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閑話 禁忌の一族の少女の話

謝罪することが前置である事がテンプレ化してますが、本当に遅くなりすみません。

更新頻度をあげたいのですが、お仕事が…

いえ、仕事、コロナに負けずに更新頑張ります。

ちなみにコロナではありませんが、急性喉頭蓋炎という病気にかかりました。皆さまお体にはお気をつけて……

 これは私がまだ幼かった頃の話。

 生まれた場所は、人が足を踏み入れられない、幻の森林集落と呼ばれていた、小さな集落だった。

 そこには、私達幻兎族が沢山住んでいて、毎日が楽しかった。


 朝起きたら、お母さんの作る朝御飯の手伝いをして、昼は友達と一緒に森へ木の実を採取しにいくか、もしくは、お父さんと一緒に剣の腕を磨いていた。

 友達と過ごす時間は、何にも変えられないような大切な時間だったし、お父さんと一緒に鍛練する事も楽しかった。

 私は、女の子ながら剣と一緒に生きてきた。集落一番の剣の使い手である、お父さんの背中を見て生きてきたから。

 昔に1度、お父さんの狩りをしている姿を見た事があり、それが忘れられなかった。生きるための狩り、その為に剣を振るい、獲物を狩る姿に感銘を受けたのだ。


 周りの人からは、女の子らしくだとか言われるけど、私は気にしなかった。

 お父さんに追い付くために、私は必死で鍛練した。練習をした。修行を重ねた。

 いつか見た、お父さんのようになりたいと、そうひたすらに思いながら。


 そして私が16歳になって成人した頃、私は集落の狩りのメンバーに入った。

 勿論、お父さんがリーダーで。


 メンバーに入って初任務。

 森の奥に潜んでいる、大猪の狩の日。

 歳月が過ぎた今でも鮮明に覚えている。

 初めての狩り、それを無事に狩猟したときの達成感は、今でも……いや、これからも忘れはしないだろう。

 そして当時はこれからも、今みたいな平和な日常を、私が死ぬまで……死んでからもずっと、続くんだろうと思っていた。





 

 その日は唐突に訪れる。

 それは、私が狩のメンバーに入って2年が経った頃だった。


 この集落のある幻の森林の内部で戦争が起こったのだ。

 森の精霊の加護で、この幻の森林には誰も入ってこれない筈なのだが、その日を境に……魔物が、魔族が、そして人間が雪崩のように森に入っては戦争を繰り返していた。

 戦争によって血が流れる。やがてその血は、森林を汚染していった。

 かつて新鮮な空気と日光によって生きてきた木々達は、恐ろしく早いスピードで腐蝕していった。

 その場所が渇れ果てた荒れ地になっても、そこでは戦争が絶えなかった。

 とどまる事の知らないその戦争は、この森林を次第に蝕んでいく。あんなに大きかった森林も、今ではもう半分も渇れ果てた。荒れ地には渇れ木と鮮血が腐って出来た毒の沼と……遺骸しか見るものはない。


 後から聞いた話では、その戦争は偶発的に起きたものであり、人間と魔族がお互いの領土拡大のために起こした物ではないと知ったが、その戦争の被害はあまりにも大きかった。

 精霊の加護も消え、今でも森林は汚染され続けている。

 そして、私達の住み処すら存続が危うい状況下になっているのだ。


 私達禁忌の一族は、住める場所が決まっている。

 それは幻の森林のような、魔族も人間も住めないような場所。

 何故なら、禁忌の一族ということで、人間からは迫害されているし、魔族も貴重な魔力媒介になると道具扱いされる。

 そう、この世界は私達禁忌の一族に厳しい世界なんだ。

 過去の私達が何をしたのかも分からないまま、私達は迫害され続けた。

 やっと見つけたみやこすら、彼らの勝手な戦争で潰されかけている。私達は、ただ、平穏な日常が欲しかっただけなのに。


 その時、ちょうど噂を聞いたのだ。

 勇者が誕生した、と。

 神から祝福を授かった、私と同じ年齢の少女だという。

 今まで噂なんて流れてこなかったが、精霊の加護が消えてからはよく聞くようになっていた。

 これが……チャンスだと思った。

 噂によれば、勇者は魔王を倒すために、仲間を探しながら冒険を続けているという。

 なら、私がその仲間になって、勇者と共に魔王を倒したら……? それなら、迫害は無くなり、私達は自由に生きれるんじゃないかと、私は思った。


 幸い、剣の腕には自信があった。

 他のことは少し自信ないけど。

 私はすぐに提案した。

 この状況を打開するにはこれしかないと。

 勿論、最初は反対された。それなら、お前じゃなくてもいいだろう、と。でも、何故か長老からは、私が抜擢された。大人達はそれ以降、口をつぐんでしまった。

 理由は、長老の口から告げられる。

 どうやら、私が一番幻兎族としての血が濃いらしい。実感が沸かないのだけど、それは集落の中に居れば精霊の加護で覚醒状態にはならなかったし、なったとしても意識ははっきりあったからだ。皆と同じだと思っていたけれど、それは精霊の加護がかなり覚醒状態の力を抑えていたからだという。


 でも何にせよ、外に出るなら危険が沢山ある。幻兎族だってバレないように努力もしなければならない。

 幻兎族の大きな耳は、この地に代々伝わる魔法のイヤリングで何とかなるが、超満月の日だけはどうにもならないという。その2日間だけは、誰の目にも触れられない場所に居ろ、との事。


