表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/50

魔族王子と商人志望の少女

投稿期間があいてしまい、すみませんでした。

またぼちぼち更新していきます。

 翌日、十分な睡眠を取った勇者と共に、商人ギルドの本部の前まで来ていた。

 間近で見る機会が無かったのか、勇者も『おー……』と驚いていた。

 入口の扉を開け、大理石の床の上を歩いて進む。大きなエントランスにも勇者は再び驚いていた。


 さて、俺達はこの商人ギルドのグランドマスターたる、ロイズ・クーレンダルトに話を伺うために受付カウンターに歩み寄る。


「あのー、この商人ギルドのグランドマスターの方に会いたいんですけど、今は大丈夫ですか?」


「ええと、すみませんが、ご連絡はお入れでしょうか?」


 だよな、商人ギルドのグランドマスターだもんな。連絡入れてなければすぐに会えるはずないよな。

 と俺は思ったのだが、そこに横槍を入れたのは勇者であるシオンだった。


「いや、連絡は入れていないが、勇者パーティーが来たと言って貰えれば通してもらえるか?」


「は、はひっ!? 勇者様でしたのですか!? す、すみません、只今確認いたします!」


 そそくさとカウンターの後ろの部屋へと駆け出す受付嬢。

 そこでフォローを入れたのが、隣の受付嬢だった。先日、カリーナの件で世話になった受付嬢だ。


「すみません勇者様。彼女はまだ新入りでして、勇者様の事を知らなかったのです。マニュアルの方をちゃんと読んでおくように言いますので、ご無礼をお許しくださいませ」


「い、いや、何もそこまで……。私は大丈夫だからそう畏まらないでくれ」


「ありがとうございます、今後ともよろしくお願いいたします」


 ぺこりとお辞儀をする受付嬢。

 この人は若そうに見えて、結構ベテランの香りがするな……。

 そうしている内に、先程の受付嬢が帰ってきた。


「すみません! お待たせしました! グランドマスターから、勇者様のみでしたら面会をするとの事です。ですので、お連れ様は申し訳ありませんが、あちらの休憩スペースの方でおくつろぎくださいませ」


 勇者1人のみ、ね。

 警戒しているんだろうけど、まぁ妥当な判断か。

 シオンだから、大丈夫だとは思うが……。


「じゃあそう言うことだ。万が一ってのがあるからな。用心だけしておけよ」


「大丈夫だ。私を誰だと思っている?」


 そう言った勇者は、案内をする受付嬢の後に続いてカウンターの奥へと消えていった。

 これであと俺に出来ることは、有益な情報を貰えるように祈るだけか。

 せめて迷宮の場所程度の情報は欲しいところだ。


「……あ、あの。すみません、少しよろしいですか?」


「んぃ?」


 どうしようか迷っていると、もう一人の受付嬢から声をかけられた。

 やべ、いきなりだから変な声を出してしまった……。恥ずかしい。


「実は、カリーナさんの事でお話がありまして……。その、言いにくいのですが、今回も筆記試験は落ちてしまっていて……」


「……また落ちたのか……。これであと1回しか受けられないな。あいつもどうするんだろうかなぁ」

 

「……まだ、結果はお伝えしていないのですが、このままのペースですと、明日にでもまた試験を受けに来そうですので、せめてもっと勉強してから来てほしいと、お手数ですがお伝えして貰ってもよろしいですか?」


 確か……1年に15回だったよな、一般枠での試験は。

 まぁでも、あんな他人を嫌ってるようじゃ、俺も含めて誰も相手にはしないだろうよ。

 というか、そもそもなんであいつは商人になろうとしているのか分からない。見た目は絶対に冒険者……それも前衛でバリバリ戦うタイプのものだし。


 どうでもいいとは思ったけど、ここまで何に対して執着しているのかは気になるな。

 ま、機会があればって感じか。


「毎度言うけど、そこまで親しくないからな? だから絶対に伝えてくれって言う頼み事は無しだ。機会があれば言うだけだから」


「それでいいんです。カリーナさんの事、よろしくお願いいたしますね!」


 無駄に笑顔だった。

 この商人ギルド側からすれば、毎日お金を持ってくるカモだというのに、何をそこまで心配するんだろうか。

 魔族の俺には分からない心理……的な何かだろうか?


