69 一方その頃の二人 後編【視点:アマン】
明けましておめでとうございます。
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本話は終盤にちょっとだけ、別の人視点が混ざってます。混乱したらすみません(>_<)
「さて質問を始める前に、まず……何故、君たちの身柄が拘束され、こうやって尋問されているか。その点について説明しておこう」
「はい……」
確かにそれをすっ飛ばして、いきなり尋問されても、こちらとしても答える気が薄れてしまうというもの。
相手の身分が王城の兵であったとしても、正当な理由なくして、一方的な尋問など、相手が平民であっても認めがたい話だからだ。
もっとも……地方の領土じゃ、そんな理不尽も通ってしまう、というのが現実なので、絶対に無いとは言い切れないけれど。
「実はこの王都で不審な事件が多発していてな。先の下水道の一件もそうではないかと考えているんだ。それで少しでも情報を集めている状態、というわけだ。君たちは下水道で囚われていたそうだな? 辛いことを思い出させてしまうかもしれないが、知っていることを教えてもらいたいんだ」
「なるほど。ですが、そうならば拘束の必要はありませんし、何も目隠しまでしてこの場所の所在を隠す意義は無いように感じますが?」
すかさず、そう答えたのはメリアだ。
さすがだ。
僕なんかは、ジズさんがやや申し訳なさそうに眉を下げて下から言うものだから、迂闊にも肯定して終わるところだったけど、メリアはきちんと矛盾している部分を切り崩していく。
「端的に言えば、この件は王命による調査だからだ」
王命、という部分で僕は思わず身動ぎしてしまったが、メリアは微動だに姿勢を崩さない。
厳格な言葉に聞こえるが、ここは王都。王が管轄する領土であり、ヴァルファラン王国の中心都市だ。故にここで起こった事件に関して、その対処にあたる兵士や衛兵たちの業務は全て王の名の元に置かれるものとなるのが常識だ。
もちろん王に全て適宜確認をすることはなく、兵士たちだけで解決できる案件はそのほとんどが事後報告であり、一括してまとめられることが多いが、それらも王が敷いた法の元で兵士たちが動いていることと同義なため、王命の括りに入るものとなる。
けれども常識だからこそ、わざわざ「王命である」ことを示した理由として考えられるのは、今回の事件が王もしくは王族へ報告された後、彼らが至急解決するように指示を下したことが可能性として考えられた。
それともその言葉を餌に何かを引き出そうとしているのか……王都の外の領地で住まう者は、領主が定めた領地法に基づいて暮らしているので、王命という言葉に過剰に反応してしまうこともあるだろうし、その辺りの確認だろうか?
いずれにせよ、ここは変に反応せずに、素知らぬ顔をしているのが無難だ。
「王命……といっても、別に王都内での事件の対応による兵士の皆さまの働きは全て王命の範囲だと思ってますけど。拘束と目隠しをする理由にはならないのでは?」
ちょうど僕も考えていた「王都民の常識」をさも当然のようにメリアが返す。
ここまでのやり取りで冷静さが戻ってきたおかげか、さすがに僕も分かってきた。
彼らのいう「王命」とは、日常で兵士や衛兵たちが法に基づいて動く範囲のことではなく、実際に王の元まで報告が行き、それを受けた王が速やかに対処するよう命じた――つまり通常よりも数段階上の重要度がある調査へと移行しているのだろう。
つまり、ただの任意の聞き取り調査ではなく、これは既に王の命令である。逆らえば叛逆罪として立件されてもおかしくない危険性だってある。
メリアももしかしたらそのことを察して、僕の足を踏んできたのかもしれない。
「なるさ。これは王が定めた法に沿って我々が行っている調査であることに違いはないが、プラスして王族直々に可及的速やかに解決を求められている事件だ」
「……なるほど、有無を言わさず、ここに連れてこられた理由に納得しました」
「理解が速くて助かるよ。そっちの君もそれでいいかな?」