 最低でも、幻兎族の事を秘密にして生活する事、必ず勇者パーティーに入る事、この2つを守るのであれば外に出ても良し、と長老から告げられた。


 私はすぐに了承した。

 一族の存続を背負い、私は旅に出たのだった。






 旅を始めて、ようやく私は勇者パーティーの情報を掴んだ。

 相手の情報屋は、白衣を纏った研究員だった。その研究員はとても親身にしてくれた。危うく自分の身分さえ明かしてしまいそうになる程、信頼していた。


 研究員が言うには、まずは商人になる事。それが勇者パーティーに入るための前提条件だそうだ。勇者パーティーには商人が不足しているらしく、そこを補うためにこの街にやってくるそうだ。

 商人なんて私には全然分からないけど、大抵のことはその研究員が手伝ってくれるという。商人になるために必要な試験の費用も、勇者になってから返せば問題ないと。

 少しでも勇者パーティーに近付くために、私は日々商人試験を頑張った。研究員の方も、私が勇者パーティーに入るため、出来ることは何でもすると言ってくれた。勇者の耳に入るような噂も流しておいたと言われ、益々勇者パーティーに入る事に近付けた気がした。


 でも、私は商人にはなれない。

 試験に受からないのだ。

 確かに、ずっと剣と共に過ごしてきたんだ。他の知識は無い。それこそ、人間達の常識ももしかしたら欠けているのかもしれない。

 無理だと思った矢先、幸運が訪れた。


 私に頻繁に接触してきたストーカーの男が、勇者パーティーの一味だというのだ。

 これはチャンスだと思い、話をしてみると、凶悪な事実が浮き彫りになった。

 別に勇者パーティーには商人じゃなくても入れるとの事。確かに商人は居ないが、別に必要な人材かどうかは勇者本人が決めることであり、そのストーカーも元は冒険者をやっていたという。


 じゃあ、今までの私のしてきた事は何だったんだろう。

 借金までして、何をバカな事をしていたんだろうという思いが、勇者パーティーに近付けた思いより大きくなり、とても感情が揺らいだ。


 その時だった。

 心臓の鼓動がバクンッと大きくなる。

 2回、3回、とそれは続き、そしてやがて大きな鼓動は私の精神すら飲み込んでいった。




 バクンッ、バクンッ、バクンッ!

 バクンッ、バクンッ、バクンッ!

 私の中は、その音で埋め尽くされていた。

 もう他の音は何も聞こえない。

 ああ、これが覚醒ってヤツなんだ。

 今までは超満月の度に、眠ってやり過ごしていたから分からなかったけど、その時の自分はいつもこうだったんだと思うと、とたんに恐怖感が増してきた。


 ごめんね、お父さん、お母さん、約束、守れそうにないの。

 死にはしないよ。

 でも、私、勇者パーティーの一人を傷付けると思う。そうなれば、もう目的なんて……。


 ううん、この際、目的なんてどうでもいい。

 私はこの力で誰も傷付けたくない。こんな訳の分からない力で、人間が恐れた力で、誰も傷付けたくない! 

 少しでいいから、鳴りやんでよ!!




「……にげ、なさい。私は……弱いから、力を……制御でき、ないの――――」




「……逃げて……く、あああああっ!!――」

 

 



 どうにか、彼を逃がす事が出来た。

 ちょっとだけ、自分の事を見直した。

 弱い自分だと思ってた。いや、実際、まだ弱いんだと思う。

 でも、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、やるじゃない、私。




 でも、次に意識がはっきりしたのは、何故か洞窟のど真ん中。

 しかも鎖で拘束されているし、床には魔方陣が起動されている。

 そして現れたのは、あの研究員。でも、後ろに影が見える。あれは……多分、悪魔だと思う。とても邪な力を感じた。


 ああ、これが彼の目的だったんだ。

 なんだ、最初から見破ってたんだ。私が幻兎族だって知ってて接触してきたんだ。バカだったんだ、私は。ひもじくなってた時に優しくされ、自分のためだと思ってた行動が、全部彼の研究のためだったんだ。

 悔しくて涙が出た。

 でも、その涙すら、研究材料だと彼は採集する。


 殺してやる! なんて、思えど力は出ないし、何よりも拘束している鎖が重い。

 床の魔方陣からは、月から供給される魔力を吸収してどこかへ送り出す効果があると彼は言う。

 私はもう、籠の中の兎。何も出来ないし、用済みになったら捨てられる、儚い小動物。


 ここは迷宮で、しかも次元がひん曲がってて誰もこの場所には来ることが出来ないらしい。

 助けだって、意味がない。

 泣くことすら叶わない、私は……本当に無力だ。







 ―――――それでも、ちょっとだけ、



 ―――――最後に1回くらいは願わさせてよ。



 ―――――誰でもいいからさ、私を……




「……助けてよ……」




 儚く呟いたその声が誰かに届く事はない。

 普通なら届かない。研究員はそう言った。

 でも、私の声は確実に……彼に届いたじゃない……!!




「……カリーナ」



 彼が私の名前を呼ぶ。

 憔悴しきって、涙はでないけど。

 それでも、絞り出して声を出した。


「……あんたは……なんで……ここに?」


 その声に彼は応じず、それでも真剣な表情で研究員を睨み付けた。

 助けに来てくれた。

 ああ、彼こそ、私の本当の勇者……。




 私には、私を助けてくれる人が居たんだ……。





 



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