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勇者パーティーとカリーナの行方

さ、3万PVありがとうございます!

出来るだけ早い更新を心得ます〜!

 カリーナを探すために俺とシオンは森の中を歩いている。

 ロイズの示した位置までは、あとちょっとだけかかる距離だ。時間で言うなら、あと10分もかからない距離だが、いかんせん場所が悪い。

 森の最深部に近いという事もあり、手入れが全然されていない。まともに歩くことさえ難しい獣道を俺達は今歩いている。


 こんなルートを、カリーナは通ったのだろうか。……なんて、そんな事を思ったが、考えてみればそうだ、超満月が出ている期間に、偶然にもそこに辿り着いたんだろう。あの状態なら、こんな場所なんて屁でもないだろうし。


 だとすると、次に考えられる注意点は、水と食料の確保。この森には食べられる木の実があるとは言え、その木の実をカリーナが見付けられるか? ま、無理だよな。

 なんせ、試験でずっと落ちているぐらいの残念な頭を持ってるんだからな。超満月の覚醒状態ならともかく、ただのカリーナには無理だ。


 だからこそ、俺達が向かっている。アイテムボックスのスキルを持った勇者なら、態々(わざわざ)重たいバックパックやリュックなどを持つ必要は無いし、何より少数の方が動きやすい。

 敵と戦うより、敵との接触を避けてカリーナと合流するのが目的だし、俺とシオンの二人だけのパーティーが一番適任だと思う。


 で、その肝心のシオンなんだが、


「くそっ! なんでこう、私だけが易々と自然のトラップに引っ掛かるんだ!? ユクスが前進して安全を確かめているのにも関わらず、何故私が!? も、もしやユクス! 貴様か!? 私が羞恥に屈している光景を見たいが為にわざと……!?」


「抜かせバカ野郎。誰がそんな事するか。俺も疑問だよ、それに関しては。足元注意しろとは言ってるんだが、どうしてそうなるのかねぇ」


 色々と始まって間もないのだが、もう既にシオンの服はボロボロだ。擦り傷とかもそうなのだが、一番目立つのは泥汚れ。コイツいっつも転んでんな。


「いっその事、そのブーツ買い換えたらいいんじゃねえの?」


「ば、バカ者! このブーツは私が昔から愛用している……うひゃぁぁ!?」


 あーあ、また転びやがった。

 ブーツなら、滑り止めぐらい付いてるだろうに、恐らく長年愛用し続けた結果なんだろう。

 靴底が磨り減ってるんだろうなぁ。

 ……今度、靴屋にでも一緒に行くか。俺もそろそろ新しい靴は欲しいと思ってたし。


「……なんて、一応シリアスな依頼中なんだけどな、今。……おーい、早く行くぞシオン。もたもたしてるとカザイに先を越されちまう」


「あいたたた……。うう、なんでまた私が……」


「凛として格好いい皆の憧れの勇者様も、蓋を開ければこんなドジっ子勇者とはな……。ほら手を貸せよ」


 差し出した手を素直に勇者は掴んだ。

 一気に引き起こすと、その反動で勇者のお尻に付いていた泥がパラパラと落ちる。勇者は赤い顔で小さく礼を言った。

 もう何度目だよ、なんて後が怖くて言えないが、少なくとも俺が見飽きるぐらい転んでるから赤い顔なんてしなくていいと思うけどなぁ。

 そんな事を思いながら歩いていると、後ろから勇者の声が聞こえた。


「……何故お前は転ばないんだ。私の方が少なくともユクスより五感は冴えている筈なのに……」


「口を開けばすぐ俺の文句か。まぁ、悔しいけど、身体能力とかその他諸々は確かにシオンの方が俺より数倍上だ。気配察知だってそうだと思う。けど、例えばシオンの気配察知は殺気なんかを感じ取って反応するだろ? だから、天然の木の根っことか、泥濘ぬかるみなんかに足を取られるんだよ。殺気を感じるのも大事だが、殺気以外にも目を配らせろよ。特にこういう森林地帯とか、な」


「……むぅぅぅぅ!!! 」


 俺が的確にアドバイスしてやってんのに、コイツ口を膨らませて威嚇してきやがった。子供かよ……。


「っと、あれじゃねえか? ロイズが言ってた洞窟ってのは」


 ちょうど森の緑が消えてきた頃、視界に映ったのは、小さな洞窟だった。いや、出入り口が狭いだけで、中がどうなってるのか知らないが。存外、大きな迷宮とかになってたり、してな。


「……何か感じるな。まだよく分からないが、あの洞窟に何かあるのは間違いない」


「……それがカリーナならいいんだがな……って、隠れろ! 誰かいる!」


 俺はシオンと共に即座に木々の後ろに隠れる。

 俺は腰の魔導書に手を当て、シオンはいつでも聖剣を抜刀できる構えをして、やってきた人物を確認する。

 本当は、この魔導書をシオンの前で使いたく無いんだがな……!


