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魔族王子と商人ギルド

追記 小説を少し訂正いたしました。

 メインストリートをブラブラすること早30分。

 俺はこのメインストリートが既に恐ろしい場所である事を知ってしまった。

 

 気が付けば、所持金が半分になっていたのだ。

 そして手には美味しそうな果実や、加護の効果があると言われている御守りやらがある。

 ああ、本当に恐ろしい場所だ、ここは。

 未知という武器を主力に、完全に俺を喰いに来てやがる。


「おっ、そこのあんちゃん! 今ならフルーツ盛り合わせが半額だけど、どう? 他では買えないピピロの実ってのもつけるからさぁ!」


「……な、なんだと!? あの、産地不明で希少価値が高いとされている、ピピロの実だと!? か、買ったー!!!」


「……フフフ、毎度あり!」


 俺は数々のフルーツが入った籠を貰い、再び歩き出した。

 籠の中には既に買ってあるフルーツもあったが、今はそんなことどうでも良い。今はピピロの実が先だ。

 すぐに籠からピピロの実を取り出して口に放りこむ。


「……うげぇ、ピピロの実ってこんなに苦いのかよ……。もっと甘いのかと思ったわ……」


 ……誤算だった。

 植物の知識なら一通り頭にあるが、それでもピピロの実のように、希少価値が高い等として一般的な市場に出ていないものだと、どうしても分からない物はある。

 まぁ、これで知識が1つ増えたということで良かったと思っておくか。




 ……………………はっ!?




「……しまった。また、やられた。知らない食べ物に釣られてまた余計な金を……。しかも今の金貨一枚だし……」


 本当に恐ろしい場所である。

 これが何回も続くのだから、必然的に財布はどんどん軽くなる一方だ。

 

 ……やめだやめだ。

 メインストリートに居たら、所持金をすべて失う事になる。

 商業都市に来て一文無しはダメだろう。

 ……いや、有りか? どうせいつかは無くなるお金だし、ここで使った方が何かと安かったり得だったりしないだろうか……。


 って、もう既にこの考えがヤバイ。

 これ以上の浪費は勘弁だ。

 俺は一目散に、逃げるように走ってメインストリートから脱出した。


 そして着いたのは、管理区と呼ばれる区域。

 眼前には大きな大きな建物がある。

 商人ギルドの本部だ。


 ――そういえば、ここって何が出来るんだ?

 商人になりたい奴ならともかく、先程から俺みたいな完全に商人志望や商人ではない奴等がこの建物に入っていくのを見かけている。

 何か、俺でも出来るのがあるんだろうか。


「……ちょっと、入ってみるか」


 気にはなっていたしな、この建物の内部構造とか。

 俺は扉を開けて建物の中へと進んだ。

 

「……うぉ、こりゃすげぇな」


 床は大理石で作られており、天井が反射して見えるぐらいに清潔に保たれており、ギルドカウンターは、俺のよく知る冒険者ギルドのカウンターとはまるで違い、幾つも窓口があった。

 流石は総本山と言ったところだろうか。既に規模が違う。


「……で、来てみたはいいけど、俺、完全にやることないな。ウロウロしてるのも変に目立つし、そこのパンフレットでも見て時間を潰そうかね」


 とりあえず椅子に座って、無料配布のパンフレットを読んでみた。 

 何気なく手に取ったこのパンフレットは、商人になるために必要な知識とは何か、とかいうものだった。どうやら、商人ギルドに登録する為に必要な勉強に関してのパンフレットだったらしい。

 

 読んでみると案外面白かったりして、ついつい最後まで目がいってしまう。

 どうやら、商人試験に合格しなければ、商人ギルドに登録できず、職業としては認められないらしい。

 商人試験は、2つの科目があり、1つは筆記試験。そしてもう1つは実技試験だとか。

 筆記試験は、その名の通り、商人が覚えておかねばならない最低限の知識を問題として出題し、それを解答欄に書くというシンプルなものらしいが、非常に範囲が広く、一筋縄ではいかないという。

