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勇者パーティーと新たな仲間

「新しい旅の仲間か。ああ、ユクスが言うなら大丈夫だろ。紹介させてくれ」


「え……? え、ああ、はい」


「ん? 何をそんな呆けた顔をしている。何かおかしい事を言ったか? 私」


 シオンは表情変えず、それがさも常識だと言う様に答えてくれた。

 ああ、ちょっとまず状況を説明させて欲しい。

 この返答には俺も予想してなかったんだ。

 まずは事の発端はから話そうか。

 それは今朝の事になる……。







       ◇






「とりあえず、今日はカリーナをどうにかして勇者パーティーに入れようと思う。そこで提案なんだが、なんか良い案思いついた奴挙手してくれ」


「はいマスター!」


「お、じゃあフウリン」


「カリーナさんの代わりに私が勇者パーティーに入るのはどうですか!」


「却下に決まってるだろ。なんでそれが通ると思ったんだ。あとカリーナも無闇矢鱈に太刀を抜刀するな。ここ一応病室だぞ。俺ちなみに怪我人で被害者な。加害者はお前」


 そう、ここは商人ギルドの病棟エリアの一室。

 昨夜まで使っていたあの病室だ。

 本来なら昨日で傷は全て癒えている筈だったが、予想外の一撃(カリーナによるもの)によってまた俺だけ戻されてしまった。

 まぁその傷も定期的にかけている魔法【ヒール】と魔族特有の自然治癒で治りかけだが。


 さて、昨日は【裏勇者パーティー】(仮名)を結成したのだが、今日はその第一歩となる勇者パーティーにカリーナを迎えるにはどうすればいいのか、それを俺の眠るベッドを囲って話し合っていた。

 ベッドを挟んで左にカリーナ、右にフウリン。だがまぁ、もしかしたら2人は相性が悪いのかもしれない。


「あんたが勇者パーティーに入ったとして、逆賊の生き残りが勇者パーティーに居るなんて知られたらどう責任取るのよ! 全く、少しは考えて発言しなさいよね」


「あれれ〜? 禁忌の一族が逆賊とか言ってますけど、それってもしかして新しいギャグか何かですか〜? あ、ここもしかして笑う所でした? 空気読めなくてごめんなさいにゃーん!」


 バチバチと視線だけで威嚇し合う両者。

 やっぱり相性悪いかもしれない。

 水と油ぐらいの関係性らしい。


「おい俺を挟んで喧嘩すんな。あとフウリンも、カリーナが言う通りお前は立場上勇者パーティーに入るのは難しいのは分かってるだろ」


「それは……そうですけど」


「お前にはお前しか出来ない事があるんだ。そっち方面で期待してるからな」


「!! ええ、ええ! 是非とも期待していて下さいね! これからもずっと!!」


 屈託のない眼差しで俺を見やり、太陽のように明るい表情のフウリン。

 そう、フウリンには彼女が1番向いている仕事をしてもらうつもりだ。

 昨夜も彼女自身が言っていたが、彼女には諜報員として働いてもらう。

 その身軽さと変装能力やら処世術やらを得意としている為、そちらの方がやりやすいという判断を下した。

 実際にカザイもそういう面でフウリンを使っていたらしいから、慣れたものだと彼女は言っていた。


「やっぱりアレかしら? あんたが自分の喉にナイフを突き刺そうとしながら『カリーナを仲間に入れないなら自害してやる!!』って、あの子の前でやるしかないわね」


「何その提案!? 俺それ初めて聞いたんだけど!? え? 脅迫? 自己犠牲の脅迫!? いや効果はありそうだけど絶対しないからな!?」


「あら、残念ね……」


「マスター。そんな知能指数の低い案より、勇者なら真っ向からストレートに言った方が良いと思いますよ。私が思うに、下手な小細工は返って相手の不信感を覚えるものです。大丈夫だと思いますよ、マスターの事をあの方は1番信頼されてますから」


「ちの……ッ!? あんたは一言余計なのよ!」


「やだ、本当の事ではないですか〜! もう!」


 そして間もなく始まった2人の喧嘩で荒れ狂う病室の最中、俺は静かに考えていた。

 確かに真っ向から言ってみるのもありなのかもしれない。

 実際、この勇者パーティーには人材不足なのは明白だったりする。

 俺とシオンの2人だからこそ前衛後衛がはっきり分かれているが、これから先どんどん強い奴とは当たると思う。

 カザイの時だってそうだ。

 分断されてから、運良く俺は生き残っていただけだ。魔術はまだ完全に覚えて慣れるまでに時間はかかるし、半分の力でしか戦ってない悪魔との戦いでも1人だけだったら確実にやられていた。