「……見張りか? 恐らく二人だけ、装備は腰のナイフみたいな短剣だけだと思う」

 

「……どうする? あの洞窟、見たところ出入り口は1つしか無さそうだが? もう少し見回ってみるか?」


「そうだな、もう少し迂回して探索するのもありか……。っつっても、ここももうカザイに占拠されてるな、こりゃ……」


「……なら、カリーナは既に敵の手中にあるって事になるか」


 ロイズの示した洞窟とはこの場所で間違いない筈だ。ロイズが水晶で探していた時は、まだカザイ達はこの場所に来ていなかったんだ。今みたいに見張りが居るなら、ロイズなら気付かない訳がない。

 なら、時間的にはいつになる? ロイズの与太話の時ぐらいには、ここを占拠していたのか? 


 でも、それは少しおかしい事になる。


 何故なら、カザイの研究施設は街の一番端の方の地下施設にあった。その位置はこの場所と真逆に位置している。時間的にこの短時間で、地図や目星も無しにこの洞窟を見付けて占拠するなんて、時間的に不可能に近い。

 地下通路を通ったとしても、多少はルートを短縮出来るかもしれないが、実質的な位置関係を根本的に覆す事には繋がらない……。


 ……ちょっと待てよ? そう言えば、あの研究施設で俺はカザイに、高位とされている空間魔法を使われたよな?

 もし、それを使ったなら、距離も時間も関係無い……。だが、そんな高位な空間魔法を連発できるのか? 少なくとも、あの時に2回は発動している。自身の魔力が持つのか? 転移系なら、その質量に応じて魔力を消費するらしいが、そんな魔力をカザイにあるとは到底思えない。

 なら、あとの手懸かりは……。あれか! 俺が転移する直前に見た、あの漆黒の羽。あれが関係している……? でも、あれが何かも分からないし、そもそも転移魔法の理屈すら分からないのに、何を考えればいいんだよ……。


「……ユクス、洞窟を見ろ。誰か出てきたぞ」


「……本当だ。あれは……確か、フウリンと言った筈だ。カザイの部下の一人で、多分、一番信頼されてる奴だと思う。……あいつまで来てるのか……」


 さらに状況は悪くなったか……。

 いや、逆に考えろ。何故このタイミングでフウリンが出てきたか……。いや、まだ分からない。時間だって、まだある筈だ。

 超満月まで……あと二時間は絶対にある筈。

 だってまだ、夕暮れだってまだ見えな――。




 瞬間、文字通りに――夜が始まった。

 まだ明るかった世界は一瞬にして帳が落ち、太陽の代わりに、普段よりも大きな月が姿を表していた。その光は、もはや太陽光よりも光輝いているように見えた。



「………………な、何が起こった、今……」


「……分からん。が、多量の魔力を感じる……。場所は、洞窟の中から2ヶ所だ! 1つは多分、カザイのものだぞ!」


「やっぱカザイだよな! 奴は……中に居る!」


 そうだ、この夜が欲しかった筈だ。

 この異常なほど近くに感じる満月。超満月の力を使って、カリーナの潜在能力……心の根底に眠ったままの力を解放する為に。

 その鍵が、満月。

 これは、まさか転移魔法の応用か? 次元を越えて、夜をここに顕現させた? バカな。そんな事、出来るのか?


「……昨日の月といい、今出現した月といい、今日は月が近いな……」


 考え事を巡らせていると、勇者が独りでに喋った。


「……超満月って言うらしい。昔の人間は、この現象を神の仕業だとして、祭りをしていたらしいぜ?」


「今は、この月は別の使い方をするための鍵でしか無いのだろう? 言わずとも分かるさ、先程感知した魔力が大きい奴ら、その片方の魔力が増大している! だがこのペース、本当に人間が持てる魔力量なのか!?」


 決まった。この洞窟、どこからか月の光を吸収できる場所がある。

 そこにカザイはいる筈だ。そして今も尚、魔力を月から供給している最中のカリーナも一緒にいる。勇者がさっきから感知している、魔力が大きくなっていく人物とはカリーナで間違いない。