「ま、よろしくするつもりは無いけど、出会ったら言うさ。じゃあそういう事で……」


「何? またあんたなの。で、私に何の用?」


「……うぇ!? お、おま、カリーナ!? 何でここに!?」


「……私、あんたに自分の名前なんて教えたっけ? 教えてないわよね? あんた何なの? 私のストーカー? そういうのウザいから消えてほしいんだけど」


「……こいつ、相変わらず口悪いな……。別に今回はお前に会おうなんて思っちゃいねぇよ。前回のおばあさんも居ないしな」


「だったらどきなさいよ。私はそこに用があるんだから」


 あーそーかよ、と俺は一端その場をカリーナに譲る。少し離れて受付嬢とカリーナの話を眺めていた。

 少し話をしていた後、突然にカリーナが脱兎のように走ってこの建物から出ていった。

 何事かと受付嬢の方を向く。

 受付嬢の表情も、落ち込んでいるように見えた。

 すぐに受付の方まで駆けていく。


「……何かあったのか?」


「……あ、いえ。その、試験の事を話していて、やっぱり、試験を受けられる回数の事を知らなかったみたいで……」


「ああ、だからあんなに絶望してたのか」


 カリーナが先程、走っている時の表情がフラッシュバックする。

 カリーナは、絶望を抱いて涙を流していた。


「……何をそこまで早く商人になりたいんだろうなぁ。別に一年かけてゆっくり商人を学べば良いだろうに……」


 そう呟いた。

 なんか、冷めたな……。

 あんな表情を見てしまった後、嘲笑うなんて鬼みたいな事、俺はできないし。

 なんなら、逆に興味が沸いたぐらいだ。


「すみません、私の言い方が悪かったかもしれないです……」


 受付嬢がそう言う。

 いや、根本的に違うんだろう。

 悪いのは、話も聞かずに試験を受け続けていたカリーナだ。この話の責任を負うのはきっと、この人じゃない。

 だからこそ、何をそこまで商人にこだわる?

 ここまで試験を落ち続けていると、どんなバカでも流石に何か思うことはあるだろう。

 商人に向いてない、とまでは思わないだろうが、もっと勉強しなくちゃ、とは思う筈だ。


 だが、連日、試験を受け続けている。

 その理由はなんだ。

 

 俺は、どうやらあの頭の悪いアイツに興味を抱いたらしい。

 何かが引っ掛かる気がするんだが……。


「あの、そう言えば、こんな噂を聞いたことがあるんです」


 ふと、受付嬢がそう言った。


「カリーナさん、あまり評判の良くない人と絡んでるって……。もしかしたら、そこに早く商人にならなくちゃいけない原因があったり……って、噂ですもんね、すみません。忘れてください」


「……さぁ、どうなんだろうな」


 良くない奴等……ね。

 俺は、再びその場を離れる。

 そして考えた。


 カリーナには謎が多すぎる。や、俺が知らないだけってのが殆どだけれども。でも、まぁ謎は多いだろ。客観的に見て。

 そしてその一つに、金の工面がある。

 決して安くはない金を払って、毎日商人になるために試験を受け続けている。

 さて、その金を払い続け、尚且つ生活面でも金を払わなきゃいけない。そりゃそうだろ、生活費はバカにならん。

 じゃあその金はどこから来る? 

 身なりからして貴族じゃない。


 この街に冒険者ギルドは無い。周辺の森林系のダンジョンには定期的に金で傭兵を雇ったり、俺や勇者みたいに訪れた冒険者に頼むこともある他、商人試験等でも魔物の駆除はするからと、冒険者ギルドは必要ないらしい。

 つまり冒険者ギルドが無い為、冒険者にとっての収入源である【ギルドの依頼】は使えない。小さい魔物の駆除なんかは商人ギルドでも承っているらしいが、報酬金は出るけども、その日暮らしが出来るような額ではない。


 それらを踏まえた上で、あの噂。

 さて、何かが見えてきたような気がするな。

 噂の信憑性も上がってきた。


 何か、あるな。

 少なくとも、他人に言えない秘密をカリーナは持っている。


「少し、調べてみるか」


 俺は、三度みたび、カウンターの方まで歩く。

 そして、受付嬢に『用事が出来たから、勇者には先に宿に帰っていてくれ』と伝えた。


 そして俺は、商人ギルド本部を出る。

 そう遠くに行ってない筈だ。

 まずはカリーナを探さなくちゃな。

 







     ◇






 街の広場を抜け、大通りの方面に行く途中の道でカリーナを発見し、今は彼女を尾行している最中だ。

 そう言えば、先程カリーナにストーカーと言われたが、いよいよ本物のストーカーと言われても反論できなくなってきた気がするが、無視しよう。


 通りを歩いていると、カリーナはふと止まり、辺りをキョロキョロと見渡した後、裏路地の方に入っていった。

 お、ついに進展があったか? 