 パーティーで戦うならまだしも、俺個人としての能力が勇者に追いついていない。

 分断されたら勇者がカバーに入る事が前提となっている。

 これじゃ魔王には近づけない。

 個人能力はおいおいとしても、まずはパーティーとしての戦力の増加はこのパーティーにおいて考えられる明白な課題だった。


(確かに、仲間が増えればパーティー面での不安の解消にはなる。それに、何事もやらなければ可能性はゼロだ。挑戦してみる事から始めるか)


 そう思った俺は『よし! やるか!』とベッドの上で気合を入れる。

 遂には俺のベッドに上に登って互いの頬を引っ張り合う2人を無視して着替えを行った。

 ベッドの上は占領されてるので勿論ベッドから離れざるを得なかった。

 一応、俺怪我人なんだがなぁ。怪我人にベッドを使わせないのはどうなんだろうか。


「とりあえず今日は行かなきゃならない所がある。フウリンとカリーナはここで待機していてくれ。昼前には戻るからさ」


「ふぁい、ふぁふぁふぃふぁふぃふぁ(はい、分かりました)」


「ふぁふぁっふぁふぁ(分かったわ)」


 もう何言ってるか分からん2人を置いて、俺は病室を出た。

 行く所だって? そんなの決まっている。

 俺は駆け足で目的地に向かった。







      ◇






「昨日はよく眠れたか?」


 ロビーのテーブルで1人、モーニングコーヒーを飲んでいるシオンに声をかけた。

 昨日のような装備でなく、動きやすい私服でシオンは座っていた。

 ここはバルド……あの筋肉ダルマの経営する宿屋の一階だ。

 朝方とは言え、本当に繁盛してるのか分からないぐらいに人が居ないが、まぁ気にしないでおこう。


「生憎、快眠だった。勇者の称号の呪いだな、これは。どんなに辛い事があっても、一晩経てば感情が薄れていくんだ。先代達はこれを【逆境を越える勇気】と称していたらしいが、私にはやはり呪いにしか見えないな」


「……隣、いいか?」


「ああ、座ってくれ。それと、どうせならお前も頼んだ方がいい。ミラウの淹れたコーヒーは格別だぞ」


「ミラウ? ああ、あの子か」


 シオンの視線の先に居たのは、前に俺が助けた天狐族の女性。エプロン姿でコーヒーを煎る姿は様になっていた。

 前にそのような職にでもついていたのかと思わせるぐらいだ。

 折角なので俺も一つ頼んでみた。

 柔らかい二つ返事と共に、ミラウは丁寧な動きでコーヒーを作る。

 それを配膳してくれたのは、幼い天狐族の子供だった。

 礼を言って頭を撫でる。小動物みたいで可愛いと思ってしまった。


「お、本当に美味いな。これなら冒険者だけじゃなくてこのコーヒーを目当てに来るお客さんも出てきそうだ」


「そうだろう。何せ私が認めたんだ、そうでなくては困る」


「お前はコーヒーの何なんだよ。神様か何かか?」


「勇者だが?」


「いや、それの何が関係してるって……ああ、勇者が良く飲んでたコーヒーって売り文句をつけようってか。なるほどな」


「そういう事だ。この店も増築が決まったが、元は厄介をかけたのは我々勇者パーティーだから、せめて売り上げに繋がる何かをと思ってな。因みにそこには、天狐族が描いてくれた絵画もある」


 指差す方向には立派に描かれた、大きな絵画がロビーの壁に飾られていた。

 題名は【勇者の嗜み】。作者はどうやら天狐族のユウとユイの2人組らしい。

 題名の通り、描かれているのはシオンがロビーでコーヒーを飲む風景。

 シオンの表情や背景の一つ一つに魂こそ感じさせられる、とても立派な絵画だった。

 とてもじゃないが短時間で作れる作品では無さそうだが、時間的に考えるなら1日ちょいで作った事になるのか……?

