、向こうから人が来ない限りは完全に隔離されているみたいだ。

 その為、この露天風呂には限られた物しかない。

 光源は提灯と呼ばれたランプが2つと、空に浮かび上がった月と星のみ。

 他にこの空間を作るのは、お湯の流れる音や草原が茂る音、微かな風がたなびく音、そして酒が俺の喉を通る音のみだけだ。

 限られたそれらの要素だけがこの空間を彩っている。


 話は変わるが、この星見酒は魔国に無く、人間族が独自に作り出した酒らしい。というかそもそも魔国には星や月を見ながら酒を飲むという風習自体が無い。屋敷のテラスで窓を開け、深夜に葡萄酒を飲むという事ぐらいならあるのだが、それらは個人の趣向であり、星見酒のような文化の一つでは無い。

 この酒の名前はニホンシュと言うそうで、おちょこと呼ばれる小さな器に並々注ぎ、そのままぐいっと一杯でいくのが肝だとガルデンに教わった。


 この風呂に浸かりながらの一杯が何故だか全身の疲れを癒やしてくれている。

 魔法的な効力は無いはずなのだが、確実に疲れは取れている。これがニホンシュの持つ力なのだろうか。

 侮れないな、人間族も。




「……あーあ、こんな人間族の全てを感じて堪能していると、ほんと、自分が魔族なのか疑わしくなってしまうな」


 独り言。

 誰にも聞こえない声は風に消える。

 

