勇者パーティーと次の街
今回は短めですが、もう1話投稿致します
次話もよろしくお願いします
馬車に揺られながら次の目的地まで進む事、もう3日になる。
舗装されていない獣道も時々通る為、かなり時間がかかると言うが、つくづく人間とは効率の悪い種族と思ってしまった。
魔族なら翼の生えた者もいれば、風属性の魔法で空を飛ぶ者もいる。
が、人間が使う魔法に空を飛行する魔法はあまりないらしく、飛行系の魔法を使う者は数える程度しかいないという。まぁ、人間と魔族では体質も育ってきた環境も全く別物であるから仕方ないか。
そもそも魔法を使える人間の方は然程多くないと聞くし。
ちなみにシオンのような魔法も使えて剣の腕も立つ奴は、本当にごく少数だ。
魔法の適性がある奴は基本的に剣を持たない。
魔導書か杖ぐらいしか持っていない。
そのせいもあって俺も、一番最初に住んでいた街でギルマスに目をつけられていた。俺だって魔法が使える事は隠していた筈なんだがなぁ。
そんな事はさておき、俺の隣でたった先程まで眠りこけていたシオンが目を覚まして……覚醒したどころか、星のように瞳を輝かせていた。
「……おいどうした? 近所の子供がプレゼントもらった時みたいな顔して」
「へ、変な例えをするな! 目を輝かせるものと言えば温泉に決まっているだろうが! 大衆向けで安くなっているから質に期待はしてないが、私は温泉自体に興味があるのだ! カリーナもそう思うだろう!?」
「あ、私? ええ、まぁ温泉には期待はしているわね。ただ新興都市ってだけで、然程大きくはないみたいだし、冒険者側からしたらリラックスは出来るけど拠点にはしにくい場所よね」
「まぁ、温泉に立地は求められないからなぁ。周りは魔物の棲む森林地帯だし、あまり大きくしすぎて森林地帯を必要以上に削れば魔物が威嚇して湧いてくるしな。他の都市とか街とかに比べれば拠点向きでは無いな」
「ふむ、まぁ逆を言えば冒険者のようなむさ苦しい連中は少ないという事だな。いやまてよ、という事は我々だけの貸し切りという選択肢も……?」
「な訳ねーだろ。あ、コイツ聞いてねえ。おーいシオン帰ってこーい。ヨダレ出てんぞー?」
温泉を独り占めとかいう妄想に取り憑かれたシオン。
最近はこういうのが良くあるから困る。
折角、前の街で起きた勇者としての資格を失うかもしれなかった事件が収まったんだ。
それを思えば、今のがずっとマシだな。
前の街、【大商業都市テルディア】。
そこでシオンが頭を抱えた問題、あのカザイの事件だ。
解決こそしたものの、それは俺とフウリンの間だけであり、シオン側からはまだ解決していなかった。
フウリンからの要望もあり、フウリンとシオンの対面での話し合いは出来ずにある。だから、俺はテルディアを出る前にシオンに手紙を渡して置いていた。
フウリンの書いた、事件の事について、そして自分の今後の事について。
俺との関係は濁して書いてもらったが、まぁざっくりと何が書いてあるかだが、よくある自分探しの旅に出るから探さないでくれと書いてある。
その手紙を貰って、シオンの心は落ち着きを取り戻してくれたが、その根底にはまだ正義のについての疑問はへばりついて払拭できずにいるのだろう。
それでも、立ち直れた事は素直に凄いと褒めておこう。
他人の正義も自分の正義も、そのどちらもが交わった際に起こる矛盾をも背負いながら生きるなんて、到底俺には出来そうにもない事なのだから。
「……ユクス? どうしたんだ? そんな暗い顔をして。温泉、楽しみじゃないのか?」
おっと、考えすぎていたか。
シオンに心配されてしまった。
「いや、まぁなんて言うか、なんか勇者パーティーの旅だって言うのに緊張感が無いなと思ってさ」
「んなっ! バカを言うなユクス! 今の今まで過酷な旅をしてきたばかりだろうに!」
「そりゃお前、何回かは難所を潜り抜けてきたがな、酒飲んだり通りの露店で飯食ったりしてる方が多かったからだ。俺の想像してた旅とは違ったってだけで、別に今の旅を悪くは言ってねえよ。ただただ驚いてるだけだ」
「……まぁ少しくらい休息があっても良いだろう? 私達は勇者パーティーと言えど人間なのだ。休む時に休まねば過労死するだけだからな」
「ま、概ねその通りだな」
人間じゃなくて魔族だがな。
魔族も過労死はするから同じか。
人間の方がヤワだけど。
「ねぇ、貴方達の冒険譚、私まだ聞いてなかったわ。今日中には街に着くみたいだし、それまで貴方達がどんな冒険をしてきたのか聞いてみたいのだけれど、いいかしら?」
おっと、そう言えばカリーナには勇者パーティーとしての俺達の話をしていなかったっけか。
丁度いい、時間はあるんだし、俺たちの事を話そうか。
「ああ、大して面白くない話ばかりだが、聞いてくか?」
「おいユクス。貴様今私との旅が面白くないと言ったのか? よし今からその口を縫い合わせてやるからこっちに来い!」
「えちょ、暴れないでよ! 馬車が揺れる揺れる!」
「おいカリーナ! こいつ目がマジだ! 本気で俺を殺しに来てやがる! た、助け……!」
面白くない、なんて言ったが、俺はきっとシオンと出会わなければこんな会話もする事がなかったのだろう。
揺れる馬車、これからの旅路を祝福しているかのような心地良い追い風、そんな絶好の会話日和の中、楽しくも面白くもある会話をした。
それはいつか見たとある冒険者の本に書いてあった、人間も魔族も、子供も大人も、男も女も、誰もが憧れた冒険譚の話だった。
キリがいいので短めです