僕に話を振られたので、大人しく首を縦に振った。
――ハッキリと明言されてしまった。
この件は王直々の調査だと。
つまり、これより僕たちはこの尋問から逃げることができなくなってしまったのだ。
逃げる、というより適当な理由をつけてこの場を離れる、という手が取れなくなった、という意味の方が強い。いかな理由を取ってつけても、この調査に協力しなかった場合は王の命に逆らう、という行為になるからだ。
疚しいことがない王都民であれば、国のために! なんて意気揚々に答える場になるのだろうけど、僕たちにとっては少々……いや、かなり面倒な状況になってしまった。
正直に話せば、自ずと――非合法組織に手を貸していた件まで明るみになってしまうのだから。
「そんなに肩ひじ張らなくても大丈夫ですよ」
僕は無意識に力が入っていたのだろうか。
顔を上げれば、フォンウェイさんが柔らかい笑顔でこちらを見ていた。
「我々は情報が欲しいだけなのです。これから幾つか質問をいたしますが、分からなければ分からないと仰っていただいて結構ですし、辛い記憶などがあって答え辛いことがありましたら、それも正直に言ってください。その時は別の質問をさせていただきますので、答えられる範囲で教えてもらえればいいのです。ああ、あと通常の聞き取りと違って緊張を強いることをさせてしまいましたし、何も問題がなければ、尋問後にきちんと礼金もお渡ししますし、解放いたしますので」
「そ、そうですか」
なんだろう。
随分とぬるい調査だな、と思ってしまう。
さっき「便宜を図る」って言っていたけど、それが礼金のことを指していたのか。まあどこの誰とも知らない者に与えられるものと言えば、金ぐらいだ。当然な話だ。
でもちょっと希望が見えてきたかも。
正直、今回の事件は僕たちにも理解が及ばないことばかりだ。あの時、何故僕たちは誘拐されて動きを封じられ、あの組織のボスと謎の法衣の前に連れてこられたのか、未だにその辺りの事情が分からない。メリアとゆっくり相談したくても、そんな余裕はなかったし……。
でもそのことを明かすことは、僕たちの捕縛に繋がることは間違いない。だって僕たちは少なからず、悪事を働くであろう、あのトッティの下で仕事を受けたのだから。
僕が宣師を名乗り、『星の調べ』という名目の能力を使えるというフリをして、メリアが裏で能力を使って目的の「記憶」を手に入れる。
それを星が教えてくれた体で依頼主に教える。
その情報がどう使われるかは依頼主次第だけど、僕らは明らかに悪い方に転がると知っていてなお、資金を得るためにこの力を売り出して、依頼に手をかけた。
……間違いなく、公に知られれば裁かれるであろうことだと僕でも分かる。
だから――ここはフォンウェイさんの言葉に上手く甘えるべきだと僕は思った。
真実で話せる部分は話しつつ、僕たちに不利益になるところは何とか理由をつけて暈す。それしかこの窮地を脱するには方法がない。
でも……気になるのは、メリアだ。
僕が思いつくなら、彼女だって当然思いつく。
だというのに、彼女はさっき苛立っていた。
手遅れだと言わんばかりに……。
隣の彼女を凝視するわけにもいかないのでその表情を確認することはできないけど、彼女もそれ以上の異論はなく「分かりました」と短く答えるだけで、質問を終えた。
フォンウェイさんは「うん」と満足そうに笑顔で頷く。
「それじゃ始めるか」
どうやらジズさんが聴取役、フォンウェイさんが書記役を担うらしい。
顔を上げて話すのはジズさんで、フォンウェイさんはおずおずと紙と筆を取り出し、俯き気味に耳を澄ませて筆記に集中するようだった。
メリアの様子を視界の端で窺うと、彼女はフォンウェイさんを一瞥した後、ジズさんへと視線を向ける。
僕と彼らの同じ役割についてのことを考えていたのかもしれない。
「では、一番初めに――これは二人にそれぞれ答えてもらいたいんだが」
「はい」
「……」
僕は答えるが、メリアは口を閉ざす。
「これから俺らが質問することに対し、嘘偽りは言わない。それを誓ってもらえるかな?」
…………?