 俺もその裏路地の方に向かって歩いた。

 すると――


「なぁねーちゃん。少しだけ俺らと遊ぼうよ~」


「つか、こんな裏路地に一人だけってヤバくない? なに? 誘ってんの?」


「ハハハハ! 無理矢理されたいんじゃねーの?」


「ちょ、ちょっと! 離しなさいよ! ただ単に道をショートカットしたかっただけよ! あんた達と絡む気はないんだから!」


 そこには男三人組とカリーナが言い争っている光景があった。

 男達はカリーナを囲むように陣取り、しまいには彼女の細い腕を掴んでいた。

 最初、やっぱり柄の悪い奴等と闇商売的な事をしているのかと思ったが、違うらしい。

 これ、単に絡まれてるだけか……?


「いーじゃん、俺らと気持ちよくなろーよー?」


「は、離してよ! 近付かないで!」


「つか、こんな人目につかないとこなら大丈夫じゃね? やっちまう?」


「さんせー!」


「……嫌、来ないで……! 離してよっ!」


 うわ、ガチだ。

 しかもこんな狭い所じゃあのバカでかい太刀も使えないだろうし、何より3対1じゃ部が悪い。

 あんまし顔を出したく無いんだけどなぁ……。

 仕方無いか……。


「やーゴメンなー! 少し遅れたわー! 予約の時間まであんまし無いから、早くいこうぜ! っと、ちょっとすみませんねー! ほら、行くぞー」


 っと、強引に男を払い除け、カリーナの手を取って路地裏を抜けようとした。

 あまりに突拍子のない行動に、男三人はおろか、カリーナまでもポカンと口を開けていた。


「……って、待てコラァ! いきなりなんだテメェ!」


 が、そう上手くはいかないもんだ。

 いち早く、正気に戻った男に肩を掴まれた。


「おい、待てよ兄ちゃん。いきなりなんなんだよ。舐めてんの?」


「こっち向けよ、おい!」


 強引に振り向かされ、男と対面する。

 さて、これからどうしたもんかな……。

 そう思っていると……。

 

「ったく、痛い目見たくなきゃ、金払ってとっとと失せろ。さもなきゃ……って、お前、その顔、まさか……勇者パーティーに唯一選ばれている魔法使いじゃ……!?」






 んんんんん???????





「ん、んなわけねーだろ!!? 大体、そんな奴こんなところに来ねーよ!」


「そ、そうだよな……。ビックリさせんなよ。ったく」





 ――――――あい?


 ちょ、ちょっと、ちょっと待ってくれ。

 え、俺、顔バレしてんの? 

 え? この街の、こんなチンピラにすら、俺の顔ってバレてんの?


 ちょ、これはマズいんじゃ……。

 確かに、勇者パーティーに唯一俺しか居ないってなると、存在感とかそんな事関係ないよな……。いくら存在感を無くそうとしても、二人しか居ないって……。

 くっ……本当に盲点だった。油断していた。



 これ、魔族に聞かれたら、色々と不味いことにしかならない運命が見える……。

 勇者に正体がバレたり……、いやそれよりも勇者パーティーに魔族の……しかも魔王直属の息子が入っていたとなると、シオンの方にも面倒な事が起きる気がする……。


 これは早急に策を練らなければ……。


「お、おい! 聞いてんのかテメー!!?」


「シカトくれてんじゃねーぞボケが!!」


「ぶっ殺すぞマジで!!!」





「――うるせええええ!!!!!」



 ドゴォォォン!!!  と、大きな音を立てて、周囲にあった物という物が弾け飛んだ。

 ちなみにその中にはさっきの男三人組も含まれます。


「………やべ、やっちまった」


 穏便に事を進めるつもりが、つい衝動的に魔法をぶっぱなしてしまった。

 ちなみに無詠唱で唱えた魔法は【タービュランス】。風属性の魔法で、周囲の物を吹き飛ばす程度の魔法だ。詠唱つきでは割りと火力が出るが、無詠唱ではこの程度に収まる。


「……え、この威力……あんた、本当に……」


 隣でカリーナが何か言っている。

 が、それ以上に聞こえてくるのは野次馬の声。

 ま、まずい。

 この状況で無罪を主張するには証拠が足りなすぎる。

 まずは、ともかく。


「と、とりあえず逃げるぞ!」


「え、ちょ、ちょっと!」


 困惑するカリーナの手を取って、俺達はその場を後にした。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