 実技試験は、実際に、この都市の周辺の地域から出題されたものを納品するというもの。まぁ、その通りに危険らしいが、これも商人になる為には必要不可欠なものなんだとか。時には行動も大事、とかその辺だろ。


「お、模擬問題集あんじゃん。ちょいやってみっか」


 先程、手に取ったパンフレットの近くに、お試し番で、無料配布している模擬問題集があった。

 暇潰しにはちょうど良い。

 俺も結構知識には自信がある。

 商人になるための試験だろうから、予想以上に難しいんだろうけど、まぁお試しだし気楽にやってみようと思う。別に商人になりたい訳じゃないしな。


 


 …………おっふ。

 なんというか、思いの外簡単だった。と言うのが率直な感想だ。

 まぁ模擬だし、基礎中の基礎しか出さないのは最初から分かってるんだけどさ。

 この問題集には、例えば、ワイバーンの肉はどんな特徴があるか、とか、次の図の植物はどれか、選択肢から選びなさい、だとか、そんな問題ばかりだった。

 こんなの、魔国に居た頃に一通り叩き込まれたんですけども。


 まぁでも、確かにこの程度は知らないと商人にはなれないわな。

 模擬問題集で躓いてるようじゃ未来はないだろうし。

 って、そんなやつ、この場所にはいないか。


「あら、あんた、この問題が解けたのね。いやぁ、すごいねぇ。見たところ、商人になりたいって訳じゃないのに、頭も良いんだねぇ」


 っと、問題を解いてるところを見られていたらしい。

 声をかけてくれたのは、杖をついたおばあさんだった。


「俺は見ての通り冒険者だけど、このくらいの知識は無いとやってけないよ。って言うか、俺もまだまだで、頭は全然良い方じゃないさ」


「ふふ、良い謙遜だねぇ。あんた、冒険者なのに立派だよ。あ、そうだ、あんたもしだったら私の頼み事を1つ頼まれてくれないか? ちゃんと代金は払うからさ」


「頼み事? 俺に出来る事なら、依頼として受けとるけど」


「ありがとうねぇ。……実はねぇ、最近、商人志望の女の子をよく見るんだけど、どうも上手くいってないらしく、いっつも酷く落ち込んで帰ってるんだよ。そこで、よかったらあんた、勉強を見て貰えないかい?」


「……いや、それは大丈夫だけど、その子、おばあさんの知り合いか何か?」


 俺はえらく肩入りするおばあさんを不思議がって聞いてみた。


「ただの知り合いさ。でも、この老いぼれとよく喋ってくれる、とてもいい人なのよねぇ。だから、あの子にはいつも元気でいて貰いたいのさ」


「……なるほど。でも、俺なんかで本当に大丈夫か? もう一回言うけど、俺は商人じゃないから。知識は恐らく基礎中の基礎しか無いから、それでも良いなら、その依頼を受けるけど……」


「……いいさいいさ。あぁ、でもお礼は明日でもいいかい? これから私は用事があって、ここを少し離れるから」


「まぁ、お礼は明日でも良いけど……って、依頼ってこれからすぐ!? いや、まぁ暇だからいいけどさ」


「ふふふ、ありがとうねぇ。恐らくもう少しで来ると思うけど……あ、あの子だよ。あの髪の長い子」


「……あー、分かった。ああ、いかにも頭悪そうな顔してるなぁ。服装も絶対に商人向けじゃないだろ。つか、あの子、太刀みたいなの帯刀してるけど……」


 建物の入り口から現れたのは、青く長い髪をなびかせ、鉄の胸当てにレザーマント、そして背中には彼女の身長よりも長いと思われる太刀を帯刀していた。

 見た目だけて判断するなら、俺と同じ冒険者なんだけど……おばあさん、あの子に向かって手を振ってるし、多分商人志望の女の子で間違いないと思う……。


 え、本当に商人志望なんだよね? 服装間違ってませんかね?