「いいえお兄様、魔族も変わるべきなのですよ」


 風に変えると思われていたが、その声を拾う者がいた。

 よく聞いた、見知った声だ。


「ばっ、おまっ、ノエリアか!?」


「はいお兄様! お背中をお流し致しますね!」


 いきなり現れたように見えたが、どうやらコイツはこの建物の管理者権限を使って無音でこの場所に転移してきたらしい。

 流石に裸の付き合いでは無い。上半身にタオルを巻きつけている。そのタオルの向こうには水着を着ているとの事。至って健全。

 ちなみに自分は全裸ですが、大事なところは湯気で見えないと思います。


「背中って、ここには背中を流す場所もないだろ」


 そう、この空間には露天風呂しかない。

 鏡も蛇口も何もない。

 見える彼方まで草原が広がっているだけだ。

 そういえばこの草原、魔物や動物の姿が何もないのだが、どこなんだろう。やはり世界には俺の知らない場所がたくさんあるな。


「出来ますよ? ほら!」


 と言うと、何もなかった場所にいきなり水道やら桶やらと言った体を洗うために必要な物が出てきやがった。

 魔法……いや、アイテムボックスか。

 つまりこれはノエリアの計画的犯行という事だ。しかもこれ、誰もこの場所に来ないという事は、人避けの結界魔法みたいなのも貼ってるな。


「さぁさ、お背中をこちらに!」


 ……まぁ、別に妹が兄の背中を流したいって言ってるだけだし、別にやましい事ではないな。

 何年も待たせた恩もあるし、兄の背中を流したいというなら、ノエリアのやりたい事をやらせてやるのが兄の役目だよな。


「……分かったよ。じゃあ背中頼むな」


「はい!!」


 そのまま桶に座ってノエリアに背中を差し出す。

 もしかしたら幼少の頃に、こういう事をやりたかったのかもしれないな。


「……痛く、無いですか? お背中」


「いや、大丈夫だ。それより、何で急に背中を流すしますとか言い出したんだよ」


「え!? べ、別にやましい事は無いのですよ!?」


「別にそんな事は思ってないけど、なんか心変わりみたいなのがあったのかなって思って……って、ノエリア!?」


 何かはぐらかされたような気がするが、俺の思考は背中に当たる二つの柔らかな感触が覆ってしまっていた。

 いきなり抱きつくような形でノエリアが体重をこちらに寄せてきたのだ。


「お兄様のお背中、こんなに大きかったのですね……。私が覚えているお兄様のお背中は、今の私ぐらいの大きさでしたのに」


「……いや、それいつの話だよ。俺が5歳くらいの時の話だろ。その頃に比べりゃ嫌でも大きくなるわ」


 ……なんて気の抜けた会話をしていたからか、俺の心は落ち着きを取り戻しつつあった。というか妹相手に心が荒れるとか、ちょっと冷静さに欠けていたのかもしれない。

 それでもノエリアのやつ、多少なり無防備すぎるような気がするが、いつか変な間違いが生まれないよう祈るしか無いのだろうか。

 いやでもコイツなら脳筋勇者と同じく襲われる事なんて無いか。強いし。いざとなりゃ襲った側が危ないかもな。


 そんな形を思ってると、ノエリアに耳を引っ張られた。


「あででででで!!」


「今失礼な事を考えましたねお兄様。私、可憐な乙女なのですが?」


「いつも思うけど何も言ってないのに何でお前らは答えられてんの!? 俺の心の声聞こえてんの!?」


「お兄様が分かりやすいんです」


「位置的に俺の顔見れねーだろ今」


「何というか、オーラ的な?」


「急に大雑把だな」


「でも、合ってるでしょう?」


「……ノーコメントで」


 また耳をつねられて絶叫した。

 この空間にこだまはするが、帰ってくる音は無い。


「…………」


「……どうした? 急に黙って。って、そか、背中洗うのが終わったのか。いや悪いな、洗ってもらって」


「……いえ、まだです」


「……え?」


「か、かかか覚悟は決めました」


「ノエリアさん?」


「ま、前の方がまだだと思われるのですが!」


「えちょ、ノエリア!?」


 驚いて振り向いてしまった。

 ノエリアは火山が噴火したかのような表情で、なんと頭から湯気が出ていた。

 ば、バグってやがる……。

 じゃなくて、これ薄着で外に出ていたからだろ。何の空間が分からないし、正直寒くも無いし暑すぎもしない最高の空間ではあるけど、それはノエリアにとっては寒い空間だったかもしれないしな。


「ったく、具合悪くなるまで付き合わなくていいんだよ。何かあったらまたここに来るし、俺がノエリアをこれ以上悲しませるわけないだろ」


「い、いいいいえ! やります! やらせてください! お兄様のお世話をするのは妹の義務ですから!!」


「や、やべえ妹がバグっちまった!! えちょ、なんでそんな興奮してるんで、タオルを取ろうとするなー!!」


「ち、力では叶わないのは分かってますでしょうに! 前を向いてくださいいい!!」


 むにゅん!

 むにゅん!

 むにゅにゅん!