 なんか、宿じゃなくて美術喫茶みたいなのやった方が売れるのではないだろうか。


「いい絵画だな。まるで本当に生きてるみたいだ」


「素材がいいからだろうな」


「それはこのロビー全体か絵画の素材自体かどっちの事を言ってるんだ? って、落ち着け冗談だから」


 どうしてこう周りの女性陣はすぐに殺気を放って武器に手をかけるんだ。

 いや、冗談とはいえ悪いのは俺の方だろうけど。


「絵画のメインはどう考えても私だろうに……。で、どうしたんだ朝から急に。話があるんじゃないのか?」


「ああ、まあな。実は、その、お前に言いたい事があるんだ」


「何をだ? というか、改まってどうしたんだ?」


「そろそろ仲間を増やさないかって相談なんだが」


「仲間か? パーティーの?」


 シオンが傾げる。


「2人じゃこの先の旅でどうしても辛くなる場面が多くなる。例えば、俺達が分断されて俺が一斉に狙われたらひとたまりもないだろ? 良い機会だし仲間を増やそうって話なんだが、1人良さそうな奴がいてな。今日はそいつを紹介したいんだ」


 俺がそう持ちかけると、シオンはほんの少し考えて答える。

 考えている素振りを見逃さずに直ぐ様、昼頃まで待って貰ってるからゆっくり考えてくれ、と付け加えようとした矢先だった。


「新しい旅の仲間か。ああ、ユクスが言うなら大丈夫だろ。紹介させてくれ」


「え……? え、ああ、はい」


「ん? 何をそんな呆けた顔をしている。何かおかしい事を言ったか? 私」


 シオンは表情変えず、それがさも常識だと言う様に答えてくれた。

 あ、フウリンの言う通りだったみたいだ。

 何も深い考えなんていらなかった。

 ただ一言相談するだけでよかったんだ。


「私も旅の仲間は欲しかった所なんだ。詳しい話は後で会った時に聞くとして、どんな方なんだ?」


「そうだな、身長は高くてシオンと同じ前衛タイプ。魔法はあんまし得意じゃなさそうだ。性格は、そうだな、普段は冷静だけど取り乱すと手が付けられない……って何かお前みたいな感じの女の子だな」


「だから人をバーサーカーみたいに……ちょっと待てお前、最後女の子って言ったか?」


「ああ、言ったがそれが何か?」


「それが何か? じゃなくてだな、お前また変な女にほだされてるんじゃないだろうな?」


「いやそんな事は無いぞ!? 変な女……ん、んー? 否定は出来んが、頼もしい奴だよ」


「おい早く案内しろ。早くその女に会わせろ! 悪い女だったら斬り伏せてやる!」


「ちょ、落ち着けお前! 待ち合わせは昼だからまだ時間はあるんだから、ちょっと店の中で聖剣ぶっ放すなぁぁぁ!!」


「おいお前らうるせぇぇんだよ! 取っ組み合いなら外でやれぇぇぇ!!」


 いつの間にか参戦していたバルドも加わって取っ組み合う俺達を、天狐族の女の子達が苦笑いだったり、又は不思議そうにその光景を見ているのだった。







      ◇






 そして時間は過ぎ、丁度太陽が頭上に現れた頃だ。

 メインストリートの広場で俺達はベンチに座っていた。

 屋台で買った独特な色をした、多分体に悪そうな見た目の飲み物を飲みながら。安かったけれど原材料は怖くて聞けなかった。教えてくれないと思うけど。


 そうこう待っているうちに彼女は現れる。

 私服じゃ無い、いつも見る見た目のまんま。


「お、お待たせしました。カリーナ・ミストレインです……。しょ、商人志望です! よ、よろしくお願いしましゅ!」


 緊張に緊張を重ねて、ガチガチの口調にプラスして噛みやがったコイツ。

 いや、俺の知ってるカリーナじゃ無いんですけど。

 口調とか完全に違うだろ。

 しかもそのナリで商人志望とか言うな。

 ほら見ろ、勇者も『商人か……? 剣士タイプじゃ……』とか言ってるし。


 仕方ない、助け舟を出してやるか。


「おい、憧れの勇者を前にしたからってそんなガチガチになってちゃ世話ねーぞ。どれ、緊張をほぐす為に雑談でもしようかね。ほら、お前もそこ座れよ」


 このベンチはテーブルを挟んで2人用が2つある。

 1つは俺とシオンが使ってるから、対面のベンチにカリーナを座らせた。


「ま、とりあえずは自己紹介しようか。俺の事は省くとして……知ってるかもしれんが、横にいるのがーー」


「現勇者であるシオン・リンクライトだ。よろしく頼む」


「よろしく、お願いします……」


「んじゃあお前の緊張をほぐすような気の抜けた話でもするか。てことで、シオンの話をしようか」


「む、私のか?」


「ああ、実はコイツはかなりのドジでな、森のダンジョンなら大木の根とか泥のぬかるみとかによく足を取られて転んでんの。あの皆が羨む勇者様がベソ描いて顔真っ赤にしてんのは笑えたなぁ」


