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魔族王子と本気の戦い

予約投稿ミスりました

更新遅れました

本当、すみません。

次話更新なるはやで頑張ります。

 俺は瘴気を纏った魔導書を左手で持ち、もう片方の右手を前に出して魔術を紡ぐ。

 既に剣は腰に仕舞い、今度の武器はこの魔導書だけとなっている。


「焼き尽くせ。【炎尾】!」


 右手から蛇のようにしなる炎の鞭を顕現させる。それは一本ではなく三本。そしてそのどれもが触れたら溶けるような熱を持っている。

 変速軌道の【炎尾】はあらゆる角度からカザイを狙い、そして同時に攻撃する。

 1本目は右、2本目は左下、3本目はカザイの頭上から。

 普通に考えれば、抵抗してもどれか一本には確実に当たるコースだ。加えて致命傷にもなりえる攻撃力。

 これに対し、カザイは告げる。


「……ほう。これは魔法ではありませんね。しかし、私はこれをどこかで見たことがある。確か……古代の呪文か何かだったような気がしますが、どうなんでしょうか?」


 迫り来る3本の炎の鞭。

 それをカザイは常人では出せないような跳躍力で後ろへ飛んで避けた。

 その後の追撃も軽々とかわしながら、俺に対して質問さえ出来る余裕があった。

 ……くっ、コイツ……。


「ですが、これをこの世界で扱えるのは悪魔などの魔族だけだと思っていましたが、本当のところはどうなんですか?」


「……どうせ察してるんだろ? 答えを聞かせてみろよ」


「仮説なら既に幾つか立てていますがね、私は9割が本当であろうと思っても、残りの1割を見逃さない質なのでね。貴方が『魔族であるのかどうか』は貴方の口から直接聞かせてもらわなければね」


 やっぱ、バレてやがるか。

 あのカザイのラボで対面した時には気付かれていただろうな。

 恐らく、カザイの背後にいる悪魔の入れ知恵だろう。そうでなければ、一般人が魔族について分かる事は少ない。

 何故なら、この人間国では悪魔や魔族に関する書物が極端に少ないからだ。一般人が簡単に手にできる悪魔の書物は教会にある聖書くらいか。書いてある内容は子供でも見れるように薄っぺらいものだが。


「【黒炎】!!」


 すかさず俺は魔術を放つ。

 闇黒魔術と炎魔術を組み合わせた魔術。

 消費魔力は大きいが、広範囲に黒色の爆炎を創り出す。

 この【黒炎】という魔術はさらに魔力を込めれば炎の勢いを強化する事ができ、それはつまり炎を上方向に伸ばす事が可能という事を意味している。

 上空に逃げても【黒炎】は追う。

 どうする? 威力は十分だぞ?


「面倒くさい技ですね……。少し力を出しましょうか……!!」


 するとカザイは空中で止まり、体を軽く丸めさせて力を込める。

 なんだ……? 何をする気だ?


 直後、目にも止まらぬ速さでカザイが突っ込んできた。

 もちろん俺は攻撃を避ける事も、ましてや両手で防ぐ事すら不可能だった。

 音すら超える超スピードの突撃。

 俺の体は悲鳴をあげて吹き飛んだ。


「あ、ぐ……っ!!」


 後方に吹き飛び、俺は壁に激突した。

 だがまだ、敵の攻撃は止まない。

 そう踏み込んで俺はすぐに体を起こす。

 視界がぼやけてもいい。とにかく体を起こせ。

 考えろ。どうやればカザイを倒せるか。


 魔術は魔法と違い、消費魔力が多い。

 幼少期の鍛錬の成果で取り込める魔力量と速度が他に比べて早いとは言え、連発していればやがて魔力は尽きる。この魔力が尽きれば俺の負けだ。

 魔力が枯渇すると一時的に体が動かなくなるからだ。これは魔力切れと言って人間も魔族も関係なく起きる。文字通り、動けない。その場に倒れ、何も出来なくなる。


(そうなる前に……やらなくちゃな)


 最悪、カリーナを助けさえすればどうにかなる。まぁ勇者頼みなんだけど。

 あいつがいればカザイもその悪魔もどうにか出来そうだが、まぁ簡単にいかないよな。


 タイマンでやり合うには相手が強い。

 悔しいけど、カザイは強かった。

 正直、魔導者さえあれば余裕だと……せめて形勢逆転にはなると思っていた節はある。

 さぁて、残った魔力量でどうするかな……。

 まずはそうだな……考える事から始めようか。


(頼むぞサーチ、助けてくれよ! リンク!!)