わざわざそんなことを確認する必要があるだろうか?
重要度の高い王命の時点でそれは当たり前のことであり、あえて宣言するまでもないことだろう。
そりゃ……僕たちはこれから何とか煙に巻こうとする意志はあるけれども、言葉ではいくらでも取り繕える。
僕は特に深く考えずに、
「は――」
い、と答えようとして、メリアの「アマン、それ以上は言わないで」という言葉に遮られた。
「……え?」
「今の貴方が肯定すれば……その時点で、私たち終わりよ」
「え、それはどういう……」
僕の疑問には答えず、メリアは何か大きなものを諦めたかのように、首を振ってため息をついた。
「……全て話すわ。これより私は嘘偽りなく、知っている情報を提供する。その上での措置はお任せするけど……できれば便宜を図ってもらえると嬉しいわ」
その言葉に僕は目を見開いた。
いつものメリアとは異なる雰囲気。
いつもだったら多少の窮地でも言葉巧みに「乗り切ってやるわ」という気概が滲みでるというのに、今回に限ってはそれがない。
むしろ……完全に詰みながらも、怪我を最低限に収めようとする「逃げ」の姿勢に見えた。
混乱する僕を置いて、フォンウェイさんは静かに微笑みながら、
「なるほど、聡明な判断だ」
と呟いた。
まるで、僕の先の言葉を遮ったメリアの行動が「正解」とでもいうかのように。
そこで僕は初めて気づいた。
彼の前髪で隠れがちだったので今まで気づかなかったけど、フォンウェイさんの瞳の色が若干、別の色に変わっていることに。
――それからは僕は一切言葉を発することがなかった。
メリアが文字通り、一切の全てを包み隠さず話し、僕が隠そうと思っていた銀糸教の依頼を受けていたことまで明かした。
トッティの記憶を抜きとったことは薄々感じていたけど、その際に見た法衣の連中の行動については僕もジズさんたちも驚いたようにして聞いていた。
あの組織の建物内にいた雇われ者を全て殺そうとしていただなんて……これじゃ、誘拐された僕らとどっちが幸運だったかと問われたら、助けられた僕らは不幸中の幸いだったと言うしかない惨状だ。
続くメリアの話の中で不思議なこともあった。
メリアが持つ恩恵能力――<連記剔出>を告げた際は、彼らは驚くと言うよりも納得するような仕草の色が濃かったのだ。
まるで彼女が恩恵能力を持っていることを予め知っている上に、そういった能力が関与していたことも想定していたかのように。
表向きは僕が能力を持っているように振舞い、有事の際はメリアが自由に動ける体制を取っていたという僕らの目論見までは話していない。
彼女が話したのは、僕が宣師として『星の調べ』を実行していた話と、トッティから彼女が能力で記憶を抜き取った話。
であれば……当然その話の矛盾に気付き、僕の能力についても訪ねてきそうなものだけど……それが無かった。
まるで――僕が恩恵能力を持たず、メリアだけが持っていることを知っているかのように――。
それからの時間、ずっと呆然と眺めることしかできなかった。
やがて、一通りの話を終え、メリアは息をついた。
合わせるようにフォンウェイさんが走らせる筆を止め、ジズさんと視線を合わせる。