 一枚のタオルと俺の体の向きを巡る激しい攻防をしていると、背中の方でそんな感触が数回訪れる。

 背中の感覚を遮断しようと試みるが、悲しいかな男の性よ。ついに俺の体は耐えきれずに鼻から血が垂れてきた。


「……お兄様!?」


「ノエリア、違う。違うんだ。ちょっとのぼせてきただけだから。別にそんなお前に劣情を抱くとかあり得ないから。うん、マジで気にしないで」


「……それは私に魅力がないという事ですか?」


「いやそれも違うけど、今は違う。いや違わない? いや違う……つまり、違ないう?」


「お兄様大丈夫ですか!? 言動がよく分かりませんよ!?」


 本気で心配されたが、正直俺も頭が回ってない事には気が付いている。

 大きな胸の感触を知らなかったリスクは大きい。

 妹にまで迷惑をかけた。


「……いや、これはチャンスでは無くて? ノエリア」


 ノエリアが何かを言っている。


「き、既成事実で妹ポジ大逆転ルート……。あのアホが言っていた勝利の方程式では……?」


 その小言はハッキリ聞こえなかったが、次にノエリアが言った言葉は聞こえてしまった。

 それは一種の魔法の詠唱。

 【パラライズ】。対象を麻痺させることのできる魔法である。

 俺はモロに喰らい、その場に倒れてしまった。

 魔法耐性はそれなりにある方なんだが、こうも実力差があると耐性なんざ関係ないらしい。


「わわわ私も初めてなので……や、優しく……」


 真っ赤な顔でそう言う彼女の細い手は俺の最後の砦である腰に巻いた一枚のタオルへと伸びていた。


「ひゃ、ひゃめ……」


 舌が麻痺して声がよく出てこない。

 動けないし声も出せない。

 まさに万事休すとはこの事だと思った。


「に、逃げられませんからね……! これでお兄様は私だけの……ッ!! まさか結界を突破して……!?」


 俺の体にノエリアの手が触れる瞬間、ノエリアはそう言って動きを止めた。

 仰向けでよく見えないが、その視線の先はこの露天風呂の入口付近に向けられているようだ。

 バチっと電気が一瞬走ったような音がした後、その扉は豪快に開けられた。


「うぃ〜っく! おいら〜の冒険は〜天下無双〜! 全ての〜魔物どもは〜インフェルノ〜! っひっく」


 この声、聞いたことある。

 ガルデンだろう。位置関係的に顔は見えないけど。

 しかも結構酔っ払ってるのが聞いて手に取れるように分かる。


「……最悪。まさか私の結界を強引に破ってくるなんて……」


 何か呟いているノエリア。

 するとこちらに気が付いたガルデンが声をかけてきた。


「おう? お〜う兄ちゃん! なんだぁ? ぶっ倒れちまって、もう酔っ払ってんのか〜? 俺はまだまだ酔っ払ってね〜〜〜からよぉ!! ガハハハ!!」


 うん?

 いやぶっ倒れた俺を言うのは分かるが、男湯にいるほぼ半裸に近い女性に関して何も言わないのはおかしくないか?

 と思ったが、どうやらノエリアはこの空間から居なくなっているらしい。

 恐らくこの建物の創立者だからか、どこでも移動できる権限みたいなの持ってるんだろうな。プライバシーなんてあったもんじゃない。


「んあ〜? のぼせちまったんか〜? ガハハハ!! 仕方ねぇ〜なぁ〜! ちと脱衣所まで連れてってやるかぁ〜! 今日は仕方ねぇから1人飲みじゃあ〜!!」


 軽々と彼に担がれ、そのまま脱衣所まで移動させてくれた。

 肩に担がれるような形で運ばれており、麻痺もだんだん薄れていったのか、首まで動けるようになったので露天風呂の入口を見てみると、『清掃中です。立ち入り禁止中』と書かれた札が掛けてあったし、扉の下には魔法陣の跡まであった。

 風呂場にいた全員に不思議そうな顔で見られている最中、この獣人は酔っ払ってあの扉の鍵をぶち割って入ってきたのかと思っていた。

 結果的には良かったのだがな。






      ◇






 結局、脱衣所でガルデンに礼を言って別れた跡、案外、自分が少しのぼせていた事に気づいて少し横になっていた。

 それから、温泉から上がってきた客に心配されつつ、俺は脱衣所を出てシオンとカリーナがいる部屋へと帰ったのだった。


 部屋に行けば、ダブルサイズのベッドの両端で眠っていた。綺麗に真ん中だけが不自然なほど空いている。彼女らが細いからだろう、ちょうど俺1人分くらいが眠れるスペースがある。

 ベッドとは古来より睡眠を取るための場所だ。

 やましい事なんか何もない。

 俺も今日は沢山あったし、明日にはここを出る。

 彼女たちを見習って俺も今日は眠りにつこうか。


 俺はベッドに近づき、よくかかって無かった掛け布団を彼女らの肩らへんまでかけた後、そのままソファーに寝転がった。

 今日こそいい夢が見れそうだ。

 

 

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