「……あら大変、もう時間だわ。じゃあ、私はこれで失礼するわね。では、あの子をお願いしますね」


「えちょ、おばあさん!? え!? 今すぐ居なくなんの!? って、おーい!」


 おばあさんは足早とギルドカウンターの奥へと姿を消した。

 あんなに足早いのに杖持ってる意味は? とか、なんであのおばあさんは顔パスでギルドカウンターよ奥へと行けたのかとか、それはもう色々な矛盾が俺の頭を過ったのだが、そんなことを言う暇は無いらしい。


「あれ、おばあちゃん向こう行っちゃった。なんでだろ、何かあったのかなー。今日は前回より3点もテストの結果が良かったって言いたかったのになー」


 と、それだけで頭が痛くなるような言葉を話しているのが、先程のおばあさんの言っていた人物だ。

 テストなどしたことないが、多分、俺が当初思っていたような頭の悪さを遥かに越えて来そうな勢いなんだが、これ、俺で大丈夫なのか? あのおばあさん、人選ミスってないか?


 まぁ、とりあえず少し話してみようか。


「……なぁ、君はあのおばあさんと知り合いか?」


 何事も第一印象は大事だ。

 爽やかに、そう、笑顔で話せば誰だって絡みやすい。

 まずは口角をあげて、優しい声で……


「あん? あんた誰よ。いきなり話しかけないで貰える? ウザい」


 ………………………なんだこの口悪女。

 

 俺がこれから、折角、わざわざ、懇切丁寧に、お前の頭を良くさせようと思っているのに、その態度はどうなんでしょうかねぇ?



 っと、危ない危ない。

 そりゃ、いきなり話しかけたら不思議に思うか。

 危うく逆ギレしてしまうところだった。

 ちゃんと説明しなけりゃな。


「いや、俺は怪しい奴じゃない。さっきのおばあさんに頼まれて、君の勉強の面倒を見てくれって頼まれたんだよ。あと、安心してくれ。基礎程度の問題なら余裕で解けるから」


 そう言うと、女の子は少し黙った。

 俺の姿を観察するように見たあと、


「ふーん、あそ。先に言っておくけど、私、別に勉強なんて必要ないから。本番は選択問題だからいつかは合格するから、あんたなんて知らないわ。じゃあね」


 あのおばあちゃんが居なくちゃいけないのに……。なんて声が聞こえたが、もう俺の耳にそんな言葉は入ってこない。

 

 女の子はスタスタと俺の前から離れていく。

 やがて見えなくなったところで、俺の怒りは限界点を越えた。


「………………上等だ……。そっちがその気なら絶対にただじゃ退かねえからな……」


 むさ苦しいほどの熱血タイプなら、ここで何がなんでも勉強を教えさせてやる! なんて抜かすかもしれないが、生憎、俺はそんな寛大な心を持ち合わせてはいない。

 俺がやるのはただ1つ。

 次の試験の結果を全力で嘲笑ってやる事だけだ。


 選択問題だから大丈夫だとか言ってたが、どうせ次も落ちるだろ、あの調子じゃ。

 もう立ち直れないぐらいにバキバキに心を折ってやるか……。


 となれば、まずやることは1つ。


「……すいません、ここの商人志望のテストって、次いつやるんですか?」


 俺はギルドカウンターの受付嬢にそう聞いた。

 すると、意外な事に、受付嬢はこう返す。


「商人志望の試験ですね。何事もなければ、ほぼ毎日しておりますよ。商人志望の方ですか?」


「あ、そうなんだ。あぁ、別に俺は商人志望じゃないんだけど、ちょっと噂でここに試験を何回も落ちてる女の子がいると知り合いから聞いてさ、そんなに難しいのかなって思って」


「あぁ、カリーナさんの事ですね。もしかして、彼女のお知り合いですか?」


「あ、いや、別に知り合いって訳じゃ無いんだけど……」


「なら、カリーナさんに伝言を伝えて貰ってもよろしいですか?」


「いやだから、あいつと知り合いなんかじゃな無いんだってば。伝言? そのくらい別に俺じゃなくてもいいだろ」


「いえ、内容が内容ですので、なるべく親しい方からの方がよろしいかと思いまして……」


 いやだから……と、これじゃイタチごっこじゃねぇかよ。

 まぁでも聞いとくだけ聞いておくか。別に言う言わないは俺の勝手だしな。それに、なんか雰囲気からして言いにくそうな話だし、あいつの――って、名前はカリーナって言うんだっけ。

 で、そのカリーナの弱味を握れれば上々。さて、その深そうな話って一体なんなんでしょーかね。


「実は……あの子、あと2回程、商人志望試験に落ちてしまうと、試験を受ける権利を剥奪されてしまうんです」




 …………お? 



「へぇ、ちょっと詳しく聞かせてもらえます?」


「……はい。まずは、商人になるための免許――言わばライセンスですね。それを取得するためには、主に2つの方法があります」


 受付嬢は、淡々と話を始めた。

 話しかけたのが一番端の人で良かった。ここならあまり周りには迷惑はかけないだろうし。

 ってか、この話も全然このカウンターでしていい話なんだけどさ。商人関係あるし。


「1つ目は、このギルドの上階にある商人育成学校に通うこと。ここで1年程、勉学に勤しんで頂ければ、卒業と同時にライセンスを取得できます」


 あ、学校だったのか。

 学校と言うと幼い頃を思い出すなぁ。

 学校なら友達もできただろうし、あんなに辛い生活じゃなかった筈だから。

 って、俺の過去より受付嬢の話を聞かなきゃな。


「2つ目は、一般で試験を受ける事です。この一般枠での利点は、合格さえすればすぐにライセンスを与えられる事ですね。ですが、試験問題はかなり上級者向けに作られており、いくら選択問題だとしても運任せに合格できるのは不可能です。この試験は100問で各1点ずつ、選択肢は4つずつあり、尚且つ合格ラインは98点という、かなり難しいのです」


 ああ、ちょっと前にパンフレットに書かれてあったのはこっちの方法か。

 ま、すぐにライセンスを貰えるにはそれ相応の知識が無けりゃいけないわな。この試験が難しいのは利に叶っていると思う。


「あーそりゃ確かに運では合格するのはほぼ無理だな」


「はい。そして、試験を受ける為には受験料が毎度掛かります。もちろん、学校に通う事の方がお金は掛かりますが、何度も受験されて落ちているようでしたら、学校に通うことをお薦めしますが……」


「あの子はずっと一般枠で受けている……ってことか」


「はい。私共からも学校の方が良いと薦めてはいるのですが、どうもすぐにライセンスが欲しいという事ですので、学校には通わないとおっしゃるのです。一般枠も毎日やっているとは言え、規則ではお一人様、年に15回まで利用可能になっておりまして……」


「あの子は何回落ちてるの?」


「………えぇと、申し上げにくいのですが……その、本日を含めまして、13回となっております……」


 ってことは、あと2回……。

 あいつに残された回数はあと2回か……。

 ふふ、この情報カードどうやって使って遊んでやろうか……。

 あぁ俺、今、過去1で悪いことやってるって自覚があるわ。


「分かった。ありがとう。あんまし会わないだろうけど、会ったら伝えておくよ。じゃ、今日は失礼する」


「いえ、すみません、長々と話してしまい……。また是非いらしてくださいね」


 俺は歩みを進めた。

 不気味な笑顔と共に、考える。




 さて、俺を侮辱した罪は重いぞ、カリーナ。

 絶対に見下すように笑ってやる、と心に誓った今日だった。




 が、今日この日こそ、俺の未来を変えるような出来事であった事は、当然、知るよしもないのであった。





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