「……時間がない。あの洞窟に侵入しよう。早くしないと、取り返しの付かない事になる」


「……でもどうする? 唯一の出入り口を封鎖してるとなると、裏口でも探すか? ……それとも、暴れるか?」


 なんて、隣で勇者が微笑んだ。言ってることは物騒極まりないんだけど。


「……やっぱ、お前は裏でコソコソやってるより、バーサーカーしてる方が似合ってるよ。あぁ、それと、勘づいてるかもしれんが、あいつらは悪人だ。容赦するな」


「バーサーカー言うな、バカ。だが、悪人相手なら手加減はしない。勇者シオン・リンクライト、打って出るッ!!」


 そう言うと、聖剣を抜刀し、木陰から一気にフウリンまで距離を積めて聖剣を振るった。

 聖剣の軌道は右肩辺りを狙っている。目的は殺傷じゃなくて行動不能か。


「……甘いです。聖剣に選ばれし勇者シオン。私の羽は、そんなに脆くはない」


 ガキィィンッ!! と、金属と金属が交差するような、そんな頭に響く音が聞こえた。


「……お前! その羽、まさか魔族と!?」


 そう、フウリンの背中には羽が生えていた

 その羽は、聖剣の一振りさえ諸ともせず、それよりも勇者を弾き飛ばすぐらい強固だった。


 よく見れば、背後から影のような漆黒が、フウリンに取り憑いていた。それは、白く長い髪に、だらりとした長い手、そして鋭い爪。顔は黒いモヤで覆われているが、その真っ白で何もない瞳は真っ直ぐにこちらに向いていた。ただ、禍々しいとしか思えなかった。


 月明かりに照らされ、フウリンの短い髪が段々と白に変化していく。

 これは、見たことがある。

 これは、この光景は……。


「……貴様、落ちたな……。貴様は! 魔族と……悪魔と契約したなッ!?」


 悪魔との契約。

 魂の何割かの讓渡と引き換えに、悪魔の力を手に入れる行為。そして、それを行う事を禁忌とされた、忘れ去られし古の魔法。

 この世界で、契約魔法は禁忌とされている。

 理由は――――


「……バカがっ! 早く契約を破棄しろ! 帰って来れなくなるぞ!?」


 帰ってこれない。

 シオンが言った言葉だが、その通りである。

 そのままの意味で、契約を続けると魂がこちらに帰ってこなくなる。正確には、魂を魔族が削りきってしまう。肉体だけでは生きる事は不可能だ。魂がなければ、それは器でしかない。

 簡単に言えば、この契約魔法は――命を削る行為だ。


「……承知の上だ。私はカザイ様を守る為に生まれ育った人間だ。カザイ様を守って死ぬのならば、それは本望だ! さァ……力を寄越セよ、魔族メフィリア!! 行クぞ、勇者シオン!!!」


 段々と、フウリンの声が変わっていく。

 それに呼応して、フウリンに取り憑いているあの影がより一層濃くなっている。

 フウリンが、また1歩、魔族に近付いた。

 瞬きの一瞬で、フウリンは消えた。残っているのは黒い鳥の羽が数本。そして、地を蹴った跡。


「……クソ……バカ野郎が……。この、バカ野郎がぁぁッ!!」


 フウリンが腰の短剣を抜いて勇者に突撃する。

 勇者も聖剣に光を灯して応戦した。

 剣と剣のぶつかり合い。その衝撃はこの森全土を震撼させる。俺も、踏ん張ってなければすぐに飛ばされそうだ。

 だが、衝撃に巻き込まれたカザイの部下の見張りは、どこか遠くに吹き飛ばされていった。あの高度から落ちれば……。くそッ!


「……悪魔ごときと契約しやがって……。早く契約を破棄しろッ!」


「カザイ様の目的が達せられレばそうしヨう! 今は、この力を持っテ、ただお前を殺ス!」


「この、分らず屋がぁぁぁッ!!」


 鍔迫り合いを制したのは勇者だった。

 フウリンを力だけで吹き飛ばし、シオンは俺に言った。


「ここは私が食い止める! 早くカリーナを見付けて脱出するぞ!」


 間開けずに俺は木陰から飛び出し、そのまま洞窟へと駆け込んだ。

 顔を向けず、背中と背中だけを向けた状態で俺達は言葉を交わしあう。


「……頼んだぞ勇者! 絶対に死ぬな!」


「……ああ、任せろ! …………だが、実際のところは……」


 そして、俺が見えなくなった後。

 勇者は吹き飛ばされ、背中を地面に叩き付けられた筈なのに今だ無傷のフウリンを睨んで言った。


「……殺さずに捕縛できる自信がないがな……」


 やってみろ、と言うようにフウリンは人差し指をクイッと動かして勇者を挑発する。

 それにわざと乗るように、勇者は地面を蹴った。




 ここに、魔族と勇者による大決戦が始まった。





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