「ちょ、ユクス、貴様……!?」


「え、えぇ……。それあんたの作り話じゃなくて?」


 隣に座るシオンは感情のまま、飲み物の入ったコップを握り潰し、木のテーブルの上に中の液体をぶちまける。

 それよりもカリーナは俺の話に食い付いている。興味が湧いてきたらしい。


「実は本当なんだよな。因みにもっと前にはコケてスカートが捲られてパンツが丸見えになってた時もあったよなぁ。確か色は淡いライト……」


「死ねぇ!!」


「ぐべらっ!!」


 横から聖剣ならぬ聖拳をもろに喰らった俺は、何が起きたのか理解できずに広場の花壇の中へと吹き飛んだ。


「本当にいっぺん死んでデリカシーを冥界で学んでこい貴様は!! 初対面の相手になんて話を……。ああ、申し訳ない、あのアホな戯れ言は忘れてくれ」


 激昂したシオンは俺に向かって言葉を放つと、正面にいるカリーナに弁解し始めた。

 身振り手振りを全力で用いて弁明するシオンに、何故だかカリーナの頬は自然に緩んでいた。


「だからアイツは虚言癖が……って、そんなに可笑しいだろうか!?」


「ふ、ふふふ……っ! ごめんなさい、笑い話では無いのよね。まさか勇者様がこんな人物だとは……って、ああ悪い意味は無いのよ? でもこれが良い意味かというと……ふふふっ」


「……はは、あはははっ! ようやく素が出てきたな。それがカリーナの素の口調か」


「ええ、かの勇者様にタメ口なのは怖いけど、これが私の素よ。改めて自己紹介をさせて。私はカリーナ・ミストレイン。商人志望だったけど、この通り太刀で前衛が得意ね。魔法は得意ではないけど、剣術なら自信があるわ」


「うぅむ、何故商人志望なのかが謎ではあるが、まぁこちらとしては信頼できる仲間は大歓迎だ。カリーナさえ良ければ私のパーティーに入ってくれないか?」


「……あの、私が言うのも何だけど、出会って初めての私に信頼できる仲間なんて言って大丈夫なの?」


 カリーナが怪訝そうに言う。


「何を言っている、ユクスがカリーナを信頼しているんだ。それだけで十分だろう?」


「……あなたは彼を信頼しきっているのね」


「当たり前だろう。仲間を信頼せずして勇者パーティーは務まらん」


「そう、それなら私も是非信頼して欲しいわね。私なんかで良ければ勇者パーティーの一員として迎えてはくれないかしら」


「ああ、勿論だ。こちらこそよろしく頼む」


 そう言って2人は硬く握手をした。

 と、そのタイミングで俺は花壇から体を起こす。

 石で出来ている床が陥没するほどの衝撃だったが、俺以外が食らったらダメな一撃だろ今の……。

 

「っておい! また傷口から血が噴き出てんだが!? お、おいお前らどこに行くつもりだ! 詫びの一言も無いのかよ!?」


「黙れユクス。元はと言えばお前が悪い。では私達は午後のショッピングを楽しむとするから、一旦自由行動だ。夜には帰る」


「おい待て! ……ったく、ほんとに行きやがった。謝るのはお前の方だろっつの」


 2人は楽しそうに人混みへ解けていった。

 ま、今までは俺だけしか居なくて同性との買い物なんて出来なかったからな。

 今日ぐらいは勇者を捨てて、普通の1人の女の子として振る舞いたいのだろう。

 今日は、大目に見るとするか。


「さて俺はどうするかな……」


 ヒビの入った通路を横切って、シオン達とは反対の方へ足を進めようと振り返った時。


「謝るのは君の方だよね?」


 そこには仁王立ちで般若の顔をしたロイズの姿があった。


「公共の通路の修繕は誰がすると思ってるのかな? というか君達だよね、ちょっと前に運動場も破壊したのは」


「いや、後者の件は俺は無関係ですが……」


「とりあえず夜まで特別労働ね。もちろん休憩無しで」


「は、はははは……逃げr……っ!?」


 回り込まれてしまった。

 ロイズの捕縛攻撃!

 ユクスは捕まった!

 




 それから何故か夜までの記憶はない。

 記憶を消されたのか、もしくは自分で思い出す事を封印する程の何かがあったんだろうが、多分思い出す事は無いだろう。



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