どうやら聞きたいことは概ね聞けたらしい。
「ありがとう。私たちでも掴めていなかった情報が多々あり、実に有意義な時間だったよ」
「ああ、レジストンがお前らを捕まえておいてくれて助かった。あいつの勘は本当によく当たるな。しかし……タークの報告にあった一件の裏にはそういう事情があったわけだ。胸糞悪ぃ話だが……外道のやることなら有り得る話か」
「……それはどうも」
フォンウェイさんは礼を、ジズさんは建物一掃の件で心当たりがあったのか思い出すように眉をしかめていた。
「それで君たちの処遇についてだけど――一度、私たちの紹介する組織に席を置いてもらうことになりそうだよ」
続くフォンウェイさんの言葉に僕は目を見開いた。
無駄だと分かっていても、つい言葉を挟んでしまった。
「は、話したら解放するって……」
「問題が無ければ、と言ったはずですよ?」
「あ、……っ」
最初のフォンウェイさんの言葉を思い返して、返す言葉が無くなる。
僕たちの行動が問題だらけなのは分かっているし、効率の良い資金集めだって考えてそういう仕事に手を出したことも理解している。
でも……いざその時が来たと思うと、情けない話だけど尻込みしてしまうのだ。
僕はともかく、メリアは珍しく危険な恩恵能力持ちだ。
誰かに知られれば、放置なんて判断、出るわけがないだろう。そういう点もあって、仕事を受ける際は僕が能力持ちのフリをしていたんだ。
僕は好転させるような言葉が思い浮かばず、思わずメリアを見た。
彼女は少しだけ眉を下げて、肩を竦めるだけだった。
どうしてそんなに冷静なんだよ! と声を上げたくなる。
「正直に話してくれて助かったよ。そのお礼……というのも奇妙な話だけど、君たちにこれから入ってもらう組織は窮屈な場所かもしれないけど……地獄ではない、とだけ言っておくよ」
「つまり……それが私のお願いした『便宜』ってこと?」
「そうだね。あとは……もし君たちがアタリだったら、是非に欲しい人材だ、とその組織のトップから言われているんでね」
「……私たちがそこで新たに問題を起こさない保証はないですよ?」
「ふふ、彼は人を見る目があるし、私も直に君たちの人柄を見た。君たちが行ってきたことは、これから本格的に調べが入るだろうけど、それが贖罪可能な範囲であれば、問題なくやっていけるさ。君たちは根っからの悪人ではないんだろう?」
「……悪いことをした人間が悪人なら、私は悪人ですよ」
「ふむ、嘘ではないけど……揺れているね。君たちにどんな目的があって金を集めているのかは知らないけど、それでも手段を……正当なものに今からでも変えられるなら、それも悪くない。そう思っているんじゃないかな? それはきっと……君というより、隣の彼のためを思って、かな?」
「っ……」
え、僕?
全然、さっきからメリアとフォンウェイさんの会話についていけないんだけど、何がどうなってるの!?
「ああ、それと」
置いてけぼりの僕をさらに置いてけぼりにするかのように、フォンウェイさんが続ける。
「この部屋にいる人間の数は何人だと思う?」
「?」
「……」
急に何の質問!?