 俺は俺の中にいるもう1人の住民に助けを求めるのだった。






     ◇





「ふーん、それでボクに助けを求めに来たんだ。早いね、諦めるの」


「諦めてない。ただ考える時間が必要だっただけだ。この空間なら時間は進まないんだろ?」


「そうだよ。魔力は消費してるけど」


 まぁそれでも現実世界よりは考える時間は多い。考えすぎると手遅れになるけど。

 ていうか最悪、戻った瞬間に魔力切れで倒れるかもしれないのか……。


「あ、そうだ所有者さん。この前の対価、今払ってよ」


「こ、この前って……ついさっきだろ! ちょっと待て、今本当に死ぬか生きるかの瀬戸際なんだよ! つかお前も何かアイデア出してくれよ! 俺よりずっと魔導者の事知ってるだろ!」


「えー、問題解決したらって言ったじゃん。したでしょ? 問題解決」


 いや、したけど。

 そりゃあしたけど。

 でも、また問題増えたんだよ!

 正直それどころじゃ無いんだよ!


「……はぁ、分かったよ。所有者さんが大変なのは大体分かってるからこれ以上のいじわるはしないよ。協力もする。けど、これは対価の上乗せだからね」


「上乗せ……。背に腹はかえられんから、もうそれでいいよ」


「あ、ちなみに死んだら対価は無くなるとか考えないでね。死んだらその魂に残ってる微細な魔力だろうと全てボクが喰らい尽くすから」


 こ、こっわ。

 これが本物の悪魔か。


「それで? 今回はどんな魔術をお探しなのかな?」


「悪魔すら倒す魔術とか……ない?」


「あるよ。この迷宮ごと消滅させる古代の……むぐっ!」


「消滅魔術以外で、だ!!」


 俺はサーチの口を塞いで言葉を止めさせる。

 なんでコイツこんなに消滅魔術推しなの?

 俺を仮死状態にさせたいの?


「……対価にお触り代も加えますからね……えっち」


「はぁ!? なんでだよ! 口塞いだだけじゃねーかよ! そもそもお前が消滅魔術を唱えさせようとしたからじゃねーかよ!」


「……仮死状態になればいいじゃないか。というか、むしろ仮死状態で済むだけの話でしょ。半年眠り続けるだけで今回は勝てるんだよ? 半年なんて一瞬だよ一瞬」


「お前基準で一瞬だろそれ。つか、おまえの話からするとカリーナとかもその消滅魔術に飲み込まれるんだが?」


「大丈夫。誰も誰がやったか分からないから⭐︎」


 ほんとにコイツに相談していいのか……。

 事あるごとに消滅魔術を推奨してくるの何なの?

 ……まぁ、見方によっちゃ一番わかりやすい魔術なのかもしれないけど。


「まぁ前置きはここぐらいにして、今の所有者さんの魔力で1番強くて適性のある魔術はそうだなぁ。【黒溶】とか? まだそれなりのページを読んでないから今は炎の魔術と、その血統から受け継いだ暗黒魔術しか使えないから、その二つを混ぜた魔術の中で1番強いのがこれ」


「どんな魔術なんだ?」


「【黒炎】ってあるでしょ? あれを凝縮させて右手に纏わせるって感じ。それに触れれば何でも溶かせるよ。魔法でも、大木でも、人体ですらも。あとはオリハルコンとかの固い鉱石とかも溶かしたっけ」


「威力重視で範囲を無くした感じか。ま、今の俺の能力じゃ接近戦をしてる方がよっぽど勝率は高いよな。で、他には?」


「後は……まぁ無難に爆熱魔術とか? 所有者さんの戦闘スタイル的にはガンガン前に出る役と後方支援の役の両立が出来そうだけど、今みたいな1人で戦うには前に出ないといけないから、やっぱり【黒熔】を推すけどね」


「爆熱魔術ねぇ。当たるかなぁ、魔術」


「まぁ無理じゃ無い? コツは経験で何とかなるタイプだからすぐに出来ないし、魔力の蓄積関係で多分、3秒くらいしか魔術持たないよ」


「じゃあ無理じゃねえかよ! あーもう、とりあえず【黒溶】で攻めるか」


「あ、消滅魔……」


 言いかける前にビシィと頭に手刀を落としてやった。

 サーチは額に手を当てて俺を睨みながら唸っている。お前がうるさいのが悪い。


「ま、とりあえず【黒溶】で手を打つ。俺の魔力が持つか分かんないけど、また詰んだら寄らせてもらう」


「……殴った分も対価に上乗せだからね……。あと今の自分の魔力量、ちゃんと計算しながら魔術を使うんだよ。【黒溶】は所有者さんとかなり相性の良い魔術だから燃費効率は良いけど、過信しすぎないよーに。大事なところで魔力切れなんて洒落にならないからね」


 わかってるよ。と言い残し、俺は魔導書のリンク世界から消える。

 現実世界に戻って来た時には、俺の体が既に【黒溶】の魔術を刻んでいた。

 後は魔力を流し込むだけ。

 イメージは付いている。右手に集中し、魔力を込めた。


「【黒溶】」


 一言。

 その魔術名を刻む。

 すぐに右手が爆発したように発火する。

 その火の色はドス黒く、触れた物を全て塵も残さずに消し去るような漆黒の焔が出来ていた。

 ただし、懸念事項であるリーチの無さは明確だった。燃えているのは右手先10センチくらいから肘上ぐらいまで。炎に伸縮性はなく、触れなければダメージはゼロだ。


 俺は体を動かす。

 リンク世界では痛みは無かったが、現実世界では攻撃を喰らった直後である。

 身体中が軋むように痛い。

 が、それでも俺は倒れない。

 まだ倒れてはいけない。


「おや、また新たな魔術ですか。よくやりますね。確かに今回の魔術は触れたら面倒くさそうだ。ですが、その魔術が切れたら今度こそ私の勝ちですよ。もうどうせあと少ししか魔力は残ってないのでしょう?」


「鬼ごっこと行こうじゃねぇか。触れたらお前の負けというよりは死ぬかもしれんけどな!」


「せいぜい未練を残さないように悪あがきをどうぞ。私は貴方の魔力切れまで遊ばせて頂きますよ」


 俺は素早く地を蹴り、燃え盛る右手を振りかぶりながら距離を詰める。

 カザイは羽を広げて宙を舞う。

 跳躍してそれを追うが、羽の方が空中戦は有利である。こちらは体制を変えられない以上、状況的には部が悪い。

 こちらも魔力を足に流して身体強化を施しているにも関わらず、捉える事は不可能に思えた。

 何か、決定的な何かが有れば一撃くらいは奴に入れられるだろうか。

 でもこんなほぼ閉鎖空間のような場所に何があるというのか。勇者はまだ来る気配は無い。てか段々遠ざかっているような……気のせいか?


「なるほど、その魔術は複合魔術ですね。闇系……昔は暗黒魔獣と呼ぶんでしたっけ。それと炎の魔術を組み合わせましたか。確かにその腕なら後方から撃つより幾分かは当たりやすいのかもしれませんけど」


 捉えられますかね……と嘲笑しながら宙より見下すカザイ。

 丁度空の超満月と影が重なり、一層不気味さが増す。


 が、カザイも油断していたのだろう。

 まさか背後から攻撃されるとは思ってもいなかったと思う。

 まさか、この超満月を直接見るために空洞にしているダンジョンの天井から何者かが現れるなんて、誰が想像できただろうか。


「貰ったよ! さぁ今だよユクス君!! 僕ごとやっちゃえ!! 〜っ! 一回言ってみたかったセリフが言えて感激だね!」


「な、なんですか貴方は!? はな、離しなさい!! 離れなさい!!」


 その声は、ロイズ・クーデンタルト。商人ギルドのギルドマスター。でも月明かりを背にした彼女の姿は前に見た時より変化していた。

 髪色は金色に変わり瞳は赤に染まっている。さらには上に長い獣耳が生え、額の中央には一本角が出現していた。

 まるっきり特異部分がカリーナと同じだった。

 紛れもない。

 ロイズ・クーデンタルト、彼女は……いや、彼女も幻兎族だったのだ。

 ロイズはカザイを背後から羽交い締めにし、空中での身動きを取れなくしている。

 悪魔と本契約をしていないのか、背後に宿る悪魔は背後から来ていた彼女に無反応だったのが幸いだったらしい。


「その姿……」


「話は後! 私は大丈夫だから早くやって!!!」

 

 直感が戸惑いを制した。

 俺は言われるがままに行動する。

 戸惑いを捨てなければ……躊躇していたら形勢は不利になる。そう思った矢先、本能に身を任せて拳を振り上げていた。


「くっ!! 【レジストファイア】!!」


 咄嗟に抵抗魔法を唱えようと無駄だった。

 俺は的確にカザイの腹の中心に向かって勢いを全て攻撃力に変換し、全身全霊の渾身の一撃をぶつけてやった。







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