悪戯っぽく笑うフォンウェイさんを視線で返すことしかできない。
「正解は私たち四人を含めて六人さ」
慌てて僕はそこまで広くない部屋を見渡す。
メリアもこの時ばかりは同じ気持ちだったようで、彼女も部屋の様子を探る様に視線を走らせていた。
「分からないだろう? これからはこういう『環境』が続く。だから目に見える範囲に仮に一人しか監視の目がなくとも、変な気を起こして能力を使い、逃げようだなんて思わないでくれ。そうなればさすがに庇い立てできない事態になってしまうからね」
「…………!」
フォンウェイさんの言葉は警告だった。
メリアは彼女らしからぬ目を見開いた状態で固まってしまった。
つまり目の前に一人しかいなくて、逃走のチャンスだと<連記剔出>で記憶を抜き取って、その混乱に乗じて逃げようとしても、視界外にいる何者かが僕らを必ず捕らえてしまう。そうなればその時点で僕らは叛逆の意志あり、と断じられ――裁かれる、ということなのだと理解した。
「また面と向かって会話をする機会があった際には、新しい君たちと出会えることを期待しているよ」
「んじゃ、また目隠ししてくれ。外の兵士に案内させるから、それに従って移動してくれ」
二人の指示に従い、僕らは心中に渦巻く不安や疑問をひとまず置いて、部屋を出ていくのだった。
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「なかなか面白い尋問だったね」
そう楽しそうに呟くのはフォンウェイ――いや、フォルト=シェフィール=ヴァルファラン様。この国の王位継承権第一位を持つ、王子殿下だ。
二人は既に目隠しをして、部屋を出ている。
今頃は兵士の先導の元、レジストンの王室付調査室へと向かっている最中だろう。
ジズこと、彼の補佐を務める俺はこめかみを抑えて苦言をつたえる。
「あのなぁ……一応、アイツらだって危険人物に違いないんだから、あんまこういう場に出ようとするなよ」
「いいじゃないか。私の能力は役に立っただろう?」
フォルト王子殿下は自分の目を指さしながら微笑む。
「あのメリアっていう娘に勘付かれたのは驚いたけどな」
「ああ、どことなくレジストンと似た気質を感じる子だったね。きっとアマンって子の仕草と私の気配を読み、その後の私たちの質問の仕方で、答えに辿り着いたんだろうね。ふふふ、忠誠とまで行かずともヴァルファラン王国のために働いてくれるよう更生してくれればいいんだけれど……その辺りはレジストンの手腕に期待だね」
「危険じゃないか?」
「危険はあると思うよ。でも、そもそも危険のない事柄なんてこの世には無いのさ。それを恐れて安全地帯ばかりを見出そうとするのは施政者として落第点かな? 何も危険ばかりに突っ込めという話ではないんだ。重要なのはバランスさ。踏みぬくところと引くところの線引きを見誤らないこと。それが重要なんだ」
「……ま、殿下とレジストンが大丈夫と言えば、俺が口出すこともないか」
「信頼してくれるのは嬉しいけど、あまり過信もして欲しくないかな? 私は私自身を完璧だと思っていないし、新しい視野を手にするためにも意見や反論は積極的にしてもらいたいものだ」
「……殿下に世辞や誤魔化しは通じないから、真っ向から話し合うのは御免なんだけどな」
その人の言葉、その真偽を色彩として判別する能力――<心色識別>。
それがフォルト王子殿下の恩恵能力である。
「いいじゃないか。本音で語り合うのはいいものだよ? 弟や妹たちも自分を隠さずに話してくれるし、それを見習ってジズも頑張ってほしいな」
「貴方の所為でそういう性格になってしまったんだけどな。どうすんだよ、あの自由奔放な兄妹たちは……。アリエーゼ様なんて暴君姫って呼ばれるぐらい知れ渡っちまったし……」
「アリエーゼは最近、下手な嘘、というものを身に着け始めてきたからね。そろそろ私主催で兄妹水入らずの茶会でも開いた方がいいかもしれないね」
「いや、だから……逆効果だと。はぁ、まあいい……お手柔らかに頼む」
「ああ」
近日、コーウェン王子殿下もアリエーゼ王女殿下に灸をすえるような話が上がっているみたいだし、あの子にとっちゃ災難続きの日々になりそうだな、なんて他人事のように思う。
ま、アリエーゼ王女殿下の場合は、自業自得か。
「それじゃこの資料をまとめ、本日中に国王陛下とレジストンに渡しておいてくれ。各部門への通達については、どこまで情報を降ろすかの判断をレジストンに一任する。メリアの能力を良からぬことに使おうだなんて馬鹿な考えをする貴族がいないとも限らないからね」
「了解」
そう言って背中を向け、数人の護衛と共に執務室に戻るフォルト王子殿下を見送り、俺は椅子に座り直し、恐れ多くもフォルト王子殿下自身が書き残した書類を見直し、清書を始めるのであった。
2019/2/26 追記:文体と一部の表現